石原さとみが「上総掘り(かずさぼり)」でアフリカの砂漠に井戸を掘る



女優の石原さとみさんが、アフリカのケニアの砂漠に井戸を掘るプロジェクトに参加するテレビ番組に、思わず魅入ってしまった。

石原さとみさん、すばらしい女優ですね。

先日、「シン・ゴジラ」を観てから俄かファンになってしまった。(「シン・ゴジラ」では米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンを演じてました。)


魅入ってしまったこの番組は、8月28日放映の『石原さとみアフリカ・ケニアへ水で命を失っていく子ども達』でした。

アフリカのケニアの砂漠に井戸を掘るプロジェクト。


井戸を掘るために日本の伝統技術である「上総掘り」が使われていました。

日本では使われなくなった伝統技術が、アフリカで復活し活用されているのを見るのはちょっと感動的です。


上総掘り(かずさぼり)は、江戸時代に上総国(千葉県)の君津で考案された深井戸工法の伝統技術。


1817年(文化14年)に君津で考案されてから様々な改良が施され進化しつづけ、明治28年頃には現在の上総掘り技術が完成し、井戸のみならず温泉や油田の掘削にも大活躍した。

しかし、昭和30年頃から、井戸の掘削は機械や重機による工法にとってかわり、日本国内から姿を消した。


河岸段丘が発達した千葉県君津市小櫃川・小糸川流域では、飲料水や農業用水の確保が困難でした。江戸時代までの井戸掘りと言えば、人力で竪穴を掘る「掘り井戸」、やがて地中に鉄棒を突き入れる鉄棒式(突抜工法、掘抜工法)が普及しますが、鉄棒式で掘削できるのは深さおよそ20間(約35m)までで、充分な飲料水や農業用水を確保できません。そこで小櫃地区では大村安之助が、小糸地区では池田久吉と池田徳蔵らが中心となり、技術の改良に努めました。

明治15年、大村と池田久吉は鉄棒の代わりに樫の木を使う樫棒式を考案。用具の軽量化と労力の軽減が実現し、50〜60間(90〜110m)の掘削が5〜6人で行えるようになりました。

その後、大村と池田徳蔵は竹ヒゴと掘り鉄管、スイコを組み合わせた掘削技術を考案し、さらに200〜300間(360〜540m)の掘削が可能となっていきました。
明治19年には小糸地区で、石井峯次郎がハネギを考案し、沢田金次郎がシュモクとヒゴグルマを考案したことにより、明治28年頃には現在の上総掘り技術が完成されたと言われています。

その後、上総掘りは全国に広まり、天然ガス・温泉・石油の採掘などに活用されましたが、昭和40年代には灌漑用井戸の需要減・水道の普及・機械掘りの普及などによって人件費のかかる上総掘りは行われなくなっていきました。

しかし近年、水不足に苦しむ途上国などで国際貢献に役立つ技術として、重機や電力を使わずに少人数で深く掘れる点などが世界的に注目を集めています。また東日本大震災後は、災害用として自宅や公共施設内に井戸を掘削する事例が増えています。
http://www.ab.auone-net.jp/~idohori/sub3.html

上総掘りは、重機や電力を用いず、木材や竹や鉄管などの現地にある簡単な道具や部材を使用し、しかも少人数で50m以上の深い井戸を掘ることができる点ですぐれています。

これは日本独自の井戸掘り工法であり、典型的な等身大の「適正技術」ではないかと思います。




ちなみに、「適正技術」の詳細については、岩波新書から出ている田中直氏の『適正技術と代替社会』が参考になります。名著です。

適正技術と代替社会(田中直)

適正技術と代替社会――インドネシアでの実践から (岩波新書)

適正技術と代替社会――インドネシアでの実践から (岩波新書)



ところで、以下の動画は別のテレビ番組で放映されたものですが、ちょっと感動的です。日本人の上総掘り職人がケニアに井戸を掘る映像。「ホリテッカン(掘り鉄管)」、「ハネギ」、「ネバミズ」、「吸子」などの上総掘り(アフリカ仕様)の具体的な機能の説明もあって勉強になる。

●世界の子供がSOS! ケニアに井戸を
https://www.youtube.com/watch?v=40hNr4Bymic


【参考】
以下の4本の動画は、上総掘りを学術的に解説した貴重な映像です。永久保存版。

上総堀り〜伝統的井戸掘り工法 1/4
https://www.youtube.com/watch?v=53e3OnZfN14

上総堀り〜伝統的井戸掘り工法 2/4
https://www.youtube.com/watch?v=xzZp9flWZZw

上総堀り〜伝統的井戸掘り工法 3/4
https://www.youtube.com/watch?v=7RXYZloL-rc

上総堀り〜伝統的井戸掘り工法 4/4
https://www.youtube.com/watch?v=wESTi-L-iYU


以下は、アフリカや東南アジアで「水問題」に取り組んでいるNPO法人のサイト。日本からは道具を何一つ持たずに行き、現地で調達した資材と道具だけで上総掘りで深井戸を掘る活動をしています。立派です。

特定非営利活動法人INTERNATIONAL WATER PROJECT (IWP)
インターナショナル・ウォーター・プロジェクト
http://homepage3.nifty.com/iwp/iwp-towa/iwp.htm