水道発電(中野和明)


先日のTBS[夢の扉]で紹介されていた「水道発電」が興味深い。

水道水を流したときのわずかな水流から電気を取り出す発電技術。

この技術を開発したのは、横浜市にある従業員13名の小さな町工場「中野製作所」の2代目・中野和明さん。



開発当初は数百mW程度の発電量でしたが、現時点では3Wを超える発電に成功。発電量は微小ですが、水道の蛇口が発電機になるのだ。

この技術のキモは、水道水の水圧によって駆動する「マグネット式流体圧力モーター」。

水流によって回転する回転子にブレード(羽根)がない。だから構造がシンプル。


でも、どうしてブレードが無いのに水流によってクルクル回転するのか?

 水道の水圧エネルギーをどう回収するか。開発に着手したのは2012年6月頃だったが、そこから中野さんの試行錯誤が続く。
 最初は羽根車で水圧を受けとめる方法を考えたが、思わしい成果は得られない。いったんあきらめかけたとき、磁石を利用するアイデアに行き着いた。そのきっかけは社員から聞いた「磁石を数?間隔で配列すると磁力が増す」という情報であり、中野さんは遊び心でそれを確かめてみた。最初は磁石をそのまま並べようとしたが、磁石同士に磁力が働いて直列に並べにくい。そこで直列になるようポリウレタンチューブに磁石を入れてみた。すると、最初に挿入した磁石がポリウレタンチューブ内を落下しながら回転運動を始めた。
「アイデアが湧いたのも偶然です。水道の圧力について考えていなかったら、ふ〜ん、ポリウレタンチューブに磁石を落下させると、よくわからないけれど回るんだ、でおしまいになっていたでしょう。しかし、たまたま流体の圧力を利用するモーターを考えていたので、回転する磁石を見たとき、あ、これだ!と気づいたのです」
早速、磁石を2つ用意し、お互いの磁力を反発させながら、一方向から水道水を流す実験してみると、思った通り磁石を回転させるモーターができた。2012年10月、こうして開発にこぎつけたのが、タービンブレードや羽根車のような複雑形状の部品はいっさい使用しない新方式のマグネット式流体圧力モーターだった。
(J−Net21の記事より)
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/energy/company/2013080801.html

マグネット式流体圧力モーターの作動原理はとてもシンプルだ。


プラスチックの筒の中に2個の磁石を互いに反発するように配置する。右側の磁石を固定し、左側の磁石は回転自在にしておく。このとき、左と右の磁石を1〜2ミリの間隔で近接させておくのがミソ。水道水が左の磁石の周囲を流れ始めると、右磁石との反発力が絶妙に作用して、アーラ不思議。左の磁石が猛スピードで回転し始めるのだ。この回転エネルギーを左の回転軸から取り出してダイナモで発電する。

特許出願されているはずだから、あとで調べてみよう。


番組では、発電量がたしか3ワット(3000mW)を超えていたと思う。微小な発電量ですが、お風呂の浴槽に1回水をためると、おおよそLEDライト10分間分の電気が貯まるらしい。
では、実際にどのような用途があるのか?

 同社は実用化段階として、学校などの集合トイレや手洗い場、オフィスビル・駅ビルなどのトイレ、あるいは工場配管の排水などにマグネット式流体圧力モーターを普及させたいと考える。
 「トイレなら、芳香剤や殺菌剤を散布・拡散するエネルギーとして使う用途が有力です。また、この技術は液体だけでなく気体にも利用できるので、工場排熱の蒸気利用の幅を広げる可能性をもっています」
 マグネット式流体圧力モーターのポテンシャルに中野さんは期待を寄せている。



塵も積もれば山となる、の精神。

このモッタイナイの精神を発電技術に活かそうという活動がエネルギーハーベスティング技術。いままで見向きもされず捨てられていた身の回りの微小エネルギーを、効率的に回収し電力に変換して利用しようとするもの。
以前紹介した速水浩平さんの振動力発電もエネルギーハーベスティング技術のひとつですね。

●振動力発電(速水浩平)
http://d.hatena.ne.jp/gyou/20081225

【参照】
●TBS夢の扉
http://www.tbs.co.jp/yumetobi-plus/archives/

水道発電でエネルギーを集める!
キッチンや風呂場が発電所に!? 独自開発!“水道発電”
〜水を流すだけでエネルギーに!親子2代、町工場の夢〜
中野製作所 技術部長/中野和明さん
キッチンで洗い物、浴室でシャワー、はたまたトイレで水を流す・・。
そんな日常していることで、“電気”を作り出すことが出来たら―。
この水の流れをエネルギーに変える、“水道発電”の技術を開発、特許を取得し、現在、実用化に挑んでいるのが、横浜市にある小さな町工場の2代目・中野和明。

中野が目をつけたのは、蛇口から水が出るときの圧力。この圧力を電力に変換するため、
水道管の中に設置する小さな“羽根のないタービン”と独自のモーターを開発したのだ。
しかし、そこに難題が・・。室内の照明や充電など、幅広い用途にいかすためには、“発電量”をいかにアップさせるかがカギとなる。
中野は、この大きな壁を越えるため、ある場所へと向かった―。

『常識だと決めつけない。そしてあきらめない』
創業から45年。これまで、“下請けの悔しさ”を幾度も味わってきた・・。
「水道発電を、“初の自社製品”として世に出したい」 親子2代の夢の行方は―。



●中野製作所ホームページ
http://www.nkn-ss.com/

●J−Net21
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/energy/company/2013080801.html