スイスのオートマタ作家、フランソワ・ジュノー(Francois Junod)さん(61)の工房。
すばらしい!
(満田春穂さんのRTより)
人形には「魂がある」 スイス機械芸術の職人 pic.twitter.com/PxvdsNchK3
— AFPBB News (@afpbbcom) 2021年2月7日
【2月6日 AFP】
スイスの熟練職人フランソワ・ジュノー(Francois Junod)さん(61)が制作した機械仕掛けの人形が、雪に埋もれた工房の中で音を立てて動き始める。精密に組み立てられた鳥がさえずり、巨匠は詩を書く――この伝統的な技は、世界文化遺産の一つとして認定されている。
スイスとフランスの国境地帯に連なるジュラ山脈(Jura Mountains)一帯では、世界最高級の時計や機械人形(自動人形)を作り出す精密技能が何世代にもわたって受け継がれている。
科学と芸術と技術を融合させる分野でのこの卓越した技能は、国連(UN)からも後押しを受けている。
昨年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)が、ジュラ地方で活動するスイスとフランス両国の機械式時計職人の技能を無形文化遺産に登録すると決定した。
登録の対象は、時計の製造技能と美術的技巧に加え、機械人形やオルゴール、機械仕掛けのカナリアなどの制作も含む。
ジュノーさんは現在、ルネサンスの巨匠レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)の機械人形の制作に取り組んでいる。ダビンチ人形はまばたきをし、きらきらと輝く瞳を動かすと、腕を左から右に動かしてペンを走らせる。
ジュノーさんはAFPの取材に、ダビンチの頭部を生きているように動かしながら「これは魔法に近いものです」と語った。
「こうしたものに新たな関心が寄せられているのは、人々がエレクトロニクスの時代に生きているからです。機械仕掛けの作品に再び目を向ければ、不思議だと思い、魔法がよみがえるのです」
■静かな歯車の音
新しく降り積もった雪が、スイス東部サンクロワ(Sainte-Croix)村にあるジュノーさんの工房を覆い隠している。ジュラ山脈の標高1000メートルあまりにあるこの村は、フランスとの国境から5キロも離れていない。
「山の静かな環境が、この仕事をするのにとても合っています」と話すジュノーさんは、サンクロワ村で精密機械の製作に従事してきた一族の4代目だ。
工房では、ジュノーさんの20歳になるおいを含む5人が働いている。ここは歯車やピストン、機械のチョウや走る馬、19世紀のオルゴールや色とりどりの巨大な鳥で埋め尽くされたスチームパンクの夢の世界だ。
羽根飾りのついた帽子をかぶった骸骨もある。動きの参考にするのに使われている。手や足がいくつも天井からぶら下がり、棚はミニチュアの頭部でいっぱいだ。制作用の道具類がずらりと並び、巨大な目が光彩を回転させて音楽を奏でる。
■忍耐と時間
ロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキン(Alexander Pushkin)の機械人形は、1458編の詩をインクで書くことができるが、制作に5年を要した。「空飛ぶじゅうたん」は2年かかった。
「困難を楽しまなければなりません。忍耐が必要です。さらには情熱を傾けなければなりません」と、ジュノーさんは言う。
技術的および美的な面での困難をすべて克服し、完成品が生きているように動くのを見ることによって、仕事のやりがいが得られる。
「同じ工房の中でも、機械人形の制作では職人それぞれに自分のスタイルがあります」と、ジュノーさんは話す。
「まさしくこれが、機械人形にその魂を吹き込むのです。機械人形には本当に魂があるのです。同じものは二つとありません」とジュノーさんはさらに話した。
伝統技能の世界ではあるが、コンピューターを使ったシミュレーションや3Dプリントも導入されている。
「伝統的な技法では不可能だったものが、3Dプリントのおかげで作れるようになりました。信じられないような部品ができるんです」とジュノーさんは語った。
映像は1月19日撮影。(c)AFP/Robin MILLARD