可視光で水素合成(北海道大学)


北大(三沢弘明教授グループ)が高効率で可視光による水素合成技術を開発したという日経産業新聞の記事に注目。

太陽光(可視光)で「電気」を製造する技術が太陽光発電

この北大の水素合成技術は、可視光だけで(電気を使わないで)、水から直接「水素」を製造する新技術。


水を電気分解すると酸素と水素が生成するが、この電気分解には電気エネルギーが必要ですが、この新技術では、無限に降り注ぐ太陽光と水だけで水素が生成する。これが普及すると、すごいことになる。


可視光エネルギーで水素を製造する技術は、既にいくつかの大学や研究機関で開発が進められていますが、この北大の技術はちょっとおもしろい。

酸化チタンと金のナノ微粒子を組み合わせることによって、変換効率が10倍以上に向上したらしい。5年以内に技術の確立を目指すとのこと。


●北大、可視光から効率的に水素生成、人工光合成に応用(2018/08/08)
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/news/16/080811378/?ST=mono

北海道大学らの研究グループは7月31日、厚さ30nmの半導体(酸化チタン)を金ナノ微粒子と金フィルムで挟むことで可視光を効率的に閉じ込める光電極を開発したと発表した。金ナノ粒子側から光を入射すると金フィルムが鏡として働き、全可視光の85%以上の光を半透明の酸化チタン層に閉じ込める。光閉じ込め機能のない従来の電極と比べて約11倍の光電変換効果が得られた。

 金ナノ粒子は、局在プラズモン共鳴と呼ばれる現象により、特定の色(波長)を吸収・散乱する。金ナノ粒子が光を吸収すると金の中の電子が高エネルギー状態となって半導体に電子を与え、高い還元力を持った電子が水素を、残った電子の抜け殻(正孔)が水を酸化し酸素を発生させる。



今回開発した光電極基板の模式図。半透明な酸化チタン層に光が閉じ込められる


 しかし、金ナノ微粒子を半導体基板上に単層付着させる従来手法では、特定の波長に限られるため太陽光の大部分は光吸収に寄与できなかった。金ナノ微粒子のサイズを大きくすることで光の捕集効率は高まるが、光散乱の寄与も大きくなるため根本的な解決にはならない。

 今回、平均粒形12nmの金ナノ粒子を配置した上に7nmの酸化チタンを上乗せすることで、酸化チタン層に金ナノ微粒子を半分ほど埋め込んだ。プラズモンと酸化チタン層に閉じ込められた可視光が強く相互作用して一体となった状態を作ることで、可視光の幅広い波長の光を効率的に吸収できることを見出した。



左から金ナノ微粒子/酸化チタン/金フィルム基板、金ナノ微粒子/酸化チタン基板、酸化チタン、金フィルム基板


 金フィルム基板を持たず光閉じ込め機能のない電極では、局在プラズモン共鳴に基づく単一のピークしか観測されなかったが、光閉じ込め機能を持つ新電極では2つのピーク波長に分裂し、ともに98%もの高い光吸収率を示した。入射光の光強度に対して観測された光電流量を示す外部量子収率が11倍増大したほか、外部量子収率を光の吸収量で規格化した内部量子収率もピーク波長比で1.5倍増大した。

 今回の研究成果は、プラズモン太陽電池や人工光合成系(水分解・アンモニア合成・二酸化炭素固定など)の光エネルギー変換系アンテナのほか、局在プラズモン共鳴を利用したさまざまな光化学反応系や化学センサーの高感度化への応用にも期待される。


ところで、ここから話はいっきに跳ぶ。

北大は、堀内寿郎(ほりうち・じゅろう)の時代から、触媒化学や電気化学の分野で世界的な業績をあげている。堀内寿郎は、嘗て、マイケル・ポランニーの共同研究者であった。

この二人の出会いに、重要な秘密があるような気がする。

以下、つづく。