適正技術と代替社会(田中直)

昨晩はAPEX代表の田中直さんの新しい本の出版記念パーティーに呼ばれて行ってきました。会場でいただいたこの本を読み始めているが、予想通りおもしろい。

適正技術と代替社会。これは311以後の世界を語るのに避けることができないテーマだろう。

インドネシアでの適正技術(バイオマスのガス化や排水処理)の実験と実践の実話がいきいきと描かれている。自らの体験に基づいて、ちょっと難しいテーマが分かりやすく書いてあり読みやすいのです。田中さんの半生を綴る興味深い物語でもある。

原発派の似非左翼がクーラーの聞いた部屋で「原発止めろー!」と叫んでいるレベルとはちょっと違う。いや、かなり違う。

岩波書店の担当編集者の方もお見えになっていて、この本の出版に至る「苦労話」をされてました。最初は、あのお堅い岩波でさえ田中さんの原稿は堅くて地味という印象だったらしい。

大学の先生、技術史を研究されている老大家、ご年配の麗しき女性、APEXで活動されているボランティアの美しい女性軍、東大ラグビー部OBの仲間たち。そして、田中さんのとてもチャーミングなお嬢さん。老若男女とりまぜて田中直さんの交友の広さを反映したとてもすてきなパーティーでした。

ところで、東京農大で「人間植物関係学」というちょっと聞きなれない学問を立ち上げて研究されている先生にお会いしました。この先生の話は後日記事にします。

みなさん、これからの時代のキーワードは「適正技術」と「代替社会」、これです。ちょっと地味ですけれど・・・(汗)。地味だけれど、はまる人ははまる・・はず。

この本はぜひ買って読んでください。そして周りの知り合いにもすすめてください。この岩波新書のお代はわずか700円。しかし内容は極めて濃い!

適正技術と代替社会――インドネシアでの実践から (岩波新書)

適正技術と代替社会――インドネシアでの実践から (岩波新書)

【参照】
APEX(Asian people's Exchange)はインドネシアを中心としてアジアの人々の生活向上や環境保全のための活動をしているグループ。このNGOのユニークなところは「技術」。しかも、その地域に根ざした「適正技術」。現在、田中さんらがインドネシアが実践している適正技術は、水の浄化システムと安価なバイオマスエネルギー開発。


このNGOを引っ張っているエンジンのような男が田中直さんという心優しい人物。東大の工学部出身でラグビーの選手(スクラムハーフ)だった。でも華奢な体つきで朴訥とした語り口の魅力的な人。

APEXはもう20年以上前からインドネシアを中心に活動している。排水処理事業とほバイオマスのガス化技術のいずれにおいてもその地域の人材と資材を活用しているところが重要ポイント。

たとえば、バイオマスのガス化技術においては、現地に生息するジャトロファナンヨウアブラギリ)という植物の種子から油脂を絞って燃料油を回収し、この過程で発生する廃棄物をシンプルなガス化装置でガス化する。これで一石二鳥の複合利用。

さらにすごいところは、ジャトロファは荒地でも育つということ。アブラヤシからも油脂がとれますが、アブラヤシは育成に肥沃な土地が必要で食糧と競合する。ジャトロファは荒地を緑化するのに好適。これで一石三鳥。大いに期待できる適正技術だ。

APEXのサイトは以下。
http://www.apex-ngo.org/