百田尚樹「ボックス!」

お正月に読んだ「永遠の零」に心底感動し、百田尚樹さんの本を何冊か買った。まず、この「ボックス!」(太田出版の文庫)を読む。

評判どおり、この本かて、ごっつうおもろいやんけ!(←大阪弁のつもり)。

大阪のある高校のボクシング部の話。青春スポーツ物語。運動能力ゼロのひ弱で勉強だけはできる高校1年生の主人公が、あるきっかけでボクシング部に入部する。それから約1年の間のドラマ。猫から虎に文字通り豹変していく様がおもしろい。ビルドゥングスロマンとしても読むことができる。

ボクシングがこんなにすごくてかっこいいスポーツだったとは。ボクシング再発見。そして、ストーリー展開がまた百田さんらしく感動的におもしろい。男の友情、マネージャーの女子高生との固い絆をめぐる物語展開は涙なくして読み進めることができない。歳のせいで涙もろくなったのではない。この物語が感動的なのだ。

ところで、普通の人がイメージしているように、ボクシングは殴り合いを単に様式化した野蛮なスポーツではない。極めて人工的で科学的なスポーツなのだ。これは意外な発見であり、技術人類学の観点からもおもしろかった。

そして、実は、ボクシングは人類最古のスポーツらしい。ということは、競走競技よりも起源が古いということか?今度調べてみよう。

この本でボクシングに関する基本的な技術に関する知識を得ることができる。登場人物を介して語られる解説がとても分かりやすくてためになる。

ボクシングの長い歴史の中で、人工的かつ科学的に完璧に制御された格闘のための身体技法が生みだされて確立されていったのだ。したがって、腕や手の動き、上半身や下半身の動作は、ケンカや殴り合いとは根本的に違う。これはあらゆるスポーツ競技において共通して言えることかも知れないが、技術人類学的にみてもボクシングは興味深い。

どえりゃーおもしれーでいかんわ(←名古屋弁のつもり)

ボックス! 上

ボックス! 上

ボックス! 下

ボックス! 下