日本科学史学会主催の科学史学校をききに秋葉原の明治大学サテライトキャンパスまで。
今日は、小林良生(よしのり)氏の製紙技術史の話。
テーマは、新しい視座に基づく製紙技術史(「延喜式」「図書寮」から見た古代製紙技術)。
製紙工程が記載された最も古い文献は、927年の延喜式。この中の記載を詳細に読み解いて古代の製紙技術を再現する研究である。(この延喜式以降、江戸時代まで製紙技術に関する文献は無いらしい)
製紙技術は中国起源。中国から、西へはタラスの戦い(752年)を契機に西へ伝わり、東は朝鮮を介して日本に伝わった。ところで、紙の発明者は蔡倫(後漢の宦官)といわれているが、近年の考古学上の発掘により,紙はすでに前漢時代から存在していたことが明らかにされている。
小林良生先生は、自然科学の手法を駆使して古代の製紙技術の技法を解明しようとしている、その精力的な姿勢に打たれる。紙に対する愛情と情熱を感じる。
和紙は1000年、洋紙は100年、という。
おそらく、1000年以上にわたって何か記録(文書)を残そうとすれば、和紙以外にその手段はない、と小林先生は言う。デジタルデータは1000年後にも残せるような代物ではない。洋紙は100年以内にボロボロになる。
和紙を開発した古代の技術者はすごかったのだ。
なお、ネットから拾った小林良生氏の履歴を以下、引用。
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1934生まれ。1958年慶応大学工学部卒業。最初は東レに勤務し、主にナイロンなど合成繊維の研究に携わる。
紙との関わりは1975年、40歳のときに始まる。紙を非木材資源から作るという国家プロジェクトの為に、通産省四国工業技術試験所(当時)に転じ、国家公務員として、非木材・海藻などからの紙製造を研究する。
1996年退職し、1997年6月、国際協力事業団(JICA)の長期派遣専門家としてタイに赴任。タイカセサート大学で、タイ未利用農林植物研究計画の中で、広義の「麻」の一種であるケナフなどの活用研究を行っている。
研究対象の非木材繊維は、製紙の歴史上、最初の原料であり、日本でも木材パルプから紙を作る歴史は120年余りである。それ以前は、こうぞ、ミツマタ、麻などの非木材繊維であり、今また資源問題、環境保全の観点から、非木材繊維への関心が高まっている。
小林氏のタイとの関わりは、1977年からの国際研究協力で、マレーシア、中国、タイと共に、紙・パルプの共同研究を進めた時に始まり、「タイには一緒にずっと仕事をしたいと思える優れた人たちがいる」と語るように現在まで続いている。
小林氏は、合成高分子で工学博士(慶応大)を、非木材繊維で農学博士(京都大)を取得され、化学の技術士でもあり、飽くなき探究心に支えられた豊富な知識を持つ学究の士である。がその知的好奇心は、紙のサイエンスは文化の源であるとして、非木材繊維と密接な衣服や文字から文化を語ることにも向けられ、伝統工芸技術とそれを育み育ててきた人間と文化に深い関心を寄せられている。
(清水英明氏による紹介文)
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