日本発の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」

昨日のNHKラジオ深夜便「明日への言葉」は、東京大学・農学生命科学研究科教授の磯貝明さんの「セルロースナノファイバー」の話でした。新年早々すばらしい話題。

セルロースナノファイバー(CNF)、聞けば聞くほどすばらしい素材です。

日本発のブレイクスルー技術になるのではないかと思われます。


ところで、幣ブログが注目している日本発・ブレイクスルー技術としては、既に何回か記事にした、常温固体核融合技術(荒田吉明大阪大学名誉教授ら)やマイクロバブル技術(大成博文ら)がありますが、この磯貝明らが開発したセルロースナノファイバー(CNF)も極めてすぐれた日本発・ブレイクスルー技術になることはまちがいなし、ですね。

日本のような森林が豊かな国にとって、再生可能資源である木質系から、それこそ無尽蔵に製造することが可能なセルロースナノファイバー(CNF)。

簡単に言えば、CNFとは、樹木などの植物の主成分であるセルロース(繊維素)をナノ化(超微細化)した材料。


鋼鉄の5倍の強さを持ちながら、比重は鉄の5分の1という超軽量かつ高強度な機能性素材、セルロースナノファイバー(CNF)。


なぜ軽くて強いのか?


高強度の秘密は、ナノレベルの微細な繊維(ナノファイバー)どうしが多数結合しているため。





一方、普通の紙などのセルロース繊維は太いため結合の数が少ないため強い構造にはならない。



石油から製造されるプラスチックなどにとって代わる素材になる可能性もある。ということは脱石油社会の実現の一助にもなるってことか。



CNFの研究開発では日本が世界をリードしているが、同じく森林大国の北欧、北米諸国が実用化に向けた競争を繰り広げている。

が、実用化には多くの困難がある。


CNFの実用化を阻んでいる最も大きな要因は、安価な製造方法が見つかっていないということ。

パルプから紙は簡単にできるが、CNFは繊維同士の結合が極めて強く強固であるため、ナノレベルに均一に分離するためには大量のエネルギーが必要で、これが実用化の大きな障害だった。

しかし、最近、製造が極めて難しいとされていたCNFを簡易かつ安価な画期的製造技術が日本人によって開発されたのです。


セルロースナノファイバー(CNF)の画期的な製造技術を開発したのは、以下の3人。

東京大学・大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻の磯貝明教授
同じく東大の齋藤継之准教授
フランス・グルノーブルの植物高分子研究所に所属している西山義春博士

磯貝教授らは、木材からナノファイバーを簡単に取り出す方法を世界に先駆けて発見したのです。この画期的方法を可能にしたのは、「TEMPO」という触媒化合物。この触媒と軽微な機械処理を組み合わせることにより、セルロースをミクロフィブリル単位に解くことに世界で初めて成功したのです。TEMPOを使うと繊維が自然とほぐれやすくなり、容易に取り出すことができる。しかもエネルギー負荷も少ない。

これを開発した3人は、その功績が認められ、森のノーベル賞といわれる『スウェーデンマルクス・ヴァレンベリ賞』を受賞された。この賞の受賞は、日本はもちろんアジアでも初めてだったそうです。


CNFは、用途開発も含めて、さまざまな分野での研究開発活動が今後ますます活発化しそうです。


【参考】

●磯貝明先生の公式サイト(磯貝・斎藤・竹内研究室)
http://psl.fp.a.u-tokyo.ac.jp/

クローズアップ現代 “未来の紙”が世界を変える!? 〜日本発・新素材の可能性〜
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3751/1.html

●“森のノーベル賞”に日本人のセルロースナノファイバー研究が授賞!
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakaatsuo/20150406-00044567/

● 森のノーベル賞受賞!三人の日本人快挙!賞金3000万円!
http://netatyou.jp/2015/09/29/forest/