アンティーク・ジュエリーミュージアム(伊豆高原)

先日訪れた伊豆高原のアンティーク・ジュエリーミュージアム

忘れないうちにメモしておきます。
伊豆高原駅を過ぎて海の方に5分ほど車を走らせると、別荘地帯の一画にアンティーク・ジュエリーミュージアムがありました。瀟洒な外観。


見学客は、我々夫婦と若いカップル一組だけだったので、館長の岩谷陽弘氏に付き添って解説していただき、ラッキーでした。


ここは、主として19世紀のビクトリア王朝時代(1837〜1901)の宝飾の名品と衣装を展示した博物館。

美の壺NHK)やなんでも鑑定団で、この博物館の作品が紹介されたことがあるとか。


今ではその技法も失われ再現の困難なジュエリー作品が多く収蔵されている。

岩谷館長に、なぜそのような貴重なジュエリー技法が現在まで承継されずに失われてしまったのですか、と訊くと、以下のような趣旨の答え。

・そのような超絶技術をもった職人を擁護するパトロン(貴族)がいなくなった。
・商業主義がはびこって、そのような時間と経費のかかるジュエリーは採算がとれない。
・職人を養成するシステムが失われてしまった。(これを復活させる必要がある。)

だから、失われた技術を一般に公開するこのような博物館の意義があるのですね。


当館でご覧いただきます作品の数々は、ヴィクトリア王朝時代(1837〜1901)を中心に、貴族社会の華やかな時代の華麗な宝飾品やドレスです。
これらの作品は、貴族やブルジョアに支援された一流の職人たちが長い年月をかけ、確かな技術を駆使して作り上げた芸術作品です。
現代のように便利な道具も電灯の照明もなく、まだランプの下で作られていた時代のことです。その見事な細工において素晴らしい芸術性をそなえたアンティークジュエリーは、世界共通の文化遺産であり、いつの時代にも愛され続けるものと確信しております。

ルーペを無料でお貸ししておりますので、当時の繊細さを極めた細工技術とデザインの素晴らしさを鑑賞いただき、優雅なひとときをお楽しみください。
アンティーク・ジュエリーミュージアム
http://antique-museum.com/

館長の岩谷陽弘さん、気軽に話をさせていただきましたが、この方、ジュエリーデザイン画コンテストの審査員もされている、日本のジュエリー界では有名な方だったのですね。

館長 岩谷 陽弘

館長プロフィール


TAKAHIRO IWAYA
1942年、東京に生まれる。家業を手伝うかたわら、宝飾のデザインと創作を始める。多くのジュエリーアーティストとの交流で研鑚を重ね、『宝飾デザインコンテスト』に創作部門とデザイン部門で入賞。後に彫金教室を開設する。
その後、アンティークジュエリーと出会い、デザインと細工の素晴らしさに深い感銘を受け、コレクションが始まる。
赤坂にアンティークジュエリー専門店「ノーブル」を開店。アンティークジュエリーの素晴らしさを多くの方々に知っていただき、後世に残していきたいと考え、平成8年4月に伊豆高原にアンティーク・ジュエリーミュージアムを開館。現在に至る。


以下、順不同で展示物の写真(ほんの一部ですが)を貼っておきます(写真は館長の許可をいただき撮らせていただきましが、スマホだったので不鮮明です。あしからず)





自然の3層の配色をうまく加工したシェルカメオ。



アールヌーボーの傑作。上はゴートレ(Lucian Gautrait)のブローチ、下はラリックのリング。ゴートレは滅多に見ることができなかったが、今回初めて現物を見た。すばらしい。

ここのサイトのゴートレの画像↓を参考まで。プリカジュール(省胎七宝)技法を使った魅惑的な傑作。


ラリックのリングも参考まで。蝙蝠人間のモチーフが確認できますね。美しい。


これ↓は、ブルーカラーの希少オパールだけで作製したネックレス。写真ではよくわからないかもしれませんが、ウットリするほど美しい。


左の方が館長の岩谷陽弘さん。


この↓右側のドレスはラピスラズリで染めてあるそうです。有機染料ではないので、耐候性にすぐれ、数百年たっても色が褪せておらず美しい。眼をみはる鮮やかさ。


これ↓は象牙を彫って作ったありますが、どうやってこのような微細な彫刻が可能なのか、まったく謎とのこと。あるいは彫刻以外の技術なのか。いずれにしても再現不能の失われた技法。


これ↓はピケ(ピクエ)というべっ甲に象嵌する技術。日本の柴山象嵌のようなものか。
ピクエ技法も現在失われているが、日本人でこれを研究し再現しているジュエリー作家がいるとか。


香水瓶。



このローマンモザイクには心底驚きました。超微細。写真ではそれが分からないのが残念。


これ↓はターコイズのパヴェ・セッチング。どうやって作ったのかは、不明。




このガーネットも美しい。




ジュエリーの技法や歴史に興味のある人には必見の博物館です。


【参照】

●アンティーク・ジュエリーミュージアム公式サイト
http://antique-museum.com/