マッサン(その2)


留学時代、毎晩遅くまでノートをまとめている竹鶴政孝の横で、リタは静かに編み物をしたり、英語の読解を手伝っていたそうな。リタの内助の功が感じられるエピソードじゃな。
(ニッカの公式ツイッターより)
https://twitter.com/nikka_jp/status/526513673943007233

マッサンがおもしろくなってきた。


今日は先日紹介した「マッサン」の続きです。
竹鶴政孝グラスゴーウイスキー製造技術
http://d.hatena.ne.jp/gyou/20141013


物語はだんだん佳境に入ってきた。

マッサンの第28回を見ていて、株主総会での政春のセリフにちょっと感動。(舞台は大阪だけど政春は広島弁(竹原弁?)でしゃべるところがいいですね。)

日本とスコットランドは同じ島国。スコッチウイスキースコットランドの精神(スピリッツ)そのもの。

ウイスキーは大麦とその土地の水とピートによって造られる。




ウイスキーのことをなぜ「スピリット」と呼ぶか。以下のセリフにその理由が凝集されている。

「皆さん!ウイスキーには、その土地の力が味と香りになって宿ります。例えばスコットランドの北部のウイスキーにはヘザーの花の花の香りがすると言われとります。それはウイスキーを造る水が広大な大地を通って湧き出てくるからなんです。ヘザーの花咲く大地を通った水にはヘザーの香りが宿る。その豊かな水は大麦を育み樽の中でじっくりと熟成される。つまりウイスキーには、その街、その国の魂が宿る。じゃけんウイスキーはスピリットとも呼ばれとるんじゃ思います。わしらはこの日本で日本の魅力がギュッと詰まったウイスキーを造ってみたいと思うとります!どうか、どうかお願いします!」
●マッサン第28回あらすじと感想(10月30日放送)
第5週『内助の功−第28回−』あらすじ
http://juntoai.blogspot.jp/2014/10/281030.html

結局、ウイスキー製造についての株主の承認は得られず、政春は住吉酒造を去ることになる。

第29回のエリーが絶望している政春を慰め励ます場面には泣かされた(涙)。


マッサンは、国産ウイスキーを作るという夢を持ち、それを実現させるために、スコットランドに留学した。そこでウイスキーの技術を習得した。スコットランドではエリーと結婚して、ともに日本初のウイスキーを作る夢を分かちあった。
 マッサンとエリーは帰国して、新生活を始めた。マッサンは会社でウイスキーを作ろうと奮闘した。ところが会社は苦境で、倒産の危機であり、ウイスキーを作る資金を出せない。株主の見解で、「ダメ」という結論が出た。マッサン(亀山)には、「夢を諦めよ」という命令が下った。
 「人間な。夢だけでは生きていかれへん。亀山君、この会社のためにウイスキーの夢、諦めてくれんやろか。亀山君、ウイスキー、諦めてくれ」
 マッサンは迷ったすえに、大声で返答した。「それはできません!」
 「そうか。ほな、しゃあない。亀山君、この会社辞めてくれ。(会社は)ウイスキー事業には金輪際手を出さん。それに異論があるなら亀山君は辞めてもらう」
 マッサンは思いが高まったあげく、テーブルをバンとたたいて、何も言わずに部屋を飛び出した。そのあとは、酒飲み屋に行って、酒浸り。

 その後、自宅に戻って、エリーと会話する。
 「わしが間違うとんのかな。わしがウイスキー造りたい言うとるせいで、みんなを振り回して、みんなに迷惑かけて。(ウイスキーを作るという夢を)諦めた方がええんかのう」
 こうしてマッサンは、男子一生の夢を諦めざるを得ないところに追い込まれていた。
 実際、マッサンが夢を諦めなければ、会社は融資を得られなくなり、倒産する。また、社長の娘は、せっかくの富豪との結婚が破談となる。あらゆる人々が不幸になる。その張本人はマッサンである。もはやマッサンは、男子一生の夢を諦めざるを得ないところに追い込まれていたのだ。ノックアウト寸前である。

 そのとき、「わしが間違うとんのかな」と漏らしたマッサンに、エリーは言った。
 「違う。違う。マッサンは間違ってない。スコットランドで一生懸命頑張った。お父さんとも、約束した」
 それを聞いてマッサンの心には記憶がよみがえった。スコットランドですごく苦労した日々。どれほど努力したことか。夢の実現のために、ものすごく努力したのだ。また、そのスコットランドへと送り出してくれていた父親もいた。洋酒製造という夢のために、日本酒の造り酒屋の息子である自分を、あえて送り出してくれた父親。
 エリーはさらに言った。
 「大丈夫。大丈夫。人生は冒険、アドベンチャー。私、夢食べて生きていける」
 「夢を食べて?」
 マッサンが聞き返すと、エリーは頷いた。
 「マッサンの夢があれば、私生きていける。どんな事でも我慢できる」
 エリーはマッサンの夢を思い出させ、その夢の実現のためには、自分は最大限の協力をすると訴えた。エリーはさらに続けた。
 「マッサン、日本で初めての男になる。世界一、うまいウイスキー造る男になる」
 エリーはそう言って、かつてマッサン自身の訴えた言葉を思い出させた。そうだ。その言葉は、エリーの言葉ではなく、自分自身の言葉だった。それはエリーの夢ではなく、自分自身の夢だった。その夢は自分の存在意義のすべてだった。それを決して諦めてはいけないとエリーは訴えているのだ。
 エリーはマッサンに何かをしろとは命じなかった。かわりに、自分は協力するとだけ訴えた。そしてエリーは“ゴンドラの唄”を歌い始めた。

 『♪いのち短し 恋せよ乙女
   朱き唇 褪せぬ間に
   熱き血潮の 冷えぬ間に』

 青春の夢を見失ってはいけない。どれほどつらくても、どれほど苦しくても、青春の夢を見失ってはいけない。そして、そのために、私は最大限の協力をする。……そのことを、エリーははっきりとは告げないままに、心で伝えた。その心は、マッサンにはっきりと伝わった。
 自分が最も苦しいときに、最も心に染み渡る言葉を語ってくれるエリー。その思いを知ったとき、マッサンは耐えきれずに泣き出した。


ところで、エリーが歌う「ゴンドラの唄」(大正3年)は黒澤明の映画「生きる」で有名になりました。死期を悟った志村喬演じる主人公が雪の降る夜ブランコをこぎながらこの歌を口ずさむシーンが忘れられません。

いのち短し
恋せよ乙女
朱き唇
褪せぬ間に
熱き血潮の
冷えぬ間に


大正ロマン時代を感じさせるいい歌です。

今夜はこの唄を聴きながら昨日ゲットした「竹鶴17年ピュアモルト」を飲むことにします。

「竹鶴」は世界最高賞を既に6回受賞しています。竹鶴政孝の魂が生き続けている。http://www.nikka.com/products/wwa/2014/



●生きる (Ikiru) 黒澤明 テーマ曲 -ゴンドラの唄-
https://www.youtube.com/watch?v=FXX0RpALVbA


小林旭の歌もなかなかいい。
●ゴンドラの唄 小林旭
https://www.youtube.com/watch?v=Qw3tIli_lL0


最後に滝川クリステルさんの歌を聴き比べでどうぞ。
●ゴンドラの唄 滝川クリステル
https://www.youtube.com/watch?v=cfCkER-qvuc