ソエ爺(副島隆彦)の本日の米中貿易戦争に関する記事がちょっと気になる。
2か月間、必死に情報収集して、その全体像が見えてきたそうです。とても興味深い。
以下、二日分の記事の全文を転載させていただきます。
[2410]ようやく、やっとのことで米中貿易戦争(トレイド・ウォー)の全体像が、見えてきた。2か月掛かった。(1)
投稿者:副島隆彦
投稿日:2019-06-11 18:28:25
http://www.snsi.jp/bbs/page/1/副島隆彦です。今日は、2019年6月9日(日)です。
アメリカと中国は、このまま激しい対立を続けたら、貿易戦争(ぼうえきせんそう)では済まない、そのうち、本当の戦争(warfare ウォーフェア-)にまで至るのではないか。この2ヶ月間、私は、ずっと考え込んでいた。
なぜなら、アメリカ国内に、米中の激突、大戦争(large war ラージ・ウォー)を強く望み、相互の1,2発の核兵器の撃ち合いまでを含む本当の戦争にまで突き進むことを、強く求めて画策している勢力が、実際に存在するからだ。彼らは、「今、中国を叩(たた)きのめさないと、アメリカの世界覇権は、終わる」と、本気で考えている。
それは、アメリカ国内で、トランプを支持する国民勢力と、激しく対立する、凶暴な 強固な宗教的な反共(はんきょう)主義の政治勢力である。分かり易(やす)く、一番、簡単に言えば、それは軍産複合体(ぐんさんふくごうたい)という勢力である。トランプは、彼らを、自分の大統領としての権限(権力)で、押さえ込もうとして必死である。
これから、私は、長々と、「米中貿易戦争」のことを書く。何回かに渡って、書き続ける。今日は、その第一回目だ。 私は、ここの重たい掲示板に、米中の IT、ハイテク対立のことを書かないで、2カ月が経(た)ってしまった。私は、ずっと考え込んでいた。
ホアウエイ・テクノロジー(華為技術、かいぎじじゅつ )を巡る激しい争いは、どうやら、峠を越したようだ。このまま、スマホ市場と 5G の普及 での対立を続けていると、アメリカと中国の共倒れになる。世界貿易に大きな支障となる。
はっきり書くと、各国の 5Gネットワーク づくりの、最先端の 半導体を巡る 闘いでは、アメリカが負けた。 中国の勝ちだ。先端技術の開発競争のことを、詳しく自分の職業を通して実地で知っている日本人はたくさんいる。彼らが、そのように教えてくれる。
誰が何と言おうと、今回は、トランプの負けだ。5月5日に、怒って、手を振り上げた時点で、トランプの負けだった。 このことを、これから、私は、長々と詳しく説明する。駆け引き、取引では、カッとなって、交渉のテーブルをひっくり返した方が、負けだ。
トランプ自身が、このことを深く、噛みしめている。「どうも、アメリカの負けなのではないのか。
あれほど、ワイワイ、中国の負けだ、と アメリカのメディアが、書いて騒いでいるところを見ると、どうも アメリカの方が、技術競争で、分(ぶ)が悪くて、すでに相当に負けているようだ」と、真に技術や、先端企業の競争を知っている人たちは、冷静に見ている。そのことをが、2カ月掛かって、ようやく、私、副島隆彦に分かってきた。ここに来て、トランプに、救いの手を、習近平が投げかけた。それが、つい一昨日のことだ。険悪な関係を、さらに嫌(いや)が上でも積み上げるように見えた。「ユーラシア(大陸)同盟」で、ロシアのプーチンを訪ねて、習近平が、サンクトペテルブルクまで出掛けて、今さら、2人でなにを話し込むのだろう、と、じっと見ていたら、習近平が、トランプに、「互いに友人だ。仲良くしよう。世界を安定させよう」と、エール、助け船 を投げた。つい一昨日のことだ。
(転載貼り付け始め)
〇 中国習主席「トランプ氏は友人」米中貿易摩擦の中
2019年6/8(土) 11:51 テレ朝 ANN中国の習近平国家主席は、貿易問題を巡って対立するアメリカのトランプ大統領を「友人」と呼び、関係の断絶を望まない姿勢を示した。
習近平国家主席 「私はアメリカとの関係断絶を望んでいない。友人であるトランプ大統領もそれを望んでいない」
ロシアを訪問している習主席は6月7日、プーチン大統領らが同席した討論会でこのように述べ、アメリカと中国の間で貿易摩擦が続くなか、関係改善を図るかのような姿勢を見せた。トランプ大統領は「今月末のG20大阪サミットの後で中国に対する約35兆円分の新たな制裁関税を発動するかどうかを判断する」と表明していた。これを牽制(けんせい)する狙いもあるとみられる。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦です。これで、来たる6月28、29日の 大阪G20(ジー・トウエンティ)のサミット会談で、何からの打開策が図られる。最近は、トランプと習近平は、大阪で首脳会談をやらないのではないか、ふたりはもう口も聞かないだろう、とまで言われていた。関係は決裂状態で、貿易戦争は、さらに悪化して、事態はますます険悪化する、と、関係者たちから見られていた。
私は、ずっと、米中(アメリカと中国)の貿易戦争(トレイド・ウオー)の成り行き、経過(けいか)を追いかけて、緊張しながら、それらの記事や情報を集めながら、この2か月を過ごした。
この「米中貿易戦争」が、さらにエスカレイト(激化)して、鉄鋼や自動車や農産物への追加関税、懲罰関税(ピューニティヴ・タリフ)の報復合戦(リタリエイション)の段階から、さらに、現在の 華為技術(かいぎじゅつ、ホアウエイ)を巡っての、激しい応酬があったことで、ついに全面的な IT(アイティ)、ハイテク 戦争になってしまった。
それが、現在、呼ばれている、経済戦争(エコノミック・ウオー)あるいは、新(しん)冷戦状態(ニュー・コールド・ウォー) から、やがて、数年後には、米中の軍事衝突、すなわち、本当の戦争、ホット・ウオーに まで繋(つな)がってゆくのではないか、と 、私は、ずっと、ひとりで深刻に考え込んでいた。その可能性はある。
なぜなら、今から5年後の、「2024年、あるいは、2025年は、WW2(第2次世界大戦)が終結して、80年目である。だから、その時に、次の大恐慌(グレイト・デプレッション)か、それを避けようとして、次の大戦争(ラージ・ウォー)、すなわち第3次世界大戦が、人類を襲うのだ」と、冷徹な予測、予言(プレディクト)をしているのは、この私だからだ。このように書くのは、近(きん)未来予言者を名乗る、自分の責務である。
このまま、ずるずると3年間ぐらい、この貿易戦争(トレイド・ウォー)から始まる緊張関係の中に、世界は、叩き込まれると、世界の自由貿易体制(フリー・トレイド・オーダー)が壊される。そうすると、世界中が不況になる。そうすると、各国政府の悪あがきが始まる。自分の国の国民を食べさせることに必死になって、自国通貨の値下げ(切り下げ)競争に走る。
確か、5月23日に、ウイルバー・ロス米商務長官(コマース・セクレタリー)が、「通貨切り下げをする国には、制裁を科す法律をアメリカは作る」と言った。
それ以来、ドル円の為替相場は、1ドル=110円の壁を破って、108円の円高(えんだか)方向(トレンド)に落ち始めた。ドル安をアメリカ政府は、はっきりと望んでいるのだ。
だが、私の杞憂(きゆう)だったようだ。そこまで事態は悪化しない。世界を揺るがす、アメリカと中国の貿易問題 は、実体、実需の経済での対立だから、まだ目に見えて、健全だ。金融、資本市場での、国際収支、資本収支では、今もアメリカのドル一極(いっきょく)体制のままだ。ここには、中国は、まだ手を触れていない。
資本収支(中国が貿易黒字で貯めこんだドルは、ニューヨークの資本市場で、多くが運用されている)での対立 が、本気で起きると、中国は、米国債(アメリカのナショナル・ボンド。
米財務省証券 TB トレジャリー・ビル)をニューヨークの 債券市場(ボンド・マーケット)で、打ち始める。 そうすると、米ドルの暴落が、本当に起きる。それは、アメリカ資本主義の終わり、となる。
中国も、返り血を浴びて、大きな打撃を受ける。だから、これは、やらない。今の貿易摩擦(トレイド・コンフリクト)の緊張関係は一旦(いったん)は、収まる。その兆しがようやく見えた。 トランプは、自分は、“ ディール(取引、駆け引き)の人 “ だという厳しい自己拘束、自分への運命的な縛り に戻らなければいけない。トランプは、自分は、商人、商売人、ビジネス・マンだ。だから、戦争をする人間ではない。大きな戦争の指揮を出来る人間ではない、という、自分への戒めを守るべきだ。
戦争をしたら、どれぐらいたくさんのカネ、出費が掛かるか。そして、それが、さらに国家財政を圧迫するか、商売人、経営者なら、死ぬほど分かっている。ただでさえ、アメリカの国家財政は、火の車で、ボーボーと燃えて、大変だ、というのに。
アメリカ政府の財政赤字は、公表されている ワシントンの連邦政府(フェデラル・ガヴァメント)だけで、22兆ドル(2500兆円)だ。地方政府と健康保険、年金などを入れると、公的債務(パブリック・デット public debt )は、本当は、この4倍ある。
だから総額は、そろそろ 100兆ドル(1京=けい=1000兆円)だ。 この他に、ほとんど同額の、民間の大企業、大銀行たちが隠し持っている(飛ばし、で子会社群に隠している)負債 が、同額ぐらいある。 だから合計で、約2京円(200兆ドル)だ。 実に分かり易い、覚えやすい数字だ(笑い)。 2千兆円の10倍だ。 アメリカ帝国、アメリカ資本主義は、これで、もう首が回らない。
それを補填、穴埋めするために、日本政府から、これまでに2000兆円(20兆ドル)ぐらいをふんだくって、強制的に供出させて、強制徴収の、秘密の借り上げ(米国債、その他の公債買い) を、している。が、こんなものでは、とても、やりくりできない。商売人、企業経営者あがりの トランプには、この真実の 借金地獄が、我慢ならないのだ。
これまでの他の大統領たちは、「 え、そんなにあるのか」と、知らされたときにも、びっくり仰天したあと、「私の所為(せい)ではない。前から積み上がったものだ」で、知らん顔をして、「財政赤字の問題は、自分の任期が終わるまで、ほっておこう」と 逃げた。 トランプは、それが出来ない男だ。
本当に優れた、企業経営者たちは、自社が抱える 借金地獄と格闘して、そして、狂い死にする。
世界中の人々が、この半年、注目していた、次世代スマホ開発戦争 と5G では、アメリカが負けた。中国の勝ちだ。トランプは、大きくは、米中の貿易戦争で負けたのだ。このことを、トランプはじっと噛みしめている。
大統領になる前の選挙の時から、ずっと連戦、連勝で、30勝ぐらいしてきた。女性問題以外では(笑い)ずっと勝ってきた。 この4月24日に、「ロシア疑惑」(ラッシアン・コルージョン、Russian Collusion )は、民主党の嫌がらせ、濡れ衣(アメリカの開拓史上で起きた witch hunt 魔女狩り と同じだ)だ、と、はっきりした。
ボブ(ロバート)・ミューラー特別検察官(スペシャル・カウンシル。政府から独立した、政府を取り調べる強い権限を持つ )の、大統領弾劾(インピーチメント、impeachment ) を議会に勧告出来る攻撃を、トランプ側は撃退した。 ボブ・ミューラー(ムラー)は、惨めに敗退した。この男は、トランプに早く(2017年5月)にバッサリと首を切られた、コミーFBI長官の、その前のFBI長官だった。
ワルのヒラリー派の、旧勢力の官僚組織のボスの主要な1人だ。彼らの負けだった。ボブ・ミューラーは、このあと、金儲け一点張りの、ただの高給取りの高級弁護士(パワー・ロイヤー)になるだけだ。「民主党の中には、もう38人(凶悪なヒラリー派のことだ)しか、トランプ氏への弾劾攻撃を続ける議員は、いなくなったのよ。いつまでもこの問題にかかずり合うのは、やめにしましょう 」 このように、ナンシー・ペロシ下院議長が言った。
この女性(もう80歳近い、老婆の民主党の実力者。ドラ声の、すごみのある、声で演説する。労働組合大幹部マフィア の大親分の娘だ )は、トランプと深く、繋(つな)がっていると、私は、「国家分裂するアメリカ政治 七顛八倒(しちてんばっとう)」(秀和システム、この4月刊)で書いた。
トランプ攻撃を、彼女自身が、激しくやっている振りをしながら、矛(ほこ)を収めている。 同じく、メキシコ国境との壁作り、違法入国者(イリーガル・アライヴァルズ)の流入問題でも、トランプは勝った。
ということは、今度の中国との貿易戦争が、トランプの、この3年間(選挙期間を含む)で、初めての黒星、敗北だろう。 私は、そのように、“ 日本を代表するトランプ・ウォッチャー ”として、厳しく判定する。
IT戦争としての、ホアウエイ(Huawei 華為技術)を、巡る、この半年の激しい米中の先端技術戦争で、5G(ファイブ・ジー)ネットワーク を巡る 大容量の通信網づくりの 技術戦争では、中国の勝ちだ。 4Gに較べて、通信の情報量は、10倍どころか、100倍になるのだそうだ。アメリカは、窮地に陥っている。 アメリカの軍事情報網までも、この5G のシステムに乗って動かされるからだ、らしい。
トランプも、「しまった。どうも、自分の足元から負けが始まっている。私の負けだ 」と 気づいたようだ。2018年中 は、「私は、交渉ごとに強いのだ。貿易戦争にも勝つよ」と、余裕で、ツウイッタに書き込んでいた。 だから、トランプ大統領は、「ここらが、手の打ちどころだ。相手を押しまくってみて、それで、自分の方が劣勢になった、と分かったら、そこで 相手と折り合う」というのが、トランプ流の生き方の原理、プリンシプル principle だからだ。 だから、トランプ派、ただちにこの場面から撤退を始める。 中国と、deal (ディール、取引)の大きな枠組みづくりの、再出発を考えている。
ディール(deal 取引、駆け引き)の、内容であり、実質の協議である、ネゴシエイション negotiation の段階で、「90%まで、金額や、数値が出来ていた」のに、それを、ひっくり返したことが、トランプの間違い、戦略的な失敗、だった。
アメリカは、中国を叩(たた)きのめすのなら、10年前にやっておくべきだったのだ。
今からでは、もう遅い。中国が、この10年で、もの凄い勢いで、力をつけた。もう、アメリカは勝てない。アメリカは、「核兵器を5000発持っているぞ」と、言ってみたって(ロシアも5000発だ)。この両大国は、核競争のピークの1991年の最大時には、それぞれ、一万発ずつ持っていた。この競争で、米ソは、どちらも疲れ果てた。ソビエトは、この年に倒れた。もう32年前のことだ。
中国は、今も、合計で全土でたった800発しか、核兵器をもっていない。この点でも中国の勝ちだ。 核弾頭(ニュークレア・ウォーヘッド)は800発あれば、十分だ。どうせ、どの国も、簡単には撃て(発射でき)ないのだから。それよりは、他の分野に、どんどん着実におカネを掛けよう、と戦略的に対応した。この中国の勝ちだ。
去年の12月1日に、アルゼンチンのブエノスアイレスでのG20で、トランプは、習近平と大きく、折り合った。首脳会談で中国が折れた。中国は、ギリギリまで、妥協して、譲歩に譲歩を重ねて、「ここは、アメリカの言うとおりにしよう。自分たちが、世界のルールに従わないのが、いけなかった」と、もの凄い撤退戦(てったいせん)、退却を、中国はした。
中国共産党内の、リベラル派で、世界基準に合わせよう、急いで、民主政治体制(デモクラシー )に、体制を変更、改革してゆこう、と、強力に主張している 共青団(きょうせいだん、李克強首相が、中心)系が、この柔軟路線を、習近平派 に 強く主張して、飲ませていた。
このあと、今年の4月までは、中国は、アメリカ(USTRと商務省)に対して、平身低頭で、言うことを聞いた。 それを、5月5日に、トランプが、ひっくり返した。
ところが、この昨12月1日の、ブエノスアイレスG20の合意の、同日に、なんと、カナダで、ホアウエイの孟晩秋(もうばんしゅう)副社長を、カナダの政治警察( 国境警備隊。カナダ騎馬警察。ロイアル・カナディアン・マウンテッド・ポリス RCMP )が、逮捕、拘束した。
孟晩秋は、創業者の任正非の長女で、次期CEOと呼ばれていた。この女虐(いじ)めの逮捕事件 を、トランプは、知らなかった。トランプは、この日この時、ブエノスアイレスで、習近平と、「貿易戦争を収拾する」と合意していたのだから。
アメリカ国内の、反トランプ派のヒラリー派の反共強硬派の官僚組織が、やったことだ。ここから、米中関係は、激化、険悪化した。
やめとけばいいのに、実力も無いくせに、カナダ政府は、アメリカの忠実な属国(ぞっこく)であるものだから(全く、日本と同じだ)。あの、ジャスティン・“ヴィーバー” トルドーのガキの首相が、自分の刑事司法官僚を押さえつけることが出来なくて、みっともないことをして、アメリカの片棒を担いだ。
それで、中国を怒らせて、カナダ人のビジネスマンを装って中国で動いていた、カナダの高級な国家情報部員(見るからに、007 ジェイズム・ボンドのような、かっこいいハンサムのカナダ人)を2人、報復で捕まえた。今も拘束している。
こういう闘い、争いになると、中国は強い。 欧米白人になんか、何の劣等感もなく、容赦なく、国家スパイ捕獲(ほかく)合戦をする。
(副島隆彦加筆。2019年6月10日に、アメリカ政府は、日本国内にいる、親(しん)中国派の中の、さらに 中国のスパイになっている 人物たちの一覧表を、公開すると、言い出したようだ。)
先月の5月3日までは、米中の双方が、ギリギリまでの譲歩をしあって、貿易紛争の、内容の90パーセントのところまで、合意が出来ていた。それを、5月5日に、トランプが、突如、癇癪玉(かんしゃくだま)を爆発させた。
「中国に、追加関税の 3000億ドル(35兆円。25%のハイ・タリフ high tariff )を掛ける」と突発的に決断して、トランプ・ツウイッターに書いた。この「5月5日」が、今に至るも、ものすごく、画期(かくき)的に重要だ。これから先も、この「5月5日」から貿易摩擦(コンフリクト、経済戦争)が激化した、と長く語られるだろう。
話し合い(交渉)では、その最中に、手を振り上げた方が、負けだ。トランプの負けだ。“ ディール(取引、駆け引き)の人 (このプリンシプルで動く人) ” であるトランプが、自分で、交渉のテーブルを、カッとなって、ひっくり返してしまった。この5月5日に、一体、何があったかを、私たちは、今後、何度でも考えなければいけない。このことを、あとの方で解説する。
世界中に波及した、米中の貿易戦争の打撃で、各国の首脳たちが脅(おび)えている。自分の国に、どのような悪影響が出るかを、細かく測定している。
我らが日本の安倍晋三首相の、あの、浮かぬ顔の、心配だらけの顔を見ていると、「この脳天気の、生来(せいらい)、心配事(しんぱいごと)が身につかない、すべて他人事(たにんごと)にすることで、生き延びてきた男でも、これほどの重い圧力が、掛かるものなのだな」と、私は、じっとテレビのニューズの画面を見ていた。
新天皇の即位の儀式、お祝い(5月1日)の時にも、それから、その後、トランプ大統領が日本にやってきて、大相撲を観て(5月26日)、翌日、新天皇に挨拶をしたときにも。この新天皇(外側に向かっては、国家元首、ソブリン、ドミナトゥスだ) の最初の外国の国賓としての会見、というは、日本の国家体制上、どうしてもしなければいけないもののようだ。
この最中(さなか)にも行われていた 日米交渉で、「日本の農産物と、自動車への、懲罰関税が掛けられる」とか、「農産物への関税を自動車への関税だけで、トランプに、我慢して貰うらしい。その分、F35などの兵器を買い増す。そういう密約が有った 」とかの、噂(うわさ)が、飛び交った。
この1か月前の、4月17日に、台湾のホンハイのテリー・ゴウ(郭台銘、かくたいめい)が、「台湾の総統(そうとう)選挙に出馬する」と表明した。この時、中国と台湾、そしてアメリカとの間で、何かが起きている、と私は、ハッと気づいて、裏側で進行しているであろう大きな変動を感じ取った。
これから、台湾が焦点(フォーカス・ポイント)になる。来年1月末 の 台湾総統(そうとう)選挙で、テリー・ゴウが、総統に当選するか、しないか。この問題が、東アジア地域(リージョン、region)どころか、世界政治の大きな焦点になってきた。
台湾が、中国と、アメリカとの、取り合いの焦点になる。テリー・ゴウ(郭台銘、かくたいめい)が、当選したら、このあとの東アジア(極東。ファー・イースト)は、どうなるか。このことが 重要な政治課題(ポリティカル・アジェンダ)になった。
テリー・ゴウが、38年掛けて作って、育てた 鴻海精密工業(ホンハイ、フォックスコン)が、アメリカのアップルのスマホの90%を作っている。 最新式の iPhone x(アイフォーン・テン。12万円ぐらいする ) も、すべて、ホンハイが、中国の深?(及び広東省全体)で組み立てている。そして、その向こうの、四川省一帯にまで広がる、サプライ・チェーン(部品供給網)の群小の企業、工場で、作っている。
この問題に、インテル、クアルコム、英国ARM(ソフトバンクが、2年前に、200億ドル、2兆円で突如、買った。今の事態を深く準備していたのだ )、AMD 、 韓国サムスン、エリクソン(スウエーデン)、ノキア(ノルウエー)、などの、半導体の開発メーカーと、EMS(イー・エム・エス、エレクトロニクス製品の受注組み立て工場)企業 も、すべて、深く関係してくる。
自社の 電子部品の販売、供給先としての、ホアウエィ(華為)か。それとも、5Gの基地局の世界最先端の製造業者としてのホアウエイ(華為)か、の 問題が、立ち現れた。この他にTSMC(ティー・エス・エム・シー 台湾積体電路=せきたいでんろ=製造)という台湾で一番、重要な大企業が、ホンハイと競争しながら存在している。
TSMCは、ホアウエイにも、その頭脳の中心である最高級の半導体(セミコンダクター)を納品している。TSMCの設計図(ファブレス)そのもの は、米クアルコム社 らしい。そして、それらの基本特許は、英国ARM だ。
こういう、ITの先端技術のことなど、私、副島隆彦が、そんなに知っているはずがないのだ。 分からないのに、この2カ月、本当に勉強した。 あれこれ、知っている人たちに聞いた。日本には、政治(の)思想やら、金融、経済 の大きなことは、ほとんど知らないくせに、ITの専門知識だったら、世界基準で、相当にかなり高度なことを知っている人が、たくさんいる。
旧(きゅう)郵政省 の 電波、通信官僚たちは、孫正義が1990年代に、「 第2電電に、市場を開放せよ」で、攻めて込んできたとき、ボロボロに打ち破られ、散々、煮え湯を飲まされた。恨み骨髄である。孫正義の後ろには、アメリカの政府高官たちが付いていた。逆らったら、叩きのめされる。日本の首相や、大臣たちにまで、脅しの電話がかかってきた。 旧NTTの副社長や、郵政省(今は、総務省の中)の電波官僚たちは、何人も、過労死や、不審死で、死んでいる。すべて自殺扱いになった。これぐらい、先端技術をめぐる ハイテク、IT戦争というのは、恐ろしいのだ。 だから、日本の役人たちも、電波、通信のことは、世界基準で、何でも知っている。
ヨーロッパの動きをじっと見ていると、決して、アメリカの言いなりには、動いていない。ドイツも、イギリスも、イタリアも。
日本には、ITや、先端の通信技術のこを知っている人たちは、それこそ山ほどいる。私は、彼らからそれとなく、聞き出した。 そのために、私は、この2カ月で、300本ぐらいの記事を読んだ。英文の記事も読んで、これらの ITの専門用語を、必死で理解しようと、自分の脳で努力した。それらを、これから、何回かに分けて書く。
この2カ月の成り行き(経緯)として、分かったことのひとつは、「今度の、米中ハイテク戦争では、アップル Apple は、もう、終わりだ」と、いうことだ。スマホの世界一の売り上げは、アップルだ。高級品(ハイ・エンド)だ。その次が、いつの間にか、ホアウエイになっていた。それから、3位が、韓国のサムスンだ。そして、中国の格安スマホの、シャオミー(小米)だ。
アップルは、もう、中国に死命を制せられた。死刑宣告を受けたに等しい。アップルのスマホは、90% は、ホンハイが、中国で作っている。だから、ここが、米中貿易戦争の次の戦場、焦点になったら、アップルは確実に潰れる。 ホンハイも潰れる。 ホアウエィどころの騒ぎではない。そんなことを、トランプと、習近平は出来ない。アップルやホアウエイに電子部品を供給している、アメリカのシリコンバレーの 電子部品(デバイス)の開発企業も潰れてしまう。
今や、世界中で、それこそ、アフリカでも、中東でも、南米でも、どんなに貧乏な人たちでも、1万円(100ドル)のボロで安価(ロー・エンドlow end )のスマホを使っている。インドでは、シャオミー(小米)や、OPPO(オッポ)や、VIVI とかの 安いスマホを使っている。世界中の民衆が、今やスマホを持っている。
それを、トランプと アメリカの通商官僚たちが、ぶち壊して、「グーグルのアンドロイドもホアウエイに使わせないようにしてやる。そうすれば、中国は根を上げるだろう。アメリカの勝ちだ 」などと、甘い考えで、動いていたとしたら、アメリカ人というのは、アホだ。 図体(ずうたい)ばかりでかい、デカのウスノロだ。身長が、1メートル90センチもある、男と女どもだ。
アメリカの被(ひ)支配階級(一般庶民)は、驚くべきデブで見苦しい。黒人たちもジャンク・フードの長年の食べ過ぎで、酷(ひど)くデブだ。体重が150キロぐらいある肥満人間が、山ほどいる。自重(じじゅう、自分の重さ)で、自己崩壊するのではないか。それに対して、支配階級(ルーリング・クラス)は、すらりと痩(や)せている。イヴァンかと夫のジャレット・クシュナーのような、ノッポの極みの連中だ。 これでアメリカの階級社会(クラス・ソサエティ)分かる。
今、米中貿易戦争で、闘っている構図は、歴史的には、アホのイギリス国王の ジョージ3世 が、手を振り上げて、「なにー、アメリカの植民者どもめが、独立するだと。絶対に許さん」 と、 英国の大艦隊を派遣して、アメリカ独立戦争(1775年から1783年。1776年7月4日が独立宣言。アメリカの建国記念日 )
を叩き潰しに行ったのと、似ている。そして、英国の国王軍は、7年間の激しい戦争(1781年まで)で、大敗北した、のと同じだ。 貧乏で、力も無く、カネもない、ジョージ・ワシントンの独立軍の方が、英国軍に、負け続けながらも、しぶとくゲリラ戦で、勝ったのだ。 アメリカ民衆の勝利だった。ベトナム戦争と同じだ。
そして、なぜ、イギリス国王は、アメリカに負けたのか。それは、本当は、アメリカの植民者(コロニスト、colonists )たちの反乱である、独立軍に負けたのでは無い。フランスと、スペインと、オランダの艦隊が、その隙(すき)を突いて、首都のロンドンを攻略する(1781年)、という恐るべき状態に入ったからだ。
イギリスの全艦隊は、すべてアメリカへの補給で出払っていた。ロンドンは、丸裸だったのだ。イギリス国王、ジョージ3世は、震え上がった。自分のいるロンドンが危ない。 だから、アメリカ独立を認めざるを得なかった。イギリス王国(このあと1751年に、大英インド帝国を従えることで帝国にもなる)の負けだ。この 歴史の大きな真実を知っている人は、今でも、あまりいない。
アメリカ人の歴史家も、ヨーロッパ人の 歴史家(ヒストリアン)たちも、それぞれ、自分の国内の細かい歴史ばかり、知っていて、このもっと大きな、視点からの重大な事実を軽く見ている。
イギリス(大英帝国)の唯一の、世界史規模での敗北は、アメリカに独立されてしまったことだ。
それをフランスが仕掛けた。だから、フランス国王ルイ16世(ラファイエットを使った)は、このあと、10年後に、イギリスの激しい憎しみを買って、アメリカ独立の承認(パリ平和条約、1783年)のわずか10年後に、ギロチン(断頭台)に掛けられた(1793年)。世界史の歴史は、このように、大きく、大きく見なければいけない。アヘン戦争(1839年から42年)で、大清帝国(だいしんていこく。清朝。当時、世界一のGDPを持っていた)を震え上がらせたのは、イギリスの艦隊が、広東省から、北上して、北京まで迫ってきたからだ(1841年)。この時、清朝皇帝の道光帝(どうこうてい)が、「私のいる、北京が、イギリス軍に攻められる。艦砲射撃を受ける 」と震え上がって、それでイギリスに屈服した(1842年、南京条約)。そして、イギリスは、阿片(あへん、オピアム)を堂々と、中国に売った。
中国国民は、あの時からの、地獄の苦しみの、180年間のことを、忘れない。一番悪いは、イギリスだ。 それに較べれば、頓馬(とんま)で、いいように、英米に騙されて、操(あやつ)られてやった、日本(軍)の中国侵略など、可愛いものだ。バカどもが、騙されて、「今や、欧米と肩を並べる大日本帝国だ」などと、思いあがって、馬鹿なことをした。
毛沢東は、1931年(満州事変、9.18事変)からの日本侵略軍に、助けてもらった。自分たちが、国民党に皆殺しにされないで済んだのは、日本のお陰(かげ)だ、と日本に感謝していた。日本からの訪中団にそのように、ポツリと話したのだ。この話は、遠藤誉(えんどうほまれ)女史が、最近書いた、「毛沢東は、日本と繋がっていた」(?)本に、きっと関連する。私は、まだ、読んでいない。
[2409]ようやく、やっとのことで米中貿易戦争(トレイド・ウォー)の全体像が、見えてきた。2か月掛かった。(2)
投稿者:副島隆彦
投稿日:2019-06-09 10:18:13
昨日、私が、読んだのは、「金日成は 4人いた」(李英命 著、りえいめい。韓国の立派な学者。成甲書房から2000年に復刊 )という、1978年に書かれた、執念の本だ。世界大戦が終わって、1946年に平壌(ピョンヤン)に、現れたのは、ロシアが作って仕立て、ニセの金日成で、本物の、朝鮮民族の英雄の、抗日パルチザン戦争を戦った人物は、1907年から、続けて4人いた、という、事実証明の、素晴らしい本だ。この本の紹介を、私は、近くやります。
トランプも、今のまま、いいように北朝鮮の核兵器問題を扱っていると、困ったことになるだろう。
この“北の核”を、真に操(あやつ)っているのは、本当は、アメリカ国内の宗教政治勢力なのだと、もっとしっかり知って、対処しないと、自分のいる首都のワシントンDCが危なくなるだろう。北朝鮮のICBMは、一万キロ飛ぶのだ。 トランプという、この泥臭い限りの、ニューヨークの マフィアの大幹部あがりの大統領でも、まだ甘いんだよ。私、副島隆彦は、今、自分の人生の最後に向かって、大きな「北アメリカ史」の歴史本を書こうと、着々と準備をしている。私が、アメリカ研究(アメリカン・スタディーズ American studies )の日本における最高理解者として、北アメリカの歴史の全体像を書いて、日本国民に与えなければいけない。そうしないと、日本人のアメリカ理解の、現状は、どうにもならないぐらい低劣なのだ。日本人の知識層で、誰ひとり、きちんとアメリカ合衆国のことを、大きく正しく理解している人間がいない。
今の低能と、低知識状態では話にならない。 アメリカ政府が、日本人の真のアメリカ研究を、封殺して、抑圧しているのだ。 今の日本のアメリカ研究学者(私よりも、5歳から10歳ぐらい上の人たち。東大教授が多い)では、全く、話にならない。
彼らを、今度こそ、徹底的に、教育してやる。私の大著 「世界覇権国アメリカ を動かす 政治家と知識人たち」(元は、1995年、筑摩書房刊)で、彼らが20年前に受けた 衝撃だけでは、足りなかったようだ。
どうして、アメリカ人は、この大きな歴史の法則 が、分からないのか。 下から、激しく追い上げてくる 勢力の方が、勝つのだ。 威張り腐って、「自分たちは、世界覇権国(せかいはけんこく。the hegemonic state ザ・ヘジエモニック・ステイト )だぞ。アメリカ帝国に、逆らう気か」と、居丈高になっている。せり上がってくる 次の世界帝国である、中国に、アメリカは、負けるのだ。
この大きな真実(トルース truth) と、大きな歴史(人類史)の法則が、分からないようでは、優れた頭脳をした人間とは言えない。 日本で、このことを、もう、25年も言い続けて、書き続けたのが、私だ。 この私の、言論人としての強さを、分かる人は、分かる。分からない馬鹿は、狂った政治宗教を脳の中に抱えたまま、自滅してゆけ。
アメリカは、このアップルへの追加関税の問題が出てきたら負けだ。その前に、矛を収めて、停戦、休戦(シース・ファイア cease fire )しなければいけない。 いや、本当は、シース・ファイア(停戦)ではなくて、 stale mate 「 ステイル・メイト」 だ。そのように、アメリカの有識者の、一番、頭のいい者たちの間で、目下、このことが言われている。そのような英文記事がどんどん出ている。
ステイル・メイトといのは、膠着(こうちゃく)状態のことだ。攻め手も、守り手も無くなって、もうどうしたらいいのか、分からない、という状態だ。将棋で言うところの「千日手(せんにちて)」というやつである。今、アメリカ(トランプ)は、この手詰(てづ)まり状態に入った。 ここで、トランプはぐちゃぐちゃと、まわりの目を逸(そ)らしながら、煙に巻きながら、それでも何とか、習近平が差し伸べる手に乗らないといけない。
アップルの創業者の、故スティーブ・ジョブズは、いくつもの先端技術の大泥棒(被害者は、ソニーなど) でありながら、世界の動きを読んで先に先に動いた天才だった。が、今のティム・クックCEO では能力が足りない、役不足だった。ティム・クックは、今、蒼褪(あおざ)めて、苦悩の中にいる。アップルは、中国から生産を余所(よそ)に移すことは出来ない。
ティム・クックは、今、のたうち回っている。 そのことを、トランプは知っている。だから、今度の、米中貿易戦争は、アメリカ即ち、トランプの負け、なのだ。
私は、はっきり書く。はっきりと分かったからだ。
「5G(第五世代、大容量通信網)とは、すなわち、ホアウエイのことだ」 ホアウエイが、中心部の核心の、特許の50%を押えている。50%どころか80 %ぐらいを押えている。 いくら、米クアルコムや、エリクソン(スウエーデン)が、5G基地局を作れるから、困らない、と言っても、ホアウエィに較べて、30%も値段が高い。しかも、日本のソフトバンクのスマホは、エリクソン(スウエーデン)製 の基地局の不具合、故障で、2カ月前に、半日、通信不能になった事故を起こした。 みんな知っている。
5G ネットワークでは、アメリカは、中国と台湾の の先端企業に 大きく負けている、という事実に、アメリカ政府が気づいたのは、一体、いつのことか。詳しく調べないといけない。あの、ピーター・ナヴァロ(通商担当の大統領補佐官。カリフォルニカ大学経済学教授。「米中もし戦わば」という、戦略本の著者 )が、ようやく、気づいて、声を荒げて警告を発し始めたのが、何と、やっと一昨年前の2017年らしい。
ホアウエィの任正非(にんせいひ)会長が、5月20日前後に、続けざまに出てきて、世界のメディア向けに言い放った。 「ホアウエィは、アメリカの制裁に負けない。11年前から、今の事態を想定していた。プランB(予備のタイヤ、 back up tire ×スペア・タイヤは、間違い英語 )がある。
今の事態に備えてずっと準備してきた。基本の半導体だって作れる(ハイ=海思=シリコンという子会社がある)。ホアウエイへの電子部品の供給先の企業たちが(アメリカ政府には内密で)、協力してくれると、言っている」 と、 もの凄く強気の発言を繰り返した。これに世界中、衝撃を受けた。
ホアウエイは、中国政府が背後から動かしてきた、秘密の軍事会社ではない。ホアウエイの株式は、従業員持ち株会 が98%を持っている。この従業員たちが、今、一団結して、もの凄く気合いが入っている。 「よーし、アメリカよ、そんなに言うなら、さらに最先端の世界最先端の技術を、どんどん作ってやろうではないか」 と、 全社一丸となって、ものすごい勢いになっている。
ホアウエイの全従業員16万人のうちの半数の8万人は、技術開発者である。 創業者の任正非(にんせいひ)会長は、株式をたった1.5%しか持っていない。 純然たる民間企業である。中国の国営企業ではない。
ホアウエイは、中国政府からも、差別され、嫌がらせをされながら、生き延びてきた会社だからだ。ホアウエィは、任正非が、正直に語ったごとく、「今から12年前の、2002 年に、今の事態を予測していた。このまま、行ったら、私が社は、アメリカ政府と衝突する。アメリカ政府に潰(つぶ)される」と分かっていた」
「だから、モトローラ(米の大手の半導体メーカー)に、会社ごと売ってしまおう。それが、ホアウエイが生き延びる道だ、と計画した。 ところが、モトローラ社が、最後の判断の所で、2002年に、ホアウエイの買収を役員会議で却下、断念した。だから、今の事態を招いたのは、アメリカのせいだ」
4,5年前から、アメリアの国防総省(ペンタゴン)の、サイバー戦争部隊(電脳空間での戦争のための軍隊)を、管理し遂行している専門家や、CIAたちが、「このままでは、ホアウエイに、先端技術の全てを握られる」と、危機感を露わにして、焦って、「ホアウエイは、アメリカの国家安全保障(ナショナル・セキュリティ)上の脅威だ。米軍の最高度の機密情報まで、盗まれてしまう」と、騒ぎ出していた。
問題は、ホアウエィの スマホに、本当に「バックドア」という情報盗み出し装置(マルウエア。悪質なウイルス・ソフト)が、仕組まれていて、それで、アメリカ政府の軍事 を含めた機密情報が、盗まれているか、否か、だ。この証明を、証拠付きで、アメリア政府は、提出しなければいけない。だが、おそらく出来ない。
それを、ITU (国際通信連合、インターナショナル・テレコミュニケイション・ユニオン)という電波、通信の国際機関に、提訴して(中国が、必ずするだろう)、そこでの争いにしないわけにはゆかない。「アメリカは、帝国だぞ。国連のような、腐った、貧乏国家の集まりの国際機関の言うことなんか、聞くものか」というのが、保守であるアメリカ共和党の党是(とうぜ)である。
それでも、アメリカは、「 ITU( 国際通信連合、本部、ジュネーブ)は、国連 the UN が出来る前からあった国際機関だ」 という理屈で、アメリカは、ここで争うことに従うだろう。この他にも、WTO(世界貿易機構)がある。WIPOもある。 これらの国際機関の仲裁(ちゅうさい)や、裁判、裁定に、アメリカといえども聞かなければいけなくなりつつある。 ITUの仲裁機関(スタディ・グループ)が、すでに動き出している、と英文の記事にある。
半導体開発の、中心部は、SEP(エス・イー・ピー standard essential patent スタンダード・エッセンシャル・パテント)と呼ばれる。この半導体の心臓部というか、頭脳そのものの特許を巡る、泥棒した、剽窃(ひょうせつ)した、真似したの 激しい主張と、反論の弁明と、をアメリカ政府とホアウエイ社は、これからITUでやることになる。
このあと、トランプ政権の商務省が、手を振り上げた親分(トランプ)を助けるために、すかさず 5月22日に、「ホアウエイ社への取引規制 の件では、90日間の猶予期間 を与える」と 発表した。猶予期間(grace period グレイス・ピリオド、という)ということは、8月22日まで、先延ばしになる。
これは、ホアウエイに温情を与える、ということではなくて、ホアウエイに部品(コンポーネンツ)を、供給、納品、販売している アメリカのIT企業の大手たちが、「売り上げが大きく減る・経営が苦しくなる」と 血相を変えて、アメリカ政府に、一丸となって、激しい抗議と要請を行ったからだ。火の手は、アメリカ国内で上がっているのだ。
このあと、習近平は、5月20日に、江西省(こうせいしょう。南の方の省 )のレアアース企業を、突然、訪問した。次は、レアアース戦争の始まりである。中国を甘く見ると、次々に、アメリカにボディ・ブロウで効いてくる、手を中国は打つだろう。 レアアースの戦略物資としての重要性は、今日は、説明しない。知っている技術たちは、詳しく知っている。
重要な転換点は、今から1か月前の、5月3日に起きたのだ。トランプが、「中国の野郎、いい度胸だ。俺に、ケンカを売る気か」とカッとなって手を振り上げた、その2日前だ。
以下の 新聞記事が、もの凄く重要だ。この記事を書いた、日経新聞の 中沢克二(なかざわかつじ)氏の、“チャイナウ・オッチャー“としての 頭脳が冴えている。私は、以下に載せる、日経新聞の 5月15日付の記事が、現在に至るも、米中貿易戦争を、語る上で、一番、重要な情報文であり、分析文だ、と判断している。
5月5日に何が起きたか。 どうして、この直後から、中国が、「これは、人民戦争だ」と言い出した。 「内政干渉だ」「中国への 不平等条約の 押しつけだ」 「中国製品と企業にまで、アメリカ政府の検証作業班が、入って、検査(インスペクション)をする、などと、厚かましいにも、程(ほど)がある」「相手の国に対する尊敬と敬意(リスペクト)を、アメリカは欠いている。礼儀知らずである」「中国の国家主権(ソブリーンティ sovereignty )への侵害だ」 「ここから先は、もう、中国は、我慢しない。これからは、長い持久戦(じきゅうせん)となる」と、言い出した。
この中国の剣幕(けんまく)の前に、実は、トランプたちは、たじろいで、立ち往生している。
交渉官の、ライトハイザーUSTR代表(閣僚級 )と、ムニューシン財務長官は、親分である、今や、独裁者(ディクテイター)に近いトランプの方を、見上げて、「ほら。だから、いわんこっちゃない。中国をついに怒らせちゃったよ。これまでの、12回の交渉で、上手い具合に、私たちが、周到に、中国の譲歩を引き出して、追い詰めていたのに。親分が、テーブルをひっくり返したよ。あーあ」という感じで、ボーとなっている。「オラ知らねー」だ。
トランプは、裸の王様だ。 英語では、 emperor's cloth エンペラーズ・クロウズ という。
かつて、日本を、半導体交渉(1985年)や、農産物交渉や、日米構造(こうぞう)協議 や、自動車交渉(1995年、円高で痛めつけた)。 日米構造協議 は、「ストラテジック・インペディメント・イニシアチブ」 SII(エス・アイ・アイ)という言葉を使って、日本を痛めつけ、脅し上げ、屈服させた。
この時から、「 日米 年次改革(ねんじかいかく)要望書」というのを作って、日本に対して、「お前の国は、これこれ、このように、構造的に欠陥のある国だから、以下に列挙する(200項目)事項に従って、自分の国の、劣った、愚かな商業慣習や、社会体制を、訂正、改良せよ」と、 アメリカは、命令した。
あのSII(エス・アイ・アイ)に、日本は腹の底から、「参りました」と土下座して、惨めな姿を晒(さら)した。それは、ビル・クリントン政権による、日本の金融制度(金融ビッグバン)の改革要求になり、日本の金融業界は、あの時から、ボロボロにされた。アメリカの巨大な博奕(ばくち)金融に、いいように騙されて、国民の資金を騙し取られる仕組みになった。
あのSII で、「中国よ。お前の国の、劣等な部分を、アメリカが、改良、改選してあげよう」と、 中国にやって見せたら、なんと、中国から、「そんな手に乗るかよ。中国は、そんなに甘くないぞ」という、冷酷な返事が、トランプの元に中国政府から届いたのだ。それが、5月3日だった。
以下の日経の中沢克二の記事に、そのことが如実に書かれている。しっかり、じっくりと読んでください。
それから、私は、遠藤誉(えんどうほまれ)女史の優れた、中国分析、そして、目下の米中 貿易、ハイテク戦争について、大いに学んだ。これらは、次回、載せる。
それから、講談社の幹部社員なのに、すっかり評論家になってしまっている近藤大介(こんどうだいすけ)週間現代副編集長(今も、この肩書きなのかな。彼とは、数回会っていて、私の熱海の家にも来たことがある)の中国研究と。
それから福島香織(ふくしまかおり)女史の 中国分析からも学んだ。福島香織は、あの、ますます凶悪な反共主義者の集団に純化しつつある 産経新聞 を首になったほどの、優秀な女性記者だ。
この4人は、中国語が出来て、中国の政府高官にまで、繋がって、密着取材、連絡の取り合いが出来る、日本を代表するチャイナ分析家たちだ。私は、この2カ月、彼らの文章から大いに学んだ。 今日は、ここまでにする。以下の新聞記事は、本当に、重要だ。 副島隆彦 記
(転載貼り付け始め)
〇 「 衝撃の対米合意案3割破棄 「習・劉」が送った105ページ 」
2019/5/15 日経新聞 編集委員 中沢克二中国政府が5月初め、約5カ月間の米中貿易協議で積み上げた7分野150ページにわたる合意文書案を105ページに修正・圧縮したうえで、一方的に米側に送付していたことが分かった。中国指導部内で「不平等条約」に等しいと判断された法的拘束力を持つ部分などが軒並み削除・修正されていた。14日までに米中関係筋が明らかにした。
ページ数で見ても実に3割もの破棄である。米側が重視してきたのは、中国による構造改革の実行を担保する法的措置。その重要合意のかなりの部分が白紙に戻ったことになる。世界を揺るがせた今回の米中貿易協議の事実上の破綻は、5月5日の米大統領、トランプによる唐突なツイートが発端ではなかった。中国側が105ページ合意案への修正を米側に通告した時点で既に決まっていたのだ。
画像。米中の対立は激しくなる一方だが…(2017年11月の訪中時、北京で言葉を交わすトランプ米大統領(右)と中国の習近平国家主席)=AP
話は4月下旬に遡る。米中合意への期待が高まっていたこの頃、国家主席の習近平(シー・ジンピン)は対米交渉方針の一大転換を迫られていた。側近の副首相、劉鶴(りゅうかく)を表に立てた対米交渉は、穏便な手打ちを重視するあまり、中国指導部内で一任を受けている範囲内を既に踏み越えつつあった。
とはいえ、習近平・劉鶴ラインが、共産党の統治体制に関わる最も重要な部分で米国に譲歩していたはずはない。それが米通商代表部(USTR)代表のライトハイザー、米財務長官のムニューシンらが指摘していた「残り10%」とされた対立部分である。
■「私が一切の結果に責任持つ」
今回の破綻はそれ以外の90%の部分。既に合意案ができていたという90%の部分で起きた。それはライトハイザーと劉鶴の努力の賜物(たまもの)だった。双方は北京とワシントンを行き来しながら繰り返し交渉し、7分野150ページという長大な量の合意文書案をまとめていた。劉鶴にも思い入れがあったはずだ。一字一句、中国語と英語を対比しながら精査。ライトハイザーが国際弁護士の目で見た細か過ぎるチェックも経て、まとめ上げた内容だったのだから。習近平と劉鶴の近さから見て「トップは大筋で了承していたはずだ」と考えるのが常識的だろう。
だが、送られてきたのは根幹部分を30%も削った文書。米側にいわせれば、法的措置など合意内容を担保する部分がほぼ消えた105ページの単なる文字の羅列にすぎない。それは習近平指導部が早期決着を自ら諦めた証拠だった。わざとトランプを怒らせるための行動にさえ見える。
なぜ、こんな事態に至ったのか。中国系メディアは、習近平が今後、起きることについて「私が一切の結果に責任持つ」と発言したと伝えている。その場は、105ページに削り込んだ通告文を米側に送る前に開いた共産党中央の意思決定機関、政治局常務委員会や政治局会議とみられる。
ワシントンに現れた中国の劉鶴副首相(左)は「習近平特使」の肩書を持っていなかった(ライトハイザー米通商代表(右)との握手、10日)=ロイター
だが、中国関係筋は「これは『下心』がある意図的な報道だ」と指摘する。どういうことか。「劉鶴の訪米前に修正案を米側に示す決定は、最高レベルの『集団決定』である」。つまり、習近平が自らリーダーシップをとる形で主動的に「一切の責任を持つ」と発言したとは限らないのだ。
「事実を覆い隠すため『トップ主導』を強調する装われた記事」。もしくは「真実を行間から読み取れ、と示唆した記事」であるというのだ。「トップの責任でトランプに一度、ノーを突き付けるしかない」。中央指導部内の討議を経て決議した結果、そう迫られたとも推測できる。
共産党の別格の指導者を指す「核心」である習近平といえども、もう一度、合意を取らないとこの決定は覆せない。いわば交渉を引っ張ってきた「習・劉」ラインが、周りから足かせをはめられた、ともいえる。
■「不平等条約は受け入れず」の大合唱
ここに至った中国側にもやむにやまれぬ事情があった。
「内政干渉を法律で明文化するような不平等条約は受け入れられない――」
共産党内では、こうした声が日に日に高まっていた。70年前の新中国建国に当たって共産党は過去の封建王朝が結んだ「不平等条約」を厳しく批判。決してその轍(てつ)を踏まないと民衆に誓った。中国は建国70年を迎える現在に至っても「不平等条約」というレッテルに敏感に反応する(北京の天安門広場で、3月)アヘン戦争の終結時、清とイギリスが結んだ南京条約(1842年)、日清戦争の下関条約(1895年)などが代表的な不平等条約とされる。結んだ清王朝は滅んだ。今回の米中合意案が本当に不平等条約に等しいのか、には疑問がある。とはいえ共産党政権にとって一大事なのは確かだった。
過去の中国の行動を知る米国は、曖昧な合意では構造改革が実際に履行されるか信用できない、として法的措置による担保を求めた。官民の様々な場での強制的な技術移転の禁止、国際的な技術・知的財産権の窃取の禁止、国有企業補助システム及び全企業への輸出補助金の廃止。範囲は幅広い。
思い返せば4月下旬、習近平はすこぶる不機嫌に見えた。25~27日に北京で開いた広域経済圏構想「一帯一路」の第2回国際会議。30カ国以上の首脳級が集まった晴れの舞台だというのに、表情は晴れやかとはいえない。
中国国営メディアは2年前の第1回会議の際は、メディアセンターの大きな液晶画面に主会場を他国首脳とともに闊歩(かっぽ)する習近平の様子を逐一、映し出していた。自信に満ちあふれた笑顔、大国のトップにふさわしい風格が印象的だった。
だが、今回は会議開始の時間さえ発表せず、習が歩く姿も一切、映し出さない。習演説が始まる時、予告なしにいきなり画面が切り替わった。この頃、世界中が米中交渉の妥結に期待していた。だが、習は国内情勢から早期妥結が困難なことを自覚していた。
■次の勝負は「大阪G20」
習はトップ就任以来、苛烈な「反腐敗運動」を展開し、絶大な権力を手にした。しかし、その勢いにはやや陰りが見える。「習近平時代」になって6年以上もたつのに、国民が実感できる経済的な成果を得られていないからだ。高度成長で中国を世界第2位の経済大国に押し上げた功績は、全て前政権までのものである。9日にワシントンに現れた劉鶴は「習近平の特使」という身分を失っていた。全権を持たない遣いの使命は「交渉は決裂ではなく、今後も続く」という宣伝だけにあった。劉鶴がワシントン滞在中だった10日、トランプ政権は追加関税を発動した。13日、中国側も報復措置を6月1日からとると発表した。
同じ13日、トランプ政権は中国からの輸入品ほぼ全てに制裁関税を課す「第4弾」の詳細を公表した。その発動時期は6月末以降。トランプは6月末、大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議で「習近平と会談することになるだろう」としている。だが、実現したとしても片手に「全品目制裁リスト」という脅しの材料を掲げたのっぴきならない対決の場になる。「『不平等条約』は断固拒否。対米合意案3割を破棄し105ページに」。中国のかたくなな姿勢によって交渉の基礎自体が揺らいでおり、先行きは楽観できない。(敬称略)