水車(小水力発電)

風土ということばよりも水土という言葉が好きだ。水と土。日本の国土を象徴するすばらしい言葉ではないか。日本だけではない。あらゆる国土の基本は水と土。

水土の国々には水車がよく似合う。太古の昔から川があれば水車があった。

この本の前半は、水車による小水力発電(マイクロ水力発電)を再評価し、再生可能エネルギーとしての小水力の魅力を語る。著者の小林久氏は茨城大学教授で小水力利用推進協議会の運動をすすめている人でもある。(後半の鈴木誠氏の土と農業の話は後日)

水力発電といえば大規模ダムをイメージするけれど、小水力発電は、出力が1000kWh程度以下の小さな水力発電所。そして、大規模ダムのように環境を破壊することはない。

ドイツには、出力1000kWh未満の小水力発電所が日本の10倍以上あるらしい。日本に比べて水に恵まれているとはいえないドイツでさえこの数。

日本国内で小水力に適した場所は数万カ所あるという。これから地域のエネルギー自給率を高める技術の切り札が小水力発電かもしれない。

水力発電の魅力は燃料がいらないこと。火力発電は石油や石炭を使うが、小水力は燃料不要で原子力のように核のゴミも出さない。しかも水力のエネルギー密度(単位面積あたりのエネルギー量)は、風力や太陽光発電にくらべても抜群に高い。

もう一つ重要なことは、EPR(Energy Profit Ratio:エネルギー利益率)という指標だ。EPRは出力エネルギーに対する投入エネルギーの比。EPR=1.0でトントンということ。主なEPR値は以下のとおり。

石炭火力 6.55
石油火力 7.90
原子力 17.40
太陽光発電 2.0
風力 1.90
水力発電 15.30

つまり、小水力発電原子力についでエネルギー利益率EPRが高く、火力発電よりも2倍も効率がよいということだ。

地産地消再生可能エネルギーとしての小水力。環境負荷が小さく、日本の水土、地形、自然環境に適合した適正技術としての小水力発電

では、なぜこんなにすばらしい技術が普及しないのか?エネルギー開発と法律問題(河川法)や水利権問題等々が複雑に絡んでいる。

「水」の力、「土」の力 ?足もとからの日本の国力再生と自立論? (NEXTシリーズ)

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