ホモ・サピエンスの誕生(河合信和)

ホモ・サピエンスの誕生 (市民の考古学)

ホモ・サピエンスの誕生 (市民の考古学)

 2007年11月の発行。「市民の考古学」シリーズの一冊。人類進化に関連する最近の考古学の知見が網羅されている。
 つい最近まで信じられていた「猿人→原人→旧人→新人(現世人類)」といった階段を上るような順序だった進化プロセスという常識が覆されつつあるということ。(従来の段階説は西洋の悪しき進歩史観でしかない、ということか。)
 たとえば、ケニアのツルカナ湖畔では、少なくとも4種類の異なる人類が共存しながら暮らしていた。石器を作った人類もいたが、作らなかった人類もいた。
 また、ネアンデルタール人と現世人類は一定期間共存していた。
 両者間に交流や戦闘や交易はあったのだろうか。
 ちょっとビックリしたのは、なんと、ネアンデルタール人が「装飾品」を製作していた可能性が高いということだ。動物の骨を加工した首飾りのような装飾品。もしこれが真実だとしたら、彼らは象徴化能力を獲得していたのだろうか。
 マイズンや中沢新一がいう認知的流動がネアンデルタール人の脳髄に生じていたのだろうか?おそらくそうではないでしょう。では、装飾品を製作する原動力になったものは何か。精密な石器を作り続ける原動力と同じようなものではないか。
 おそらくぼくの仮説では、一種のディスプレイ行動ではなかったか。長谷川女史のいう「孔雀の羽」の一種。
 つまり、ネアンデルタール人には、現世人類におけるような「ドーパミンの強化回路による行動様式」はできていなかった、筈だ。
 もしできていれば、我々と同じような技術文明を創造していた筈だから。