快レバー装置

 伊勢史郎を再読。ラットは、スキナー箱(自発的にレバーを押して自分の脳への電気刺激を生成する装置)により脳内自己刺激行動を起こさせることができる。別にこれはラットに限らない。すべての動物がこの行動をとる。これは、動物たちのすべてが、人間がしつらえた人工的に快感を生成する装置(スキナー箱のレバー)を道具として身体化することができることを意味する。これに対して、ヒトは快感を得る仕組み(暗黙知を働かせるときに快感を生成する仕組み)をもともと生得的・遺伝的にもっている。脳の中に自前の快感物質分泌メカニズムをつくってしまったのが現生人類である。それは前頭葉の前頭連合野とA−10神経が関与している。このメカニズムにスイッチが入ったのはいつ頃か、そしてそれはどのようにしてか。3万年前の文化爆発の時か。300万年前の石器の製作開始の時には何があったのか。人間特有の社会システム・コミニュケーションシステムと心的システムの発生とこれらの相互作用とこのメカニズムとはどう関与するか。
 「快感神経を人工的に刺激されるラットが命がけでレバーを押すのと同じようにして、ヒトは、暗黙知を無用に働かせて「過剰」に道具を使用するのである。そのためにヒトは生命の存続という目的にはそれほど必要もない道具を次々につくり出してくるのだ。」(P104)
 暗黙知を作動させることによって新しい意味が生成し、この新たな意味生成によろこびを感じるメカニズムが生まれつき身体の中に備えられた動物、これが他の類人猿にみられない現世人類の著しい特徴である。
 3万年前にこのメカニズムにスイッチが入った。なぜか。ホロビンの分裂病発症と関係があるか。内言の発生との関係はどう説明できるか。社会システムと心的システムとの関係。快感進化論とアフォーダンスオートポイエーシスとの関連性はどうか。特に、伊勢史郎は、暗黙知理論とアフォーダンスとの関係について考察している。また、認知心理学におけるワーキングメモリや多重フレームモデルと暗黙知理論との関連性についてもふれている。さらにミーム学説との関連性。
 朝、松岡正剛の日本史XYZビデオ。夕方、次男を塾まで迎えに。待っている間、ラリーキングのインタビューを聞く。アンちゃんは相変わらず明るい。救いだ。中学受験まであと少し。がんばろう。