トランプはまだ負けてない (2020年12月15日  田中宇)

田中宇さんは、先日「トランプの敗北」を書いたあと、まだトランプが勝てる道があることに気づいたそうです。

なんだかおもしろくなってきたぞ!

トランプはまだ負けてない
2020年12月15日   田中 宇
この記事は「トランプの敗北」の続きです。

トランプ米大統領の11月の大統領選での敗北が決まったという趣旨の分析記事を一昨日に有料記事として配信した。それなのに私は今日、トランプはまだ負けていないと題する記事を書いている。どういうことか。どっちなのか。「トランプの敗北」の記事では、以前の記事「トランプ再選への裏街道」で紹介した、米憲法修正12条に基づいた「裏街道」の道が12月14日に絶たれることを理由に、トランプの敗北が確定したと書いた。トランプが「裏街道」を進むには、全米各州で選挙人集会が開かれた12月14日に、バイデンが勝ったとされている接戦諸州のいくつかで共和党が反逆的な選挙人集会を開いてトランプを当選者だと決める必要があるが、それを挙行した州は皆無だった。各州の州議会議員団など地元の共和党組織が、トランプでなく軍産エスタブ(深奥国家。トランプの敵)の言うことを聞き、反逆的な選挙人集会を開いてほしいというトランプの要請を断ったからだ。トランプは、面従腹背だった共和党内の軍産系の勢力にしてやられた。「裏街道」のやり方では、トランプはもう勝てなくなった。だから私は「トランプの敗北」を書いた。

しかし、あれを書いた後、まだトランプが勝てる道があることに気づいた。それは、共和党の論客パット・ブキャナンによる分析を読んでいてハタと気づいた。ワシントンDCなどで、草の根の共和党支持者たちが50万-150万人ぐらいの規模で集まってトランプ支持の大集会を開き、民主党(や軍産マスコミ)による選挙不正をとりしまるべきだ、選挙の本当の勝者はバイデンでなくトランプだ、と主張し続けている。共和党支持者の83%が、民主党が開票時に不正して選挙結果をねじ曲げたと思っている。今後、共和党の草の根からの不満表明の動きが拡大していくと、議員など共和党内の上の方(エスタブ)の人々の中から、党内の民意に沿って民主党の選挙不正ともっと強く戦うべきだと本気で主張する勢力が増大しうる。 (Is Our Second Civil War — also a ‘Forever War’?)

ブキャナンによると、連邦議会上下院の共和党議員は220人いるが、現時点でバイデンの勝利を認めた議員はわずか12%の27人しかいない。共和党議員の88%は、バイデンの勝利を認めていない。これは、草の根党員のバイデン勝利拒否の比率83%より多い。しかしそれなら、彼らのうち、民主党が不正をやって勝った疑惑がある接戦州を選挙区とする議員たちが、地元で反逆的なトランプ勝利の選挙人集会をやるように動いたかというと、そんなことはない。

共和党の議員や評論家、財界人などエスタブ層の多くは、表向きバイデン勝利を認めずトランプ支持であるかのような顔をして、実のところトランプが不正の被害を受けたまま負けていくことを黙認する面従腹背をやっている。トランプ当選まで、共和党でもエスタブ層は軍産傀儡だった。トランプが就任して、ロシアゲートなどで軍産との政争に勝ったので、彼らはトランプに面従腹背していただけだ。88%の議員の多くは、トランプを軍産に売り渡した「ユダ」である。

しかし今後、草の根の共和党員たちが何百万人もの単位で「民主党の選挙不正を取り締まれ」「実際に勝ったのはトランプだ」「共和党の議員エスタブどもは面従腹背をやめろ」と要求し続けると、面従腹背をやめて草の根の勢いに便乗してトランプ続投のために尽力した方が自分の政治的将来にとって良いと考えて、軍産側からトランプ側に転向する共和党内の議員エスタブが出てくる。

民主党側の犯罪は、選挙不正だけでなく、ジョー・バイデンが息子のハンター・バイデンにウクライナや中国などで資金集めをやらせていた疑惑(ハンターバイデンの申告漏れ・脱税と、外国政府のために働いたのにそれを届け出なかった罪の疑惑)がある。この疑惑は、すでに大部分が事実として露呈しており、捜査・有罪化しやすい案件だ。ハンターは父親のバイデンのための「資金集めのトンネル」として機能しており、真の犯罪者は息子でなく父親のバイデンだ。この件がきちんと捜査されると、バイデンは大統領になれなくなる。 (隠れ支持者がトランプを再選させる) (自分の弾劾騒動を起こして軍産を潰すトランプ)

ハンターバイデンの疑惑は以前から取り沙汰され、バイデン陣営の大きな弱点の一つだったが、トランプ陣営はこの点をあまり攻撃してこなかった。米司法省は2018年からハンターバイデンを捜査していたが、それを発表してこなかった。私はこれまで「トランプは楽勝で再選できると考えてハンターバイデンを訴追しないのだろう」とのんきに考えていたが、違う話も出てきた。トランプの腹心を演じ、私も礼賛記事を書いたことがあるウィリアム・バー司法長官が、実は面従腹背者の一人で、ハンターバイデンを訴追せず民主党にこっそり加担してきたという見方が出てきている。トランプは12月15日にバーの辞任(事実上の更迭)を発表した。 (スパイゲートで軍産を潰すトランプ) (Business Partner Warned Hunter Biden)

トランプは、バーを更迭し、ハンターバイデンを逮捕・訴追するための新たな特別捜査官を誰かにやらせたい。トランプの任期中に間に合うのかどうかわからないが、ハンターバイデンが逮捕または訴追された場合、共和党の草の根集団は「民主党の選挙不正を取り締まれ」だけでなく「バイデン親子の犯罪を取り締まれ」という格好の武器を得る。この点が重要だ。 (Trump 'Wants To Appoint A Special Counsel To Probe Election Fraud And Hunter Biden')

ハンターの有罪性は明らかで、彼の犯罪行為が父親のトンネルとして行われたことも明らかだ。バイデンは、オバマ政権の副大統領だった時にウクライナを訪問し、その後ハンターがウクライナ国営企業ブリスマの役員になっている。似たようなことは中国でも起きている。バイデンは、息子を経由してカネをもらう見返りに、ウクライナや中国の政府から何を頼まれたのか。バイデンは国際的に腐敗している政治家だ。バイデンは中国やウクライナのスパイでないか。「トランプはロシアのスパイ」は無根拠な濡れ衣だが「バイデンは中国のスパイ」はそれより事実性が高い。米国のマスコミは、バイデンを勝たせるため、特に今夏以来の選挙期間中、ハンターの疑惑を報じたがらない。ハンターの疑惑はこれから噴出する。トランプがハンターを逮捕すると、その噴出はすごいものになる。マスコミが無視しても、共和党の草の根集団が党内のエスタブ層を突き上げる。父親のジョー・バイデンの犯罪性が問われ、選挙不正の疑惑と相まって、バイデンを大統領にすべきでないという突き上げが強まる。 (Hunter Biden's 'Tax Affairs' Investigation Began In 2018)

しかし、選挙の手続きはすでに確定しており、今さら何を言っても遅い、と民主党・軍産マスコミ側は言うだろう。それに対するトランプ側の反論は「米憲法で定められている大統領選挙絡みの日付は1月20日の就任日だけだ」というものだ。12月8日の「選挙に関する紛争の最終確定日(セイフハーバー)」とか、12月14日の選挙人集会の日、12月23日の当選証書がワシントンDCの連邦議会に到着していなければならない日、1月6日の両院合同会議(当選証書の集計日)などは、合衆国法典の定めであり、重大な選挙不正が発覚した場合や、当選した候補が実は犯罪者だった場合など、異例の事態になった場合、遅延が許されると考えるのが民主主義に沿っている。

1月20日より前に「民主党による不正で選挙結果がねじ曲げられた」「バイデンは犯罪者だ」といった点で共和党が団結できれば、これらの民主党側の犯罪性があとから判明したことを理由に、選挙人集会や両院議員会合のやり直しを決められる。共和党は現時点で両院議員会合の多数派だし上院議長も握っている。1月20日まで、あと5週間ある。この間に、トランプの機転と共和党の草の根パワーで党内のエスタブを軍産側からトランプ側に転向させられれば、トランプの逆転勝利がまだありうる。民主党は選挙不正をしたし、バイデンは犯罪者だ。この2点を「妄想」とみなすか「事実」とみなすかで、ここに書いた展開が「悪いこと」にも「良いこと」にもなる。米国には、軍産側とトランプ側の2つの世界観・事実性が併存している。今回の選挙で最終的にどちらが勝っても、この併存と分裂状態は今後長く続き、米国の「第2南北戦争」的な長い内戦状態になるとブキャナンは書いている。今後の長い「第2南北戦争」で、米国は覇権運営どころでなくなっていく。 (Is Our Second Civil War — also a ‘Forever War’?)

まずは、トランプがハンターバイデンを逮捕訴追できるかどうかだ。これができないと、おそらく共和党の草の根集団はしばらく騒いだ後に雲散霧消していき、トランプの敗北が確定していく。一昨日書いた「トランプの敗北」の路線になる。逆に、もし共和党の草の根集団の動きが共和党エスタブの転向や民主党による選挙不正の暴露、トランプの続投、軍産の弱体化にまで発展するなら、それは人々が腐敗した軍産支配を転覆させる米国らしい民主主義的な「逆カラー革命」になる。草の根の決起を扇動して「国民国家」を自分たちの手で勝ち取ったのだというシナリオを具現化したフランス革命以来の劇的さだ。マスコミやネット企業など軍産のインチキさが露呈する。トランプはそこまで意図しているのか??。人々を政治覚醒させるため意図して劇的にしている??。ブレジンスキーが墓の下で喝采している??。まさか。わからない。トランプっぽい展開だ。日本人の多くが知らない「月の裏側」的な、米国のほんとうの本質。まだあと何週間か、米国は見応えのある未確定な状態が続く。 (世界的な政治覚醒を扇るアメリカ)

トランプがハンターを訴追できない場合、もしくは1月20日までに共和党エスタブたちの十分な転向を引き起こせない場合、1月20日からバイデン政権になる。だがその場合でも、米国民の半分を占める共和党支持者の80%は、米国で「完全犯罪」の選挙不正が行われたと考え続ける。民主党支持者の10-15%も、選挙不正があったと思っている。合わせると、米国民の半分が、バイデン政権は選挙不正で成立したと思い続ける。米国で選挙不正が行われ、マスコミや裁判所、権威筋がそれを隠匿した。そのような考え方が米国民の半分の頭の中に残る。これに気づいた人々は、コロナを口実にした都市閉鎖がとんでもないインチキな愚策であることにも気づく。米国民の半分が「覚醒」した人々になる。半面、バイデン政権は、都市閉鎖の強化やマスクの着用義務化をやっていく。覚醒した人々は取り締まりの対象になり、弾圧される。だが彼らは、弾圧されることを通じて、自分たちの覚醒が間違っていないことをさらに確信する。キリスト教的な革命の精神が育成される。トランプは辞任後に逮捕されてキリストの役割を担う。すごいシナリオだ。 (Former Special Forces Officer Warns Of 'Color Revolution Tactics' Used Against Trump)

コロナで大半の人々が貧困層に突き落とされつつあるのに、株価は史上最高値を更新し続ける。これもQEによるインチキだ。バイデン政権は地球温暖化対策も強化する。温暖化人為説もインチキだ。バイデン政権自体が、選挙不正でトランプを倒して作られたインチキ政権だ。世の中は、すでにインチキだらけになっている。米国民の半分がこれらに気づき、不屈の革命精神を涵養していく。その結果、何がどうなるか。今後の数年間が見ものなる。このシナリオの裏にいる人々(WEFとか)は、ジョージ・オーウェルディストピア小説1984年」に似せた現実を作ることで、人類の怒りを意図的に扇動している。 (NO PRIVACY, NO PROPERTY: THE WORLD IN 2030 ACCORDING TO THE WEF)

私は11月の選挙直後にも「トランプの敗北?」と題する記事を書いた2日後に、まだトランプに勝算があると分析する「トランプ再選への裏街道」を書くという右往左往をした。今回は2度目の右往左往だ。私自身は、右往左往するたびに、より深い米国政治のダイナミズムが見えてくる。当たり外れだけ問題するよりずっと面白い。 (トランプの敗北?) (トランプ再選への裏街道)

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