米国ではコロナ危機の歪曲を暴露しようという動きが出始めている。
■■新型コロナ「第2波」の誇張■■
2020年7月17日 田中 宇
世界的に新型コロナのウイルス感染拡大の「第2波」が来ていると、各国の権威筋やマスコミが騒いでいる。2020年7月に入り、日本を含む世界各国で、それまで減少もしくは横ばい傾向だった新型コロナの感染者数が再び増えている。日本の場合、毎日の全国合計の感染者数の増加幅が、6月中旬に1日50人前後だったものが、6月末に1日80-100人前後になり、7月上旬になると連日200人前後に増え、7月中旬にはこれが300-400人前後まで増えた。特に東京都の増加が大きい。これを見ると、確かに「第2波」が来た感じがする。日本政府は第2波の到来を否定したが、マスコミや評論家などの権威筋や、一般市民のふりをした軽信扇動派らは「これは第2波だ。政府は非常事態を再宣言し、外出自粛や店舗の閉鎖などを再度進めるべきだ」と言って、経済を優先している政府を批判している。権威筋は以前から第2波を「予測」しており、彼らは「だから言ったじゃないか」としたり顔だ。 (Is The Media Lying About A Second Wave Of Coronavirus)しかし、厚生労働省が発表している日々のコロナの統計を詳細に見ていくと、感染者数が増えたのはPCRの検査数を増やした影響が大きいことがわかる。日々の変動をならして趨勢的に見ると、6月中旬には毎日4000人前後を検査して50人が陽性だったのが、6月末になると5000人前後を検査して80-100人が陽性になり、7月上旬には毎日6000-7000人を検査して200人前後が陽性になっている。そして7月中旬には、検査対象が1万人を超える日もあった一方、陽性者が300-400人に増えた。検査数が増加し、それに伴って陽性者も増えているが、入院者の比率は上がっていないし、重症者も増えていない。後述するように、ウイルスの重篤性が下がり、陽性だが無発症や非感染(ウイルスが気道上に付着しているだけ)の人が増えている。 (厚生労働省 報道発表資料)
検査数の増加以外にも、PCR陽性者を増やすための政策的な仕掛けが巧妙に作られている。巧妙な政策の日本での代表例は、感染者数の増加がとくに激しい東京都新宿区で、PCR検査を受けて陽性になった区民に対して今年8月から10万円を支給することを6月末に決めた政策だ。この政策の大きな対象は歌舞伎町などの歓楽街で働く人々で、彼らにPCR検査の受診を奨励し、陽性になって休業せざるを得なくなったら休業補償として10万円の一時金を出すという意味の策だ。これにより、東京都が目の敵にしている都庁のおひざもとである新宿の歓楽街の営業を自粛させる効果もある。 (東京都の新指標きょうにも公表) (感染者急増のウラに10万円の見舞金)
コロナ危機の発生後、歓楽街の飲食店、接客店、風俗店などは客が急減し、従業員の多くが休業や解雇をされている。ぜひとも10万円がほしいはずだ。検査で陽性が確認された同僚と意図して密に接触することで自分たちもウイルスを吸い込めば、高い確率で検査で陽性になって10万円をもらえる(新宿区民であることが必要だが)。コロナの重篤性は日に日に下がっているし、歓楽街の従業員らの多くは若いので、ウイルスを吸い込んで陽性になってもほとんど発症しない。低リスクで10万円を得られる。みんな検査を受けて陽性になりたがる。新宿区ではPCR検査の受診者のうち20-40%が陽性という異常な高さだが、これは10万円の効果が大きい。新宿区だけで7月前半、1日平均40人の陽性者が増えている。日本の増加分の15%を新宿区が出している。日本政府は、米国など国際筋から、統計上の感染者を増やして第2波が来たかのような状況を作れと圧力をかけられている。新宿区の10万円支給は、政府の第2波演出のための策である。 (新宿区・新型コロナウイルス感染症対策ページ)
日本人はもともとBCGなどが理由で新型コロナに対する自然免疫が強く、ウイルスが喉の奥の気道の表面に付着しても気道の細胞の中に侵入できず、感染に至らないまま終わる人が多い。こうした人々はPCR検査で陽性になるものの感染していない。いわゆる「無発症の感染者」の多くはこの手の人で、実は感染すらしていない。「陽性者」の多くは感染していない。感染とは、ウイルスが気道表面の細胞の膜を破って内側すなわち体内に入った状態のことだ。PCR検査は、気道表面のウイルスの存在を確認するだけで、そのウイルスが気道の細胞に感染したかどうかを確認できない。ほとんど誰も感染しない状況下で、会話中に出る飛沫を通じて人から人にウイルスが移っていく。新宿の歓楽街の従業員らが10万円をもらうため、これを意図的にやっている疑いすらある。
東京都やマスコミなど権威筋は、歌舞伎町など新宿の歓楽街をコロナの温床のように誹謗・攻撃している。以前から「街の浄化」を望んできた警察などの肝いりっぽい。「新宿の歓楽街はコロナで汚染されている」という印象が意図的に流布されている。だがその一方で権威筋は、来客が激減し休業になって金に困っている歓楽街の従業員らに対し、10万円を支給するからコロナ検査して陽性になってくれと誘い込み、統計上のコロナ感染者を増やし、米国など「世界政府」筋からやれと言われている「第2波」の演出を実現している。そして、この策略の結果として新宿区のコロナ陽性者が急増すると、それを新たなネタとして「新宿の歓楽街はコロナで汚染された極悪の無法地帯だ」と喧伝・攻撃を加速している。実のところ、「悪い」のは歌舞伎町の人々でなく、政府マスコミなど権威筋である。もっとも世界的に見ると、日本の権威筋は中間の「小役人」でしかなく、コロナ危機の構造全体を作り上げた真の巨悪は、覇権運営を握る「米中世界政府筋」なのだが。
新型コロナのウイルスは、感染が広がるにつれて病気としての重篤性が下がっている。日本でのコロナの重症患者数は減り続けてきた。病院の病床不足を補うため4月から全国のホテル群のうちの8棟をコロナの患者(軽症者と無症状者)専用の滞在施設にしてきたアパホテルは7月15日、8棟のうち5棟でのコロナ患者の滞在を7月中に終わり、8月から通常営業に戻ると発表した。英米など世界中で、軽症者用に新設ないし借り上げられた施設の多くがほとんど使われないままで、いくつかは閉鎖・終了に至っている。日本のアパホテルの例はその一つだ。 (新型コロナウイルス無症状者及び軽症者の受け入れについて:アパ ホテル) (NHS Nightingale Hospital moves into standby having never been used)
統計とイメージで演出された第2波の騒動と裏腹に、コロナの感染は縮小しつつある。感染者の増加やクラスターの発生が喧伝されているが、ほとんどの場合、新たに発生した感染者がどのような症状なのか、無症状者が何割なのか、まったく報道されていない。政府は、コロナが重篤な病気だという印象を国民に持たせ続けたいので、無発症や非感染(ウイルスが気道表面に乗っているだけの陽性者)がとても多いことを隠したいのだろう。米国でも、第2波は検査の増加によって演出されたものだといくつかの方面から指摘されている。 (Ron Paul: Is The Texas COVID "Spike" Fake News?) (Goldman Spots An Ominous Turning Point In The US Coronavirus Pandemic)
しかしコロナは、いくら病気としての大変さが減っても、政治的には「とても大変な病気だ」「自粛や経済停止がずっと必要だ」というプロパガンダは全く弱まらず、むしろ逆方向の第2波の騒動が扇動されている。日本だけでなく米国でも、第2波として喧伝される感染者の増加が、検査の増加や感染者の定義の改悪(検査しなくてもそれらしい症状が少しあるだけでコロナと診断されるなど)によるものだと指摘されている。米国が主導する国際社会が各国に圧力をかけ、大した病気でなくなっているのに、世界的にコロナ危機の長期化が画策されている。 (NPR: “Mounting Evidence” Suggests COVID Not As Deadly as Thought. Did the Experts Fail Again?)
これまで何度か書いてきたように、長いコロナ危機で、すでに起きている世界恐慌も長期化され、米国の経済覇権国としての地位が低下し、ドルの基軸通貨性が失われて米国の金融バブル崩壊につながって覇権喪失が加速し、米国の代わりに中国やロシアなどが勃興して多極化が進む。コロナ危機はそのために長期化されている。 (コロナ、米中対立、陸上イージス中止の関係) (新型コロナの脅威を誇張する戦略)
コロナ危機が歪曲されたものであるとわかっても、歪曲をやめさせて世界を元に戻すことは難しい。大英帝国以来、世界を支配してきた米英の覇権勢力(諜報界)による戦略だからだ。コロナ危機の発展形として今後、米国などで暴動や内戦がひどくなり、いずれ草の根から米国の覇権勢力を倒そうとする動きが激しくなれば、コロナ危機の歪曲性が暴露されていくかもしれない。米国ではマスク着用の義務化が進んでいる。これは、コロナ危機が誇張されていると疑っている何割かの米国民たちを苛立たせ、コロナをめぐるインチキを暴露しようとする動き(主に共和党系)を扇動する。 (Soon, You Will Need To Wear A Mask To Enter Virtually Every Major Retail Store In America) (Finally, The Donald dons a mask)
だが、コロナの歪曲を暴露しようとする米国での動きは始まったばかりだ。世論調査によると、民主党支持者の多くはコロナ危機を軽信している。コロナ危機の歪曲が事実であるかのように喧伝したがるマスコミの多くが民主党寄りだからだ。共和党支持者と民主党支持者の対立が激しくなり、米国が南北戦争の再来のような内戦になっていきそうだ。コロナを軽信するかどうかは両派の対立点の一つになっており、コロナ危機がインチキであると全員が認識する結果にはなっていかない。最終的に、いずれコロナ危機のインチキさが暴露されるとしても、そのころには米国の覇権は失墜してもとに戻れない。歪曲は暴露されても、従来の米国中心の世界体制や、消費過多だった以前の経済の繁栄が再生することはない。コロナ危機が誘導していく覇権の転換は不可逆的だ。 (Coronavirus expert says Americans will be wearing masks for ‘several years’)