入來篤史「道具を使うサル」

入來篤史氏の「道具を使うサル」を再読。2004年の出版。医学書院という出版社の神経心理学シリーズの一冊。
冒頭でホモ・ファーベル homo faber(作る人)というラテン語の由来について説明されていて興味深い。弊ブログの名前の由来がこれでよくわかった(+_+;)\パコッ!

ニホンザルが身体を道具化したり道具を身体化する現象を実験的に立証。国際学会でこれを発表したところ、ある高名な学者がこう叫んだ。
 You are crazy, but smart!! (奇抜だが素晴らしい!!)

サルに限らずおそらくすべての動物は、道具の身体化能力を持っているだろう。ダーウィンが観察しているように、ミミズだって葉っぱを「道具」にして穴ふさぎをしているではないか。エジプトヒゲワシやラッコは石を道具にする達人だ。

しかし問題は、動物たちは恒常的に道具を使用したり、保管したり、そして新たに製作しようとしたりはしないことだ。その意欲がないのだ。意欲の問題が重要。道具に対するフェティシズム。この辺が決定的な違いだ。

では、その道具使用や道具製作に対する意欲や欲求、技術的活動に対する欲動はいったいどこから来るのか?これこそが技術の起源をめぐる根本問題だと思う。しかし、入來先生は、この問題についてはほとんど触れられていない。今後のお楽しみということか。

伊勢史郎氏はこの問題を脳髄における「A10神経の無髄化」の問題として考えているようだ。次は伊勢史郎を読んでみたくなった。