一日100キロの行程は、ちょっとそこまで、といった感じ。一日で300キロや400キロの距離を自転車で走る距離感覚の壊れた人たちの話。
「楽しいということ以外に自転車で走る理由が必要だろうか。」
結果的にメタボ対策やスタイルが良くなるといったことは、自転車の本質ではないという。(もちろん自転車のすぐれたところであるが。)
米津氏は「僕は楽しいから自転車に乗る。」と断言する。著者は、300キロ程度の距離ならばまず自転車で行くことを考えるらしい。
ロードレーサーは、人力のみで最も速く最も遠く移動させる地上でもっともすぐれた究極の機械である。この究極の機械を駆って一日300キロを走る。ブルベというらしい。
この本は、まったく想像すらしなかった自転車が繰り広げる新しい世界を教えてくれる。普通のサラリーマンがブルベの世界へグイグイとのみこまれていくプロセスが語られ、すぐれた自伝的な自転車ドキュメンタリー文学でもある。
この本を読むと、自転車に乗って遠くへ遠くへと行きたくなる本能がかき立てられる。
これは現世人類の本能に違いない。およそ10万年前にアフリカから地球上のあらゆるところに二足歩行で散っていった我々の祖先。
遠方へのあこがれ。
これが現世人類の本質であるとすると、人力のみに依存する究極の道具である自転車を得た現代人が、自転車で遠くへ遠くへと行きたいと思うのは当然なのだ。
そんなことを考えさせてくれたとてもいい本。
- 作者: 米津一成
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/06
- メディア: 単行本
- 購入: 13人 クリック: 79回
- この商品を含むブログ (39件) を見る