イカの哲学(中沢新一・波多野一郎)

イカの哲学 (集英社新書 0430)

イカの哲学 (集英社新書 0430)

 中沢新一の新刊「イカの哲学」のレクチャーというかトーク。ひさしぶり(10年ぶりくらいか)に拝見いたしました。今回のこの本は中沢新一さんにとってコーナーストーンのひとつになるのではないか、とおっしゃっておられました。
 「イカの哲学」は綾部出身のグンゼ創業者の孫にあたる波多野一郎さんという方が1965年に少数のみ出版された本。
 中沢新一は学生時代にこの本を一読し衝撃を受け、その後も長い間潜在意識の中でじっくりあたためてきた。
 波多野一郎。この人は早稲田大学在学中、先の大戦で神風特攻隊入隊し、出撃する前夜に思索したこと(出撃直前に終戦となり生き残る)、その後シベリヤに抑留された体験、帰国してからアメリカに留学し、パースの哲学を学んだこと、留学時代にモントレーの漁港でアルバイト中に遭遇したイカとの劇的な遭遇に基づいてひとつの根源的な平和学を構想した。
 この平和論は単なるヒューマニズムの見地からのそれではない。
 ヒューマニズムといったヤワな思想によっては、現代の戦争に充分対抗することはできない。特に、核戦争の標的となった日本においては。
 日本は人類史上はじめて核爆弾という「超戦争」を体験した唯一の民族である。
 日本はもはやヒューマニズムの思想によって解決できるような「普通の国」には、なりようがないのである。
 戦争を超えた戦争である超戦争に向かい合う原理、これを中沢氏は「超平和」の原理と名付ける。
 イカの哲学から超平和の原理を構想する。