[2605]鬱陶(うっとう)しい梅雨前線 と中国の三峡ダムのこと。
投稿者:副島隆彦
投稿日:2020-07-14 08:33:55副島隆彦です。今日は、2020年7月14日(火)です。
今日のぼやき に、西森マリー氏 著の新刊「ディープ・ステイトの真実」の宣伝を載せています。
日本全国、もう3週間も、梅雨前線による断続的な風雨が続いている。例年の梅雨(ばいう)よりも風が強い。土砂崩れが九州の川の氾濫(はんらん)で起きた。もうすぐ雨期は終わるだろう。そうすると、次はまた台風だ。
私が、小さい頃から、従来型の台風はフィリピンの東側の海で発生して、それが、台湾の脇を通って、沖縄(琉球諸島)の脇を通った。出来たての台風の近くで生きている人たちは、そのもの凄さをよく知っている。台風は、このあと九州に接近し、本州の海岸線に沿って、沿岸部を蹂躙(じゅうりん)するように進む。そのあと東京を避けて、房総半島から東の太平洋に抜けて、やがて消滅した。熱帯性の低気圧に変わって暴風雨を無くす。なぜなら東京の広大なヒート・アイランドにまともにぶつかると台風の方が負けてしまうので、台風はそれを避ける(これは、私の主観、勝手な考えである)。
台風は、昔から関東地方に接近する頃は、かなり弱体化している。それでも暴風雨はある。時には、東北地方を北上して、北海道にまで行き着く台風もあるが、それらは本当にヒョロヒョロになって消滅寸前だ。台風とは、私の小さい頃から、そういうものだった。
ところが、2年前から、台風の出来方がどうも変わった。これまでの従来型の沖縄まわりの台風(一部は、中国大陸に向かった)ではなくて。どうやら、小笠原諸島(父島、母島がある)の東側で、発生するようになった。そして、気づいたら、たった3日で、真北に向かって北上して、東京を直撃するようになった。これが近年の台風だ。
今度の奇妙な激しい風雨も、どうもこの新型台風と似ている。東京に向かって、たった3日で、真北に一直線に北上して突撃してくる台風は、私にとって脅威だ。その途中に伊豆半島があって私はそこで暮らしているからだ。家の真南(まみなみ)から暴風雨と、さらには突風が吹いてくる。
地球の温暖化(グローバル・ウオーミング global warming )で、海水面が22度になると、従来よりも2度上がって、そこで大気の渦巻き現象が起こる。それが台風に成長する、というのである。 さあ、今年は7月後半から、どのような、台風が生まれるか。私は、じっと観察している。
以下に乗せるのは、「中国の三峡(さんきょう)ダムは、決壊しない」という記事である。書いている人は、近藤大介(こんどうだいすけ)氏である。近藤氏とは、私は、面識があって、もしかしたら、近い将来、対談本を出せるかも、という間柄だ。
近藤氏は、優れた、いや、ずば抜けた今の日本を代表する中国研究者(チャイナ・ウオッチャー)である。彼の考えには、中国に対する偏(かたより、バイアス、偏向 )がない。
彼は、講談社の幹部社員で、中国留学から始まり、中国滞在での研究も長く、今は、週間現代の特別編集人という肩書きだ。彼は、私の判断では、中国政府の日本研究、分析の最高人材と付き合いが深く、かつ、同時に、日本外務省からの信頼が厚く、外務省が、「これから20年後の中国の指導部となる若い外交官たち」を日本に招待して共同研究(研修)するときのガイド、指導員も務める。
時には、日本政府(私の嫌いな安倍政権)にも呼ばれて、中国の最先端の知識、情報を教えているようだ。だから、近藤大介氏は、日本の中国分析の最先端の優れた人材だ。本もたくさん書いている。私は、彼の文を、私の本の中にも引用して載せた。
この近藤大介 が、「三峡ダムは決壊しない」という記事を書いているのが、私の目に留まった。だから、以下に載せる。この文の中の、「中国は、治水の名人」「・・・水害の歴史を、中国4千年の中で、味わい、克服してきた」と書いている。
特に、私が感動したのは、「・・中国最古の王朝は夏(か。紀元前2070年頃~紀元前1600年頃)だが、司馬遷(しばせん)の『史記・夏本紀(しき・かほんぎ)』によれば、初代の王である大禹(Dayu だいう)は、治水の名人だということで王に推挙された」の記述だ。
そして、「・・・かくして1994年の年末、湖北省宜昌市で、全長3335m、高さ185m、発電量1000億kWhという世界一の巨大ダムの建設が始まったのである。完成までに12年を要し(2006年に完成)、その間に江沢民政権から胡錦濤政権にバトンタッチした」と、基礎事実を教えてくれている。 優れた簡潔な文だ。読んでください。 副島隆彦記
(転載貼り付け始め)
◯ 「 洪水被害が広がる中国、三峡ダムは果たして持つのか 」
2020年7/9(木) JPress 近藤大介
(副島隆彦注記。私の判断で、冒頭部分が冗長なので、後半に回した )
私は、台湾メディアも中国メディアもウォッチしているが、「三峡ダム決壊」はないと思う。
もし万一、そんな悲劇が起これば、それは長江中下流の数億人に影響を及ぼすばかりでなく、習近平政権自体が崩壊の危機に見舞われるだろう。実はこれまでにも、中国国内で「三峡ダム決壊論」は議論されてきた。だがそれは主に、軍事的側面からの考察だった。「米中戦争になったら、アメリカは真っ先に三峡ダムを狙い撃ちする」というのだ。
今回のような「豪雨による決壊論」が取り沙汰されるのは、初めてのことだ。それだけ、2006年に完成以来、三峡ダムがこの14年で最大の危機に見舞われているということは言える。
三峡ダム
「水害大国」中国
そもそも中国は、歴史的に見ても、世界最大の水害大国である。中華民族が農耕と牧畜を始めて定住して以降、水害問題は北方異民族の侵入とともに、常に国家の最重要事だった。確認されている中国最古の王朝は夏(紀元前2070年頃~紀元前1600年頃)だが、司馬遷の『史記・夏本紀』によれば、初代の王である大禹(Dayu)は、治水の名人だということで王に推挙された。その伝統は、いまの中国共産党政権にも引き継がれている。中国には「水利部」という治水専門の中央官庁が存在する。先代の胡錦濤(Hu Jintao)前主席は、清華大学水利工程学部河川発電学科を卒業したエンジニアで、「中国で最も偉い水利の専門家になるのが夢だった」と述べている。胡錦濤時代には、毎年最初に出される重要指令「中央一号文件」に、水利問題を扱ったりしていた。
そんな胡錦濤政権の時代に、三峡ダムが完成したわけだが、三峡ダムの建設は、胡錦濤前主席の本意ではなかった。先代の江沢民(Jiang Zemin)政権に押し付けられて引き継いだのである。
江沢民元主席は、自分の拠点である上海の電力不足を憂慮したのと、「中国建国以来の大事業」に心惹かれた。当時の李鵬(Li Peng)元首相は、「水利利権の頭目」と言われ、巨大ダム建設が莫大な利権を生む旨みを知っていた。かくして1994年の年末、湖北省宜昌市で、全長3335m、高さ185m、発電量1000億kWhという世界一の巨大ダムの建設が始まったのである。完成までに12年を要し、その間に江沢民政権から胡錦濤政権にバトンタッチした。
そんないわくつきの三峡ダムは、完成当時から国際環境団体などに、「人類最大の環境破壊」と揶揄されてきた。それが今回の「半世紀に一度の水害」で、大きな試練に立たされることになった。6月2日から、長江(副島隆彦注記。中国人は、揚子江とは言わない。長江「ちょうこう」 という)流域を含む中国南部に豪雨が襲い、1カ月以上経った現在も続いている。
長江水利委員会は7月2日、「長江2020年第1号洪水」を発表した。4日の12時には、「長江水害旱魃災害防御クラス」を、「4級」から「3級」に引き上げた。三峡ダムは、この地域最大の観光スポットとなっていたが、5日からダム付近では、封鎖措置が取られている。
三峡ダムがある湖北省には、680カ所(大型2カ所、中型12カ所、小型666カ所)のダムがあるが、そのすべてで警戒態勢を取っている。周知のように、武漢を省都とする湖北省は、今年の年初から深刻な新型コロナウイルスの被害に見舞われたというのに、ようやくそれが去ったと思いきや、今度は豪雨と洪水である。
被災者は2000万人に及ぶ勢い
豪雨の被害は、湖北省だけではない。現在、日本では球磨川や筑後川などで洪水が起こっているが、中国応急管理部によれば、7月3日時点で、全国304もの河川で「警戒水域突破」が伝えられているのだ。被害は全国26省・市に及び、1938万人が被災し、416億元(約6400億円)の損失を出しているという。例えば、「浙江省の三峡ダム」とも言われる新安江ダムでは7月7日、9つある放水門を初めてすべて開け放った。下流で洪水が発生するのは必至で、すでに2万人以上が緊急避難を余儀なくされた。
安徽(あんき)省でも水陽江など長江の分流が次々に警戒水域を超え、「高考」(ガオカオ=7月7日、8日の全国統一大学入試試験)が延期された。「高考」に関しては、洪水の濁音によって英語の聞き取り試験ができないという状況も、全国各地で起こっている。
江西省でも琵琶湖の4.7倍も面積がある鄱陽湖が、平均水位を6mも上回る事態となり、周囲に甚大な被害を及ぼす恐れが出てきた。同省の「陶器の都」景徳鎮では、すでに2万人以上が避難している。
ちなみに中国応急管理部の発表によれば、今年上半期に自然災害の被害に遭った中国人は4960.9万人で、緊急避難を余儀なくされた人も91.3万人に上った。死者は271人である。6170.2キロヘクタールの農作物が被害を受け、812億元(約1兆2500億円)の被害を出した。
中国では俗に、「庚子大禍(こうごたいか)」と言う。世界が新しく始まる「庚子」(かのえね)は、その前に古い物が一掃されるため大禍になるということだ。1840年にはアヘン戦争が起こり、欧米列強の半植民地時代が始まった。1900年には義和団の乱が起こり、清朝滅亡の契機となった。1960年は三年飢饉で、5000万人とも言われる餓死者を出した。
そして、2020年――。冬には新型コロナウイルスで中国全土が震撼し、8万5366人の感染者と4648人の死者を出した(7月8日現在)。そしていままた夏の大水害である。ちなみに14億の民を率いる習近平主席は、7月7日まで、もう一週間以上も姿を見せていない。 近藤 大介
(副島隆彦注記。ここからが記事の元の冒頭の部分 )
熊本県で54人が死亡したのを始め、日本全国に豪雨被害が広がっている。被災者の方々にはお悔やみ申し上げたいが、私が日々ウォッチしている中国の豪雨被害は、日本の比ではない規模で進んでいる。その中心にあるのが、中国の「母なる大河」長江(揚子江)の氾濫だ。
三峡ダム、完成後最大の危機
「三峡ダムが決壊する!」 主に台湾メディアが、このところ「三峡ダム決壊説」を報じていて、それが一部の日本メディアにも伝播している。
台湾メディアでは、「三面挟攻」(サンミエンジアコン)という表現を使っている。空から降ってくる豪雨、長江の上流から流れてくる激流、それに三峡ダムの放水による「人工洪水」という「三面からの挟撃」に遭って、武漢や上海など、長江の中下流地域が甚大な被害に見舞われるというのだ。そして「三面挟攻」の結果、「そもそも50年しかもたない三峡ダムが決壊するリスクができた」と報じている。逆に中国メディアは、水利の専門家たちを登場させて、「三峡ダム決壊説」を強く否定している。例えば、「三峡ダムの『豆腐渣工程』(トウフジャーコンチャン=おから工事)によって水が漏れだしやすい」という指摘に対しては、「三峡ダムは通常のダム工事以上に、セメントが太陽光で高温度にならないよう冷却しながら工事したため強固だ」と反論。
「ダムからの放水によって中下流で洪水を起こす」という懸念には、「放水時には水が上向するよう仕向けており、下向して放水が河川と合流する地点を深く掘っていて、そこでいったん水流が止まるので、緩流になる」と説明している。
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝