『ロシア語文法 入門から上級まで』(匹田剛著)

NHK「まいにちロシア語」の前回シリーズの講師だった匹田剛先生(東京外語大学教授)の授業は、痒いところに手が届くような講義で気に入っていました。その匹田先生がロシア語文法の本を出されたということで、さっそく入手。

380頁に及ぶ大著です。

ロシア語ビギナーから上級者まで遍く活用できそうです。しかも痒いところに手がとどくような解説。

ロシア語愛好家にとって必携。座右の書になりそうです。



アマゾンのカスタマーレビューでも好評のようですね。

●上級の入り口までを網羅するロシア語文法書が出現!(入門書ではない)
5つ星のうち 5.0上級の入り口までを網羅するロシア語文法書が出現!(入門書ではない)
投稿者 アダージョ 投稿日 2016/2/21

 ロシア語愛好者である。学習歴は長くなりつつあるが、文法上の疑問や
記憶が不確かなところを調べようとすると、どうしても複数の文法書や変化表
を参照することになりずっと不便を感じてきた。

 また、新ロシア語文典(吾妻書房=廃業)も手に入らないし、
ロシア語テーブル便覧(絶版)も手に入らない、ということで困っていた。
(図書館でコピーはしたが。)
まあ、頼りになるのが大学書林のロシヤ語4週間だが、これとて古さは
否定できない。そこで出現したのが本書である。

 本書は、よほど高度な程度を求めない限りほぼ、文法事項は網羅している。
本書の長所は次の点にあると思う。

1.極めて高い網羅性と教育性ある叙述の順序  

多くの文法書の欠陥なのであが、ある種の変化について解説し、そのあと、
その類似事項については、わずかな注意を与えて[この解説に準じる」
と逃げていることが多いが、本書はそういう事をしていない。
換言すれば、文法表が丁寧。

また、叙述の順序にも非常にもすぐれた配慮がなされている。
たとえば、冒頭の第0章である。ここで、軟子音・硬子音の対応
の若干の修正がなされ、さらに、名詞の変化が実は数が少なく
整理できることが説明されているなどである。これは学習者に
とって非常に助かることだ。

さらに例をあげれば、複数生格については、別にまとめ
性で分けるのでなく、語尾で分類しすっきりとさせている。
これも、普通の入門書では見られない。これも非常に助かる。

2.参照の丁寧さ    

関連文法項目について、実に丁寧に参照ページを掲載している。
丹念にたどれば、あいまいな記憶もしっかりするし、全体的
把握に役立つ。

3.各文法項目の深さ  

各文法項目の掘り下げが徹底している。例えば、アクセント
移動の記述は表をしっかりと見やすく掲載し、7ページの説明になっている。
手抜かりなしである。これも脱帽ものだ。
動詞の変化の記述も実にしっかりしているが、第15章の数量詞・数詞
は、記述は41ページに及び、分数・少数や1.5の表現、に至るまで実に
詳細である。これまた脱帽。取り上げれば切りがない!!!

以上のようなわけで、初級文法を一度終了した者が、基礎を固めるのに最高の書と思う。
間違いなく本書をマスターすれば本当の意味で「中級」を自称できると思う。
私も頑張るつもりだ。とにかくまずは通読だ。本書は残念ながら他のレビューアー
の指摘にあるとおり、上級の入口までである。
          
一つ、ドイツ語の碩学関口存男「趣味のドイツ語」から見つけた言葉をここに紹介する。
私の自戒でもある。

『中級とは、少しはやったがまだなんにもわかっていない程度のことである。』

本書でこれを抜け出そう!(匹田先生こんな素晴らしい本をありがとう。)

●文句なく素晴らしい文法書
投稿者 メジロ 投稿日 2016/3/20
独学者にとっては本が先生であるが、その先生は質問に答えてくれない。そこで、外国語の場合なら、該当言語を話す外国人を探して質問することになる。現在ではインターネットを通じて外国とコミュニケーションをとることが容易である。しかし、例えば日本人に日本語の質問をしても、その相手が日本語を専門としていない限り、期待したこと答えが返ってくることはほとんどないだろう。質問の意図が理解されない場合すらある。外国人も同様である。
語形変化の多いロシア語については、初歩の段階で、疑問に思うことがたくさん出てくる。英独仏語を知っていても、分からない。それらは他の文法書のレビューに書いておいた。基本的に、日本人が躓くのはヨーロッパ語の特徴である「性と数」である。
「数」と動詞活用についてドイツ語の例を挙げると、「私がそれだ」「それは私だ」と言いたい場合、Es ist ich / Ich bin es の二つの可能性が考えられるが、こんな単純な文なのに、どちらが正しいのか、また両方正しいのか、全然わからない。実は正しいのは後者で、前者の言い方はない。英語はIt's me が正しく、I'm it でないからドイツ語と反対である。ロシア語にはこの手が多かった。Papaという女性型の男性名詞はどのように語形変化し、それを修飾する形容詞はどうなるのか、男性形しかない職業名を女性がしていたら、かかる形容詞や代名詞はどうなるのか、2人称単数代名詞の敬称に対する動詞や形容詞は単数形なのか複数形なのか,等々。
入手できる古いものから新しいものまで、いろいろと調べても分からなかったことが、最後に出会ったこの文法書には明示されていた。ありがたいこと限りがない。
色刷り、見やすい表あり、カバーもおしゃれである。値段相応の価値は充分にある。

●やや上レベルの文法書としては優れています
投稿者通りすがり2016年3月8日
0から始める人向けの文法ではありません。「上級まで」というタイトルだが、扱われているのは、ロシア語専攻の大学生なら2−3年次初めまでに終えるべき標準的な内容。佐藤純一先生の「基本ロシア語文法」が絶版になった後、後継書として推薦できる文法書だと思います。数詞に関する記述が詳しいのは、これまでの文法書にはない特色です。一般向けには、これで十分です。
他方、「テーブル式ロシア語便覧」以上のレベルを求めている方には、かなり物足りなく感じられるでしょう。歴史的経緯等についての記述は、ほとんどありません。体の用法についても、一般的な事に触れるにとどめてあります。現代ロシア語で頻出する例外的用法についても深く説明されているわけではないです。動詞の格支配の問題についても触れてほしかった。


【参考】
匹田剛先生の以下の記事(東京外語大での講義録)が勉強になります。

●ロシア語と日本語の出会い
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ilr/contents/koukai_kouza_2014/20141104hikita.pdf


NHK出版 これならわかる ロシア語文法 入門から上級まで

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