アベノリスク(植草一秀)


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植草一秀さんのブログ『知られざる真実』は、リチャード・コシミズブログとともに毎日欠かさずチェックしています。とても勉強になります。
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NHKマスコミは必死で安倍政権の粉飾報道を繰り返していますが、アベノミクスのメッキはすでに剥がれてボロボロに腐食した地金が出ています。

昨夜のNHKニュースはひどかった。新メニューを始めたカラオケの客が増加しているのはアベノミクスのおかげとか・・・。思わず噴き出した。よほどネタがないのか、
レーガン大統領のレーガノミクスにあやかって電通あたりがシナリオを書いたのであろうアベノミクスでしたが、実体はアベノリスクであり詐欺ノミクスだった。


実体経済の指標となる製造業の設備投資が、自動車部品関連を除いて軒並み落ち込んでいる。特に減少が激しいのは鉄鋼、機械、情報通信関係。お先真っ暗じゃないか。


鉄鋼:24.4%減
生産用機械器具製造業:29.2%減
業務用機械器具:20.8%減
電気機器:33.9%減
情報通信機器:19.6%減



以下、野口悠紀雄さんの記事を部分転載。


●なぜ円安なのに、設備投資は増加しないのか
東洋経済オンライン 2013/6/24 08:00 野口 悠紀雄
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130624-00014374-toyo-nb&p=1

 なぜ円安なのに、設備投資は増加しないのか

 6月3日に公表された2013年1〜3月期の法人企業統計の数字は、設備投資が増えていないことをはっきりと示している。

 ソフトウエアを除く設備投資を見ると、全産業が対前年同期比5.2%減、製造業が同10.3%減、非製造業が同2.4%減だ。

 前期比では増えているが、これは季節変動と考えられる。図に見るように、毎年1〜3月期には増えている。製造業について1〜3月期だけを比べれば、円高期であった11年や12年の水準よりもかなり低い水準に落ち込んでいることが注目される。

 アベノミクスでは、期待の重要性が強調された。確かに株価は、円安による輸出関連企業の利益増加を先取りして上昇した。

 しかし、実体経済指標の中で、期待がもっとも重要な影響を及ぼすはずの設備投資には、影響が及んでいない。つまり、安倍内閣の経済政策は実体経済に影響を与えていないのだ。これは、すでに公表されていた1〜3月期のGDP統計にも表れていた傾向だが、それが企業レベルの計数で裏付けられた。

 円安で利益が顕著に増加している自動車・同部品では、1〜3月期の設備投資はわずかに増えている(対前年同期比4.7%増)。しかし、他の業種では、減少になっている場合が多い。とくに減少が著しいのは、鉄鋼(同24.4%減)、生産用機械器具製造業(同29.2%減)、業務用機械器具(同20.8%減)、電気機器(同33.9%減)、情報通信機器(同19.6%減)などだ。

 なお、非製造業については、時系列的に顕著な傾向は見られない。

■ 将来の利益増は期待薄、だから設備投資増えず

 設備投資は今後増えるだろうか? それを考えるには、設備投資の決定基準を考える必要がある。

 原理的に言えば、投資が行われるのは、それによって企業価値が増大する場合だ。簡単化のため、現時点で投資資金を調達して収益が将来時点で発生するとしよう。企業価値が増大するには、投資収益の現在値が資金コストを上回ることが必要だ。まず収益率について述べよう。

 将来の利益は、将来の売り上げと原価で決まる。法人企業統計で見る利益の動向は、産業によって大きく異なる。自動車・同部品は、13年1〜3月期に利益が増加した(対前年比70.5%増)。これは、円安の影響だ。自動車産業の設備投資が増えているのは、その影響だろう。

 ただし、投資決定に影響するのは利益の水準であって、伸び率ではないことに注意が必要だ。自動車産業の場合、円安が進むと輸出売り上げが増加する反面、コストはあまり変わらない。このため、利益の伸び率は高くなる。しかし、輸出の代替手段として海外生産がある。賃金率などを考慮すれば、国内生産能力を増強して輸出で対応するより、海外生産を志向するほうが合理的だ。自動車産業はすでにその方向を選んでいる。

 しかも、円安は、投機で進んだ可能性が強い。だから、今後継続するかどうか分からない。07年頃までの円安期に国内生産への回帰が生じ、その時建設した巨大工場が今、収益を圧迫していることを考えれば、国内回帰にはリスクが伴う。

 円安で1〜3月期の営業利益が増えた産業としては、電気機器(34.6%増)、情報通信機器(67.7%増)などもある。しかし、これらの産業では、前述のように設備投資は顕著な減少を示している。これは、円安で一時的に利益が増えても生産の国内回帰は生じないことの典型的なケースだ。

 製造業の中でも、原材料を輸入に頼る業種では、利益の減少が見られる。典型的なのは、食料品製造(13年1〜3月期の営業利益の対前年同期比が20.2%減)、繊維(同65.0%減)、パルプ・紙(24.1%減)などだ。こうしたデータを勘案すると、これらの業種では、将来利益が増加する見込みは薄い。

 結局のところ、製造業の設備投資は、長期的な傾向として減少するだろう。今後日本の設備投資が増えるとすればそれは非製造業であり、そのためには、円安は阻害要因になることに注意が必要だ。

 安倍晋三首相は年間設備投資を70兆円にするとしている。しかし、その実現は難しい。もし増加させようとするなら、非製造業を中心に考えるべきだ。ただし、非製造業は内需型がほとんどで、円安はコストを引き上げる。だから、仮に非製造業の設備投資増を目指すのであれば、円安政策からの脱却が必要だ。