極細モヘア糸の開発(山形県寒河江の佐藤繊維)

NHKの「サキどり」で紹介されていた極細モヘア糸の開発秘話に感動した。

オバマ夫人がこのモヘヤ糸で編んだカーディガンを着用したことで一躍有名になったらしい。従来のモヘアには無い繊細で柔らかい肌触りの独特の風合い。

この「23ミクロンの極細モヘア糸」を開発した山形県寒河江(さがえ)市の佐藤繊維(株)と社長の佐藤正樹さんは繊維技術史に名を残すだろう。

繊維技術史上不可能と言われていたことを実現した。なぜこんなことが可能になったのか?

ものづくり精神と情熱にあふれた4代目社長・佐藤正樹さんは「下請けからの脱却」を図るために世界中の牧場を飛び回ってすぐれたモヘアを探した。自分の目と手を使って動物のように探し回るところがすごい。

そして南アフリカの牧場でアンゴラヤギに出会う。独特の触感とカシミヤにはない光沢を持っていた。

社長が自ら現場に行って手と目で確認する、これが重要だったのだろう。

アンゴラヤギの毛を23ミクロンの極細モヘア糸にするのがまた一苦労。

従来のモヘアは、毛1グラムで27メートル。

佐藤の極細モヘアは、毛1グラムで52メートル。

従来の約2倍に伸ばしていく技術は、従来のコンピュータ制御の紡糸装置では無理だった、というところがおもしろい。50年前のアナログの機械で初めてこの紡糸が可能になったというのだ。職人の手の感覚と連動することができる機械が必要だったのだ。

さらに染色も最新の染色装置ではうまくいかない。近所の染色工場の古い装置で初めて満足のいく染色が可能になった。

「温故知新」によるものづくりのブレークスルーの事例としてたいへん興味深い。困ったときは昔に戻る。最新の装置や機械が良いとは限らないってこと。

佐藤の極細モヘアは、高級ブランド企業、ニナリッチやシャネルなどに提供されているとともに世界中の「こだわり市場」から注目されている。

さらに興味深いのは、優秀な若者達がこの山形県の会社に引き寄せられているということ。地方の本物ものづくり企業に幸あれ!


●第3回ものづくり日本大賞 佐藤繊維(株)
http://www.youtube.com/watch?v=78-jH2kXLCY


(おまけ)
エンディングで流れたCHICのGOOD TIMES
●CHIC - GOOD TIMES (LIVE) - 1996
http://www.youtube.com/watch?v=mMqRxDZpWIg&feature=related