中村哲対談本「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」

ジュンク堂で平積みされていた中村哲医師の新刊を見つける。作家の澤地久江さんとの対談。

最近、中村医師の陣頭指揮で完成したアフガニスタンの用水路に注目している。自ら先頭に立って資金を集め、設計をし、掘削用重機を操作し、アフガンの人々をまとめる。北九州は筑後川遠賀川の堤防技術の前近代的な伝統的工法も取り入れている。まさに大規模な適正技術。先進国の高度な技術や装置は使っていないので、メンテナンスは地元の人々で十分可能。これがきわめて重要だ。江戸時代に造られた石組みの堰の構造を自ら研究してアフガニスタンの用水路にこれを導入したのだ。すごい人だ。
ご本人の生い立ちやご家族の話があり興味深い。北九州の若松出身だったのですね。そして、戦中戦後に活躍された作家・火野葦平が叔父さんだったとは。

アフガニスタンタリバン=テロリスト、といったマスコミや米軍の一方的な報道とは全く異なる見解が吐露されていておもしろい。旧ソ連のアフガン侵攻のころ、避難民が一夜にして何百人も凍死した現場も目撃している。用水路の建設現場で米軍の空襲も受けている。

最後の方で次男が10歳で亡くなる話に触れられている。脳腫瘍だったらしい。10歳といえば小学校4年生くらいか。かわいい盛りではないか。アフガンでの事業を選ぶか息子さんに付き添うことを選ぶか、究極の選択を迫られた経緯が淡々と語られているが、もう胸が詰まって読み進めることができなかった。