立ち寄った書店リブロで平積みされていた。帰りの電車で読みはじめる。
この本はおもしろい。
現役の科学者からの21世紀型文明への心強い提言。しかも極めて現実的でワクワクするような提言。
著者の清水浩さんは、電気自動車の研究と技術開発を30年間進めてきた慶応大学の環境情報学部教授。1947年宮城県生まれ。
現役の科学技術研究者からの近未来地図を見せられ魅せられる。
20世紀の「ひとり勝ち」文明から、脱「ひとり勝ち」文明への軟着陸の具体的方法。そしてこれは実現可能である。
その鍵となる技術が、太陽電池と電気自動車。これらの技術はもともと日本の技術力が世界を先導していた分野だった。したがって、これらの技術を日本主導で進める。これは充分実現可能。もちろん勝ち負けとは違う次元で。
太陽光発電はエネルギー問題解決の鍵となる。すでに地球上のすべての地域に充分なエネルギーを供給できるだけの技術はある。地球上の一部の人間に独占されていたエネルギーがすべての人類に過不足無く行き渡る。貧困がなくなる。エネルギーの不足や独占が貧困と差別の要因だ。
夢のような話ですが、実はすでに充分に実現可能な技術レベルに人類は到達している。
ところで、電気自動車や太陽光発電の基幹技術であるリチウムイオン電池が日本人による発明であることを知っている人はどれくらいいるだろうか。リチウムイオン電池を発明したのは旭化成の吉野彰さん。
さらに、電気自動車の基本部品であるモーター用磁石として使われるネオジウムー鉄磁石を発明したのは佐川眞人さん(住友特殊金属)。
また、インバーター(モーターの回転数を制御するコントローラー)に使うトランジスターの基本発明はアメリカ人によるものですが、これを改良実用化したのは日本の技術。
これらの技術はいずれも電気自動車の三種の神器と呼ばれている基幹技術。
これだけの技術ポテンシャルがありながらこれを活用しないのは日本の不誠実。後世の歴史家はそう言うだろう。
清水浩先生は、いますぐに動かなければ、この千載一遇のチャンスは逃げ去り戻ってこない、という。
日本は、いま、人類が遭遇した2回目の産業革命である「脱「ひとり勝ち」文明」へのチャンスを、つかむか、逃すか、の岐路に立っている。
- 作者: 清水浩
- 出版社/メーカー: ミシマ社
- 発売日: 2009/06/05
- メディア: 単行本
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