- 作者: ヴィトルト・リプチンスキ,春日井晶子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/07/11
- メディア: 単行本
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ネジとネジ回しはありふれた工具だが、人類に最も影響を与えた隠れた大発明である。これなくして科学が精密なレベルに達することも、キャプテン・クックの大航海もなかったのだ。ネジの起源とこれを標準化し改良した天才技術者たちの姿を描き出す。技術史ミステリー。ネジの父はもちろんアルキメデス。
ところでこの本はヨーロッパにおけるネジの歴史をテーマとしているが、日本におけるネジの歴史はどうだったか。実はネジは極めて特殊な部品であって、日本においても中国においても発明された形跡はない。日本にネジが初めて伝わったのは1543年に種子島に漂着したポルトガル人が持っていた鉄砲によってであるとされている。
リプチンスキは、ネジは特定の天才による詩的で豊かな創造力によって生み出された発明であって、通常の工具のように必要性に従って特定の問題を解決するために発達したものではないとする。つまり、モーツァルトやセザンヌの芸術的創作のようなものだ。この見方はおもしろい。これは日本や中国にネジが生まれなかったことと符合する。
洋服のボタンもあるとき北ヨーロッパに突然あらわれたらしい。
発明には、どの民族・文化にも普遍的に生まれるものと、特定の天才による詩的・美的創造力によって生み出される特殊なものがある、ということ。
オーストラリア大陸に弓矢が生まれなかったことも同じような理由だろうか。