小保方・万能細胞(つづき)

MOT(技術経営学)がご専門の「新ベンチャー革命」さんのこの記事が興味深い。

小保方春子さんの世紀の大発明がハーバードのチャールズ・バカンティ教授に取られちゃったのは、日本に科学技術・イノベーションに対する「目利き」がいなかったから、という論点。なるほど。

チャールズ・バカンティ教授は一瞬で彼女の才能を見抜いたようです。


http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/33201978.html
●30歳の日本人女性が万能細胞研究で歴史的大発見の快挙:先端研究開発における目利きの重要性にも気付け!

1.暗闇を照らす一条の光明:日本の若き女性研究者が世紀の大発見か

 日本が悪い方向に向かっていることに慢性的な不快さが消えない昨今ですが、2014年1月末、明るいビッグニュースが飛び込んできました、言うまでもなく、画期的なSTAP細胞(万能細胞)論文が念願かなってネイチャーに掲載されたシンデレラ研究者・小保方博士の快挙です(注1)。このニュースに接して、筆者は2002年、一夜にしてシンデレラボーイ研究者になったノーベル賞受賞の田中耕一氏のニュースを思い出しました(注2)。

 このシンデレラ女性はマスコミが泣いて喜ぶネタが満載で、テレビ各局とも競って報道しています。彼女のこの研究は確かにノーベル賞級だと思いますが、研究を始めて10年未満で、世紀の大発見するとは奇跡としか言いようがありません。

 彼女は早稲田大学のASMeWという先端研究プロジェクト(注3)のもたらした大成果のひとつと言って間違いありません。

ところで筆者は2003年に早稲田理工で開催されたナノ理工学シンポジウムでナノテクとMOT(技術経営)に関して、医師の長男と二人で講演した記憶がありますが、その当時、小保方さんはまだ早稲田理工の二年生だったわけです。

 あれからわずか10年で、彼女は世界の歴史に残る大成果を上げたということです。こんなことはめったにおきないし、奇跡としか言いようがありません。

2.研究開発で大成果を上げるには、天才とともに“目利き”の存在が不可欠

 日本のみならず、世界中に、天才が一定の比率で潜在しています。小保方さんも、その一人と思われますが、いくら天才でも自力で大成果を出すことは不可能です。埋もれる天才は、誰か有能な目利きから目をつけられて、その天才を発掘して、その才能を開花させて初めて、その天才が大成果をもたらします。

 たとえば、有名なエジソンも、JPモルガンという目利きの投資家によって、その才能が発揮されています。

 小保方さんの場合も、本人が告白しているように周囲に誰か助けてくれる人がいたと証言しています。

 彼女の才能に日本の大学教授の何人かは気付いていたようですが、決定的だったのはやはり、ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授のバックアップだったと思われます。同氏は一瞬で、彼女の才能を見抜いたようです。

 ところで筆者は米国シンクタンクSRIインターナショナル出身ですが、昔、SRIにポール・ジョーゲンセン博士(上級副社長)がいました。彼の持論、それは、一言、『天才を見抜けるのは天才である』というものでした。小保方さんとバカンティ教授の間でもこの説が当てはまると思います。

 小保方さんの研究は、当初、専門家から“過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄している”と指摘されたようですが、世紀の発見のほとんどは、最初、このような評価を下されるのが常です。

 このように先見的な研究は最初、往々にして酷評されるのは確かですが、逆に酷評される研究はすべて、先見性のあるすばらしい研究かどうかは何とも言えません、逆は真ならず、です。

3.普通の大学受験勝者に埋もれる天才が紛れ込む可能性は低いかも

 小保方さんは、早稲田理工のAO入試(面接とエッセイで合否判定)の入学者ですから、一般の入試合格者とは異なります。

 日本の大学受験制度は、平均的社会人に求められる資格を判定するには問題ないでしょうが、埋もれる天才を発掘するには不向きでしょう。

 したがって、小保方さんが普通入試を受けていたら早稲田に合格できていたかどうか疑問です。

 AO入試の欠点は、個性的というか偏った能力の学生を入学させる可能性があり、他の学生と調和がとれなくなるというリスクにあります。しかしながら、このような学生の中に、天才が潜んでいることがあるのです。もちろん、個性的な人だから、あるいは変わった人だから天才ということにはなりませんが・・・。

 いずれにしても、小保方さんの事例は、賛否両論あるAO入試の成功事例となりました。

4.イノベーションの成功には、目利きを育てることが重要

 今の世の中には、スポーツ選手や芸能タレントや演奏家などの卵を発掘して育てる目利きはそれなりにいます。最近のプロ野球投手の田中マー君のように、高校時代から誰が観てもその才能が明らかなケースも少なくありません。

 しかしながら、研究開発者やデザイナーや芸術家の世界では、その才能を発掘することは簡単ではありません。目利きの感性が鋭くないと、埋もれるタレントを発掘することはできません。みんなが気付く前に、天才の埋もれる才能を見抜く必要があります、さもないと、タレントに依存するビジネスの世界では競争には勝てません。科学技術の研究開発分野もまったく同じです。

 さて筆者の専門・MOT(技術経営)の分野でも、科学技術の目利き(Technology Insight)の育成は重要課題です。MOTとは、科学技術分野の目利きのためにあると言って過言ではありません。

 その意味で、小保方さんの研究を酷評した人は、残念ながら、目利き力がなかったわけです。有能な目利きには、一般の人が気付く前に、潜在価値を見抜く眼力が求められます。

 日本でハイテクベンチャーの成功事例が少ないのは、やはり、日本には有能なマネージャーはいても、有能な目利きがいないことに原因があるのではないでしょうか。

注1:毎日新聞“万能細胞:祖母のかっぽう着姿で実験 主導の小保方さん”2014年1月29日
http://mainichi.jp/select/news/20140130k0000m040096000c.html

注2:ベンチャー革命No.23『ノーベル賞受賞者田中耕一主任』2002年10月14日
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr023.htm

注3:早稲田大学「先端科学・健康医療融合研究機構」(ASMeW)
http://www.waseda.jp/scoe/

ベンチャー革命投稿の過去ログ
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/melma.htm

テックベンチャー投稿の過去ログ
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-PaloAlto/8285/column-top.html