米軍による「国境なき医師団」への空爆は誤爆ではなかったかも

10月3日にアフガニスタンの北部クンドゥズの「国境なき医師団」(MSF)の病院が米軍によって空爆され、22人の医師と患者が殺害されました。誤爆だったとされていますが、意図的に攻撃された可能性があります。


実は「国境なき医師団」は、TPPに対して「反対」の立場を取り続けていたようです。


以下、関連記事:

●APがすっぱ抜き、「国境なき医師団」は誤爆にあらず、米軍はあらかじめ熟知
http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151016/1040492.html#ixzz3om3GtSp5

アフガニスタンのクンドゥズで「国境なき医師団」の病院が米軍に攻撃される数日前、特殊作戦にあたっていた米国人アナリストらは、病院施設についての情報を収集していた。AP通信が報じた。
AP通信の報道によれば、アナリストらは病因に関する資料も、病院が記載された地図も入手していた。諜報部からの情報では、この病院は国際テロ組織「タリバン」の司令部によって管理センターとして使われており、武器が保管されている可能性があるとされていた。
専門家らは攻撃を正当化し、司令部にテロリストらは殲滅されたと報告している点は特筆に価する。
国防総省の公式的な代表者らはこの情報を否定している。
これまでの発表では、タリバンは地元民を死亡させないためにクンドゥズから後退していたとされている。

アメリカが病院を誤爆した「国境なき医師団」はTPPに強く反対していた
http://hbol.jp/63796

アフガニスタンの北部クンドゥズのNGO国境なき医師団」(MSF)の病院が10月3日に米軍による空爆で22人の医師と患者が死亡した事件について、7日にオバマ大統領はそれが誤爆であったことを認め謝罪した。

 米軍による誤爆で被害を被った国境なき医師団だが、実は彼らはTPPに対して「反対」というスタンスを取り続けてきたことをご存知だろうか?

 1999年にノーベル平和賞を受賞したMSFがある一定のことに強く抗議したことはこれまでなかったという。しかし、今回のTPPで交渉が進められている医療関係における知的財産権についての保護の内容では、医薬品開発業者が半永久的にを保護されることになり、ジェネリック医薬品の製造と販売を遅らせることになる。その為に、彼らが負担する医薬品の費用が高くなり、また貧困層が安価な薬を入手出来なくなるとして反対の烽火を上げたのだ。

 例えば、『Cambio Politico』によれば、〈HIVエイズ患者について、MSFは21か国でおよそ30万人の患者の治療にあたっているが、その医療費がひとり当たりの患者に当初年間で10000ドル(120万円)の費用がかかっていたのが、ジェネリック医薬品を使うことによって、ひとり140ドル(16800円)まで下げることが出来ていた〉という。この予算削減分が元の木阿弥になってしまうのだ。

 先日、AIDS治療薬「Daraprim」をこれまでの13.5ドルから750ドルに、55倍もの大幅な値上げを断行した製薬会社のTuring Pharmaceuticalsが、社会的な反発を受けて、値上げを撤回したことことが話題になったが、こうした強欲な製薬会社が横行した場合、途上国での医療行為などに大打撃になるのは自明だ。

 MSFの反対声明は2013年の段階から公式サイトに記載されている。

 それによれば、TPP交渉について漏洩した草稿に記された知的財産の保護の議論の中で、医薬品特許に関して提案された条項で問題視されるべき点が3つあるとしている。

1)特許付与の基準引き下げ――既存薬の改良について、治療上の薬効が認められなくても新たに特許を付与することを要求:既存薬の新しい形態に特許を与える「エバーグリーニング」は、医薬品の価格を高止まりさせ、安価なジェネリック薬の流通を遅らせるため、現在、複数の国々で禁止・制限されている。

2)事前の異議申し立てを禁じる――特許が付与される前に、不適当で不当な特許付与を阻止できないようにする:特許の事前異議申し立ては、公衆の監視によって、ジェネリック薬の競争を不当に遅らせる過度の特許付与やエバーグリーニングを減らすための重要な要素となっている。事前の異議申し立てを制限することは、不適当で不当な特許付与を阻止する手続きを煩雑化させ、費用を上げる。

3)データ独占権――薬事当局がジェネリック薬やバイオシミラー(バイオ後続品)の販売許可を与える際、既存の臨床データを使用することを禁じる:データ独占権は、その薬の特許が存在しない、また期限が過ぎた場合でも、製薬企業が長期間、薬の高い価格を保ちジェネリック薬の競争を遅らせる新しい方法として、別の形での独占権を与えるものである。

 2013年に声明を出した後も継続して反対しており、今年7月にも安倍晋三首相に向けて米国の提案する条項案に拒否を求める公開書簡を出している。

 こうした背景を受けて、ヨーロッパでは「アフガンの病院誤爆アメリカによるMSFへの報復だったのでは」という陰謀論めいた話も囁かれ始めている。

<文/白石和幸 photo by Mark Knobil on flickr(CC BY 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。


上記の記事にあるように、今年7月、国境なき医師団(MSF)は安倍晋三に対して、米国の提案する条項案に拒否を求める公開書簡を出している。以下がMSF日本のプレスリリース記事。

●TPP:国際保健を揺るがす条項に反対を――MSF、安倍首相あてに公開書簡
国境なき医師団(MSF)日本
2015年7月23日 17時17分
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000282.000004782.html
環太平洋経済連携協定(TPP)の首席交渉官会合が7月24日から、米ハワイ州マウイ島で始まる。国境なき医師団(MSF)は、現在交渉されている知的財産関連の条項案が、ジェネリック薬(後発医薬品)の普及を阻み、アジア太平洋地域などに暮らす数百万人の健康を脅かすものだと、すべての交渉参加国に有害な関連条項案の撤廃を求めてきた。日本政府に対しても同様の懸念を表明してきたが、本日改めて、米国の提案する条項案に拒否を求める公開書簡を、安倍晋三内閣総理大臣に提出した。
(公開書簡URL:http://www.msf.or.jp/news/detail/pdf/20150723_tpp.pdf




公衆衛生を視野に入れた決断を

現在交渉下にある条項は、米国が製薬企業に利するために推しているもので、TPP交渉参加国で暮らす、ジェネリック薬が必要な800万人以上の犠牲を伴うものだ。これら条項が現行案のまま妥結されれば、TPPは国際保健に壊滅的な打撃を与えることになるとみられる。医薬品に関する不必要な新規特許と規制強化による独占を生み出し、強化・長期化させ、薬価を引き上げる一方で、その低下を促すジェネリック薬による健全な市場競争の可能性を狭めかねないからだ。
協定の中でも最も憂慮すべき条項の一部は、いわゆる特許の「エバーグリーニング」を助長する規則を設けている。この条項により、TPPの参加国は、製薬企業が改変を行った既存薬について、仮にその改変が患者の治療に貢献するものではなかったとしても、追加的な特許承認を迫られる恐れがある。

またTPPが今後の世界的な通商協定の有害な先例となりうることも大きな懸念のひとつとなっている。有害な条項案が削除されなければ、後に続く世界的な貿易協定で、さらに多くの途上国が規制の対象となり、商業的利益の前に、公衆衛生のセーフガードと、国際法で明文化されている融通性は後退することとなる。“大筋合意”を目指すとされる今回の会合で合意形成が図られる前に、参加各国はTPPがもたらす将来的な影響を考慮し、商業的利益の確保と公衆衛生の責務をバランスよく対応できる国際規範を導入することが求められている。