旅する根付(高円宮妃久子)

 高円宮様と結婚される前のこと、高円宮妃久子様は英国留学中に大英博物館の展示で日本の根付に魅せられたのきっかけで根付の研究と蒐集の道へ。その後、宮様が根付の蒐集家になられた。
 以前、宮様が亡くなるまえだったか、千葉の博物館で高円宮コレクションの展示を見に行ったことがある。
 この本はおそらく500点以上と言われているコレクションの中の逸品を集めたものか。
 根付には江戸時代の技術文化、職人文化と美意識の昇華された姿がある。江戸時代の隠れた粋。
 根付には以前から注目していた。
 しかし、根付は高価なので蒐集も大変。写真集を眺めて楽しむしかない。ずいぶん前に苦労して手に入れた現代根付作家の福山恒山の作品(ゴリラ)は我が家の家宝。
 根付関係の内外の本も手当たりしだいに買った。
 しかしこの本は、数ある根付の本の中でももっともすばらしい本だと思う。
 掲載された写真もすべてご自分で撮られた。美しくかつ微細。
 根付をこよなく愛する愛好家の眼から見た根付の魅力が絶妙に表現されている。
 若い根付作家ですぐれた人も増えている。特に、愛媛で活動されている福山恒山や東京芸大出身の森哲朗の根付はすごい。
 根付の中に日本の技術文化の特質がよく現れているのではないか。