カルロス・ゴーン事件は、フランスの日本に対する新植民地主義(ポスト・コロニアリズム)事件である(山崎行太郎)


いま、パリが燃えている。戦場のようになっている。いまのマクロンにとっては、ゴーン事件どころではないだろう。


マクロンに象徴されるグローバリズム新自由主義に対する反逆の大きな流れが暴動のかたちで現れているのだろうか。


グローバリズム」とは、結局、新しい植民地主義(ポスト・コロニアリズム)のことだったのですね。



引き続き、山崎行太郎『毒蛇山荘日記』より、12月1日から12月4日の記事を、時系列でまとめて転載させていただきます。
http://yamazakikoutarou.hateblo.jp/

( 続10)
「 ゴーン逮捕事件」を読む。日産会長カルロス・ゴーンが 、東京地検特捜部に、逮捕され二週間近く経過したが、拘留延長が確定したらしい。欧米メディアが、「 宗教裁判 」だの、「 地獄」だのと、言いたい放題で、日本の裁判制度が、あたかも三流の後進国=野蛮国(笑)並みであるかのように 、「 オリエンタリズム 」( 東洋蔑視論?)満開の、野蛮な批判、罵倒、嘲笑を繰り返しているようだが、それにもめげずに、「 拘留延長 」を決定したことは、評価していい。今や落ちぶれつつある「欧米先進国 」(笑)だが、彼等の文化や思想や礼儀作法が常に正しいというわけではない。普段は「 多様性 」だの「 異文化尊重」だのと綺麗事を言いながら、こういう時になると、ホンネ丸出しで、グロテスクな「 人種差別的」「 欧米中心主義 」を喚きたて始めるのが彼等である。哀れとしか言いようがない。

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東京地検、海外メディアに反論
勾留期間「国ごとに制度ある」
2018/11/29 18:55
©一般社団法人共同通信社

 東京地検の久木元伸次席検事は29日の定例記者会見で、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)らの勾留の長さに海外メディアから批判が出ていることについて「国ごとにそれぞれの制度があり、自分の国と違うからと言って簡単に批判するのはいかがなものか」と反論した。

 また「現行の法制度の下、裁判所が発した令状に基づいて行っており、何ら問題はないと考えている」と述べ、「無用に長期間の身柄拘束を続けたいという意図はなく、必要性を判断している」と強調した。

 取り調べの録音・録画については、今回も同様に実施していると明らかにした。
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この東京地検特捜部の次席検事の発言は、評価できる。今更、斜陽国でしかない「 旧先進国 」並の裁判制度や文化を模倣し、それに隷属しなければならないという理由はない。「いい加減にしろ」と言いたい。ところで、ゴーン逮捕事件は、今、どーなっているのか。

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退任後報酬は「希望額」と供述
記載義務なしとゴーン前会長
2018/11/30 23:12( 共同通信社 )

 金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、有価証券報告書に記載せず、退任後に受け取ることにした年約10億円の報酬について「あくまで希望額だった」との趣旨の供述をしていることが30日、関係者への取材で分かった。退任後の報酬支払いは確定しておらず、報告書への記載義務はなかったと主張しているもようだ。

 東京地裁は30日、ゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=の勾留をいずれも10日間延長する決定をした。期限は12月10日。
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ところで、ゴーン逮捕事件で、私が関心あるのは、ゴーンが有罪か無罪かでもなく、日産の今後でも自動車産業の将来でも、また裁判制度の優劣でもない。私は、ゴーン逮捕そのものを、重く受け止めている。このゴーン逮捕事件は、大きな転換点になるだろう、と。其の意味で、東京地検特捜部は、よくやった、と。私は、最近の日本人の「思想的劣化」にしか興味がない。ゴーンとその仲間たちの乱暴狼藉を野放しにしてきた日本人の「思想的劣化 」。私が、『 保守論壇亡国論』や『ネット右翼亡国論』『 エセ保守が日本を滅ぼす』などで、提起してきた問題である。私は、その意味で、左翼にも右翼にも、野党にも自民党にも反対である。同じように思想的に堕落しているからだ。私は、安倍自民党の「入管法改正 」にも反対だが、野党の「移民の人権擁護論」にも反対だ。しかし、そんなことは誰かがやるだろう。話は変わるが、昨夜は、西武池袋線椎名町というところにある「某居酒屋 」で、日大芸術学部清水正教授や山下聖美教授、大学院生らと、呑み会だった。話題は 、主に、清水教授の専門であるドストエフスキーの『地下生活者の手記』やロシア文学の話だったが、他に話題に登ったのは、ネットの世界で活躍する「 桜井誠 」や「安濃豊( あんのう )」のことだった。テレビや新聞、雑誌類で活躍するボーフラのような有名文化人の名前は、一切、出なかった。有名文化人など、語るに値しないというわけだ。そもそも、有名 文化人などを無視、黙殺、軽蔑するところから、我々の居酒屋漫談は始まった。

( 続く)



( 続11)
「 ゴーン逮捕事件」を読む。ゴーン逮捕事件は 、単なる虚偽記載や背任容疑などの会計や経理の事務的、技術論的問題を越えて、「 植民地主義 」や「 日仏比較文化論 」に至るまで、意外な展開を見せている。検察側のリーク情報だけの「新聞/テレビ情報」では見えてこなかった、もっとデイープな情報が、週刊誌等から漏れてくるにしたがって、「日産問題 」の根の深さを感じないわけには行かないようだ。郷原信郎等は、30億か100億だか知らないが、不記載の給与は、退職後貰うはずだったから記載する必要はない、起訴は難しい・・・と、東京地検特捜部の暴走と勇み足を批判しているようだが、私は、そんなことには興味がない。私が興味を持つのは、フランスという、かっての欧米先進国の一つであった国家が、ルノーによる日産経営を通じて、「植民地主義的支配 」を画策していたらしいということだ。いや、正確に言うと、現実に、その植民地主義的支配は、具体的に実行されていたらしいということだ。言い換えれば、日産の利益の大半が、あるいは一部が、ルノーカルロス・ゴーンを通じて、合法的にか非合法的にかは分からないが、フランス側に吸い上げられていたらしいということだ。この悲惨な現実が、ある意味では屈辱的な現実が、白日のもとに、暴露=公開されただけでも、ゴーン逮捕事件の意味はあったと言わなければなるまい。多くの日本国民は、この屈辱的な現実を知っていたのか。知らなかったのではないか。カルロス・ゴーン日産自動車を取材した経済ジャーナリトたちは、この屈辱的な植民地主義的支配の実態を、これまで、どう描いてきたのだろうか。美談仕立ての「 美しい物語」を描いて、膨大な印税や接待費や遊興費などを得ていたのではないか。経済ジャーナリトに限らず、政治家や経済学者や経済評論家、経済官僚、テレビ司会者等、その他大勢のマスコミ関係者たちも、日産やカルロス・ゴーンに甘い汁を吸わされていたのではないか。植民地主義的支配には、必ず、現地人の中に「協力者 」がいるものだ。イギリスのインド植民地支配は 、現地人エリートに支配=統治を任せて、自分たちは姿を現さないという間接的統治であったが、驚くべきことに、日産支配も同じように、間接的支配=統治だったようだ。ゴーンとケリーという日産のツートップは、ほとんど日本にはいなかったらしい。先日、ゴーンを解任決議した横浜本社での取締役会でも、ルノー側から送り込まれていた取締役の二人は、テレビ会議での参加だったという。つまり、日産の最高幹部の大半は、日本にいなかったということのようだ。我々が、バブル崩壊後、ここ数十年、馬鹿の一つ覚えのように、繰り返してきた「グローバル化 」「 グローバリズム」「グローバリゼーション 」とは、こういう「新植民地主義( ポスト・コロニアリズム ) 」のことだったのだろう。
( 続く)


( 続12 )
「ゴーン逮捕事件」を読む。「webーronnza」に面白い記事が出ている。フランス在住の日本人女性ジャーナリト、元産経新聞記者=山口昌子の書いた文章だ。読んで、笑った。タイトルは、次の通り。

▼▼▼以下引用▼▼ ▼
パリで感じる「ゴーン事件」の危うさ
日産はフランスの尾を踏んだ? 日本はやはり外国人嫌い? 陰謀説も……
山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト
2018年11月25日
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要するに、フランス在住女性の「おフランス崇拝」記事だ 。言い換えれば、素朴なフランスかぶれの日本人女性による「 日本蔑視論 」だ。サブ・タイトルに、「日産はフランスの尾を踏んだ」とある。「 えっ!?フランス様の尾を踏んだ!?」と思って、本文を読んでいくと、なんのことはない。「フランスの『 エリート主義』は素晴らしい。 」「マクロンもゴーンも名門エリート大学(ena、ポリテクニック)出身の『 超エリート』だ。 」、「フランスの『中央集権主義』も、大衆や民衆を切り捨てる『富裕層中心主義』も素晴らしい。」・・・と言うのだ。たとえば、こういう文章で始まっている。

▼▼▼以下引用▼▼ ▼
●「ゴーン逮捕」に抱く二つの疑念
 日本を騒がせている「ゴーン逮捕」をパリから見ていると、二つの懸念を抱かざるを得ない。一つは、日産はカルロス・ゴーン氏、即ちルノー、即ち三色旗(フランス)というトラの尾を踏んだのではないかということ。二つ目は、日本はやっぱり「攘夷」、「外国人嫌いだ」という印象を外国人に与えたのではないかということだ。
 日本式に言えば、金融商品取引法違反のゴーン容疑者だが、フランス的に言えば、「推定無罪」(ルメール経済相)、まだ刑が確定したわけではないから敬称を付けることにする。西川廣人社長が「逮捕会見」をした際、ゴーン氏を時々、敬称抜きで呼んだと、仏誌が批判していて、ビデオニュースを見たら、確かに「身内だから敬称抜き」ではなく、呼び捨て、悪漢扱いで、失礼な感じがした。ルノーではまだ、最高経営責任者(CEO)だ。
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何か、違和感を感じさせる文章だ。この「上から目線」のモノの言い方は、実は、「 欧米崇拝 」「おフランス崇拝 」から来ていること間違いない。さらに、こんなことも。


▼▼▼以下引用▼▼ ▼
●中央主権国家・フランスが持つ特殊性
 フランスは王政、帝政、共和制と体制が変わっても、中央集権国家であることに変わりはない。アメリカのように合衆国でも、ドイツのように連邦でも、イギリスのように立憲君主制でもない。「子供のケンカに親、すなわち国家が出てくる国」なのである。
 フランス人を相手にケンカをするときは、常に国旗「三色旗」と国歌「ラマルセイユーズ」が背後に控えていることを考えるべきだ。実際、マクロン大統領とゴーン氏は最近、ルノーによる日産合併で合意している。それで日産が慌てて、ゴーン氏を放り出したとの説もある。
 マクロン氏が経済相だった頃、ゴーン氏との関係は良くなかった。だが、大統領になれば話は別だ。中央集権国家フランスでは、マクロン氏の支持率がいかに低かろうが、大統領は“絶対君主”といえる。経済相としてのマクロン氏は軽視できても、大統領になれば絶対服従だ。その意味で、ゴーン氏とマクロン氏は今、密接な関係にある。
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「 フランス人を相手にケンカをするときは、常に国旗「三色旗」と国歌「ラマルセイユーズ」が背後に控えていることを考えるべきだ。 」には笑った。時代錯誤(アナクロニズム )も甚だしいが、これが、パリ在住日本人女性ジャーナリトの哀れな実態( おフランス崇拝?)だと思えば、哀れを通り越して、気の毒になるぐらいだ。フランス文化に洗脳されると、ここまで馬鹿になれるものなのか、と。


▼▼▼以下引用▼▼ ▼
 ゴーン氏は、理工科系の秀才学校ポリテクニック(理工科学校)卒のエリートで、卒業後は同校の上位5、6人しか入学できない最難校MINES(高等鉱業学校)に進んだ大秀才だ。そろそろ卒業という時に、大手タイヤのミシュランから電話がかかってきて、ブラジルの工場長として就職した。
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いやはや(笑)。だから、なんだって言うのかね。日本人よ、へりくだって、土下座でもしろと言うのかね。しかしながら、ゴーンは、日産のリストラ、日本国民のリストラ・・・には成功したようだが、ルノーのリストラ、フランス国民のリストラには失敗したようだ。何故なのか。マクロンもまた、その強力な超エリート主義的な『 絶対君主』気取りながら、フランス国民の統治には成功しているようには見えない。ゴーンやマクロンの権力行使は、日本のような『 被=植民地』には有効だが、フランス国内では無効なようだ。何故なのか。日本や日本人を、便利な『植民地』、無知で従順な『原住民 』とでも考えているのだろう。そこのところを、山口昌子といフランス在住女性に聞いてみたいが 、無理のようだ。フランス文化の欠点や欠陥も、この東洋の植民地出身の馬鹿女には、ただひたすら、「 素晴らしい」ということらしいから。

▼▼▼以下引用▼▼ ▼
日本人にすれば、グルメやモードの軟弱な国と思っているフランスが偉そうな顔をするのは耐えられないのかもしれない。ただ、そもそも日仏のものの考え方の最大の相違は、司令官像、つまりトップ像にある。これは、フランスが「中央集権国家」であることとも大いに関係している。強力なトップの下で統率されないと、元来、自分勝手、自由気ままなフランス人は統率できないのだ。それゆえ、フランスは統率力のあるエリートを育てるのに熱心だ。いわゆるエリート校の学生には、“月給”が出ることが象徴するように、彼らは国を背負って立つ大事な人材なのだ。
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「貧富の差」を肯定し、「格差社会」「 階級社会 」を肯定する「超エリート主義 」こそ、フランスの構造的欠陥のように見えるが、この馬鹿女には、そうは見えならしい。最後に、この白人気取りの東洋女は、フランス政府の逆襲を期待しているかのように、次のように書いている。フランスを舐めたらアカンゼヨ、と。


▼▼▼以下引用▼▼ ▼
●「三色旗」を踏まれたフランスの出方は?
 筆者にとっては、1億円も10億円も100億円も、単に「巨額」という認識しかない。ゴーン氏がどれだけの高額のお給料をもらい、どれだけのお金をごまかしたのかは、あまり関心がない。ただ、世の中には文字通り、桁違いのすごい金持ちがいるな、と思うことはある。
 例えばパリの「パラス」と呼ばれる超デラックス・ホテルの前に、ニューヨークナンバーやアラブ文字ナンバーの、うっとりするような立派な車が駐車しているのを見た時。大金持ちが個人ジェット機や大型ヨットなどで運転手付きで運んできた車だ。
 あるいは、凱旋門(がいせんもん)を中心に放射状に延びる大通りに面した、外見は何の変哲もない建物の内部を覗いた時。アパートの1室の広さが400や500平方?もあり、居間には美術館並の絵画や美術品が展示してあった。最近は少なくなったものの、制服姿の執事やお手伝いさんを見かけることもある。彼らは、自分たちが仕えるマダムやムッシューが、他の館のマダムやムッシューより金持ちで贅沢であってほしいと願っているフシがある。
 フランスでゴーン氏の高給ぶりに関して、日本ほど非難轟轟(ごうごう)ではないのは、こうした社会風土があるからだろうか。
 ともあれ、「三色旗」を踏まれたフランスが今後、どう出るのか。外野席としては、興味深々だ。
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「web・ronnza」は、確か朝日新聞のWebだったと思う。こういう文章を、Webとはいえ、堂々と掲載する朝日新聞朝日新聞のホンネが出ているのかもしれない。しかも、筆者は産経新聞出身。右も左も、こんなもんだろう。見回してみると、日本のジャーナリトも文化人も、学者や大学教授も、こんな「 植民地文化人 」ばかりだ。『奴隷の思想を廃す 』(江藤淳)と、思わず、叫びたくなる今日、この頃である。

( 続く)