検証(58)テルル132はどこから来た?

また福島原発の謎が増えた。

3月12日の朝の時点で既に放射性テルル原発から6キロ離れた福島県浪江町で検出されていたらしい。ベント前であり水素爆発の前である。

東京新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110603-OYT1T01065.htm?from=main4

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東京電力福島第一原子力発電所から約6キロ離れた福島県浪江町で3月12日朝、核燃料が1000度以上の高温になったことを示す放射性物質が検出されていたことが分かった。

経済産業省原子力安全・保安院が3日、発表した。事故発生から2か月以上も経過してからの公表で、保安院の西山英彦審議官は「隠そうという意図はなかったが、国民に示すという発想がなかった。反省したい」と釈明した。政府の事故調査・検証委員会の検証対象になりそうだ。

検出された物質は「テルル132」で、大気中のちりに含まれていた。測定時間は、1号機で放射性物質の混じった蒸気が放出された「ベント」の前だった。
(2011年6月3日23時09分 読売新聞)  

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3月12日の朝はベントの前だし、水素爆発の前だ。いったいどこからこのテルルはやって来たのだろうか。放射性テルル核分裂によって生成する。

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ウランの同位体(核燃料)に中性子が衝突して生成されるのがテルル132。
テルル132の生成プロセス

Tin-132 (half life 40 s) decaying to antimony-132 (half life 2.8 minutes) decaying to tellurium-132 (half life 3.2 days) decaying to iodine-132 (half life 2.3 hours) which decays to stable xenon-132.

http://en.wikipedia.org/wiki/Fission_products_%28by_element%29#Tellurium_125.2C_128.2C_130


中日新聞

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http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011060590015910.html
蒸気放出前に金属性放射性物質検出 福島第1原発から7キロ地点
2011年6月5日 02時06分

 東日本大震災の発生翌日、福島第1原発で爆発が起きる前に福島県が行ったモニタリング調査で、金属性で飛散しにくい放射性テルル原発から約7キロ離れた同県浪江町などで検出されていたことが分かった。拡散しやすい揮発性の放射性ヨウ素より多く検出されており、早い段階で金属性の放射性物質が広く飛散していた。
 テルルレアメタル希少金属)の一種で、放射性同位体テルル132の半減期は3日余り。主にベータ線を出す。
 データは保安院が3日夜に公表。3月12日朝から13日夜までの大気を調べたもので、大半がこれまで未公表だった。テルル132は12日朝から昼すぎにかけ、浪江町の2カ所と大熊町南相馬市で検出され、濃度は1立方メートルあたり119〜23ベクレルだった。
 当時の原子炉建屋は換気装置が止まって外に空気が出ないようになっていた。蒸気を放出するベント作業は12日午後に始まり、その直後に水素爆発が起きている。
 東京電力は、核燃料の損傷が最も進んでいたとされる1号機が漏出元とみており、「格納容器内の圧力が高まり、接ぎ目から水素とともにテルルが漏れ出したのでは。建屋内の圧力も高まって外に漏れ、風に乗って広がったことが考えられる」と説明している。
 ただ、拡散しやすい揮発性のヨウ素131の検出量はテルルの半分程度。テルルと同じ金属性のセシウム137は浪江町の1カ所でテルルを上回った以外、微量しか検出されなかった。
 京都大原子炉実験所の山本俊弘准教授(原子炉物理)は「現在分かっている状況では、テルルが漏れるとは考えにくい」と話している。
中日新聞

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(引用終わり)

保安員は圧力容器の「接ぎ目」から漏れたと言い、山本俊弘准教授(原子炉物理)は「現在分かっている状況では、テルルが漏れるとは考えにくい」という。どちらが正しいのだろうか。


Yok-blogさんは次のように分析する。
http://yok-blog.com/?p=1658

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さて、ここで、東京電力の言い分と京大の山本准教授のどちらの言い分が正しいかですが、私は間違いなく東京電力がウソで、山本准教授の話が正しいと考えます。

まず原発の構造ですが、以下の記事を見てください。
http://www.news-postseven.com/archives/20110321_15550.html

「圧力容器は鋼鉄の鍛造材で厚さは約16センチ。2号機の格納容器は3層構造で、一番内側に鍛造材で厚さ3センチの内壁があり、その外側の外壁が鉄筋コンクリート製で厚さ200センチあります。その外に遮蔽外壁があり、これも鉄筋コンクリート製で厚さ100センチです。どれくらいの熱や圧に耐えられるかは、申し訳ありませんが、弊社が答えられる範囲を超えます」

と、2号機の格納容器製造元のIHIが言っているわけですが、これは2号機のことに言及しているので、1号機とは違うものの、同じBWR(沸騰水型原子炉)ですから構造はほとんど同じはず。圧力容器も格納容器も何層にもなっていて、その外には厚さ2メートルの外壁があってその外の遮蔽外壁が1メートルの厚さがあるんですよ。どう考えてもベント前に漏れるわけないじゃん。

継ぎ目がどうのとか、東電の言い分は明らかにおかしい。従前から原発は安全で爆弾にも耐えるなんて言ってきたのが電力会社でしょう?継ぎ目がそんなに脆いのか?だったら今までウソついてきたことになるでしょうが。いい加減すぎて腹が立つ。

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(引用終わり)


とすると、いったいこの放射性物質はどこから飛んできたのか?

謎は深まるばかり。