玻璃七宝(東洋子)


たまたま銀座5丁目の安藤七宝店を覗いていたら、美しいモノを見つけました。

ガラス基材に有線七宝を施しためずらしい美術工芸品。

玻璃七宝(はり・しっぽう)と呼ぶらしい。


こんなの初めて見ました。ふつう有線七宝といえば、金属基材に施すものと相場がきまっています。

しかし、これはガラス基体の表面に七宝。


ガラスがもたらすほのかな透明感のある有線七宝が格別美しい。


興奮しながら魅入っていると、女性が近づいてきて話しかけてきました。まさかー、と思いましたが、その方がこの工芸作家の東洋子さんでした。

製作工程の概要とその苦労話をお聞きしました。

ガラス胎(基材)とその表面に形成する七宝層の膨張係数が違うので極めて難しい。

異種類のガラスの膨張係数を合わせる苦労。(これは秘密)

作品として完成させるまでに、試行錯誤と研究に明け暮れる日々が数十年。

製作工程もハンパないほど手間がかかる。何段階も電気炉に入れて、焼成と徐冷を繰りかす。とくに徐冷プロセスが微妙で難しい。膨張係数の関係でゆっくりと時間をかけて徐々に冷やしていかなければならない。完成までに2週間以上かかる。

玻璃七宝は明治初期の日本において既に完成されていたが、その技術は失われた。これを東洋子さんが復活させたということになります。(これについては、下記【参考】にメモしたFredric Schneider氏のレクチャーを参照。)

東さんの玻璃七宝は、光を透すため彩が淡く、数百色の七宝釉薬を重ね合わせる「友禅ぼかし」の技法を取り入れているらしい。


記念に一つ持って帰ろうと思って、悩んだ末、発色と模様が美しいぐい飲みをゲット。



東洋子展は11月3日まで銀座5丁目の安藤七宝展にて開催中。
http://www.ando-shippo.co.jp/



【参考】
●東洋子さんの「玻璃七宝・クラフトあずま」
http://harishippo.com/
(本記事冒頭の画像はこのサイトからいただきました。深謝)


以下のレクチャーでは19世紀から現代に至る日本における玻璃七宝の技術史が紹介されていて興味深い。

16:30あたりで東洋子さんが紹介されています。

●Fredric Schneider: "Japanese Cloisonné Enameling on Glass Substrate..."
https://www.youtube.com/watch?v=GWTTPm2doDA

2012/06/08 に公開
October 8, 2010. Dr. Fredric T. Schneider, Independent Scholar, New York, gives his lecture "Japanese Cloisonné Enameling on Glass Substrate, from the Late Nineteenth Century to the Present" for the 3rd Biennial ICOM-CC Experts' Meeting on Enamel on Metal Conservation at The Frick Collection, October 8--9, 2010