評伝 西脇順三郎(新倉俊一)

評伝 西脇順三郎

評伝 西脇順三郎

 2週間ほどかけてようやく読了。西脇順三郎の魅力と香りをたっぷりたのしむことができるこの新倉俊一氏の本はとてもよかった。西脇順三郎をとりまく交友の多彩さも新たな発見。稲垣足穂とも交流があったはずだが、それにはふれられていない。
 もうずいぶん昔の大学時代に西脇順三郎の詩集を愛読していた時期があったことを思い出した。
 しばしば口ずさんでいた「アムバルワリア」の中の「天気」の冒頭。


 (覆された宝石)のような朝
 何人か戸口にて誰かとささやく
 それは神の生誕の日。


 そしてこの希有の詩人は、1982年6月5日の未明に生まれ故郷である小千谷にて、88歳で去っていった。

 <幻影の人は去る/永劫の旅人は帰らず>