科学史学校(中岡哲朗)

 国立科学博物館にて科学史学校の講義。今日は中岡哲朗氏(大坂市立大学名誉教授)の「日本近代技術の形成」をめぐって、というもの。1928年生まれ。中岡先生は数年前に別の講義をお聞きしたことがありましたが、今日もお元気でゆっくりと確かな口調で日本の近代技術の形成・発展について語りおろす。魅力的な語り口である。
 明治期の日本の工業化は、在来産業が維新と海港の影響で開始した発展と、西洋からの移植産業が日本市場に適応して開始した発展との、ダイナミックな相互補完の結果だという視点から日本の工業化と近代技術の形成を論じている。
 三枝博音の「技術は過程である」というテーゼに沿って、日本の産業革命期の動向を、特に織物産業を例示しながら、その重要な秘密に迫る。
 中岡先生は、技術論争で提示された「技術とは労働過程の社会的体制である」というテーゼを退ける。
 ところで、技術は過程である、とはいったいどういうことであろうか。この場合の「過程」は製造段階の過程(工程やプロセス)を意味するものでは、勿論ない。
 水流が過程であるとすると、水流はどのようにして形成されるか。水流が生じるためには、川底や土手という手段が必要。川底や土手というミッテル(手段)が水流というプロセスを作りだしている。