STAP細胞、笹井博士を抹殺してしまったのは誰だ!?(大槻義彦)

早稲田大学大槻義彦教授のブログ記事より:
http://29982998.blog.fc2.com/blog-entry-695.html


STAP細胞、笹井博士の自殺のショック
STAP細胞、笹井博士の自殺のショック
つい数時間前のNHKニュースでSTAP細胞実験の直属の上司
である理研の発生 再生科学総合センターの笹井芳樹 副
センター長が職場で首つり自殺を図った報道されました。
 小保方STAP細胞はありもしないねつ造細胞だったという
のが関連学会などの大多数の見解でしたが、笹井博士の記
者会見での肯定的な見解発表に驚いていました。
 このことは本ブログでも繰り返し取り上げたことでした。
笹井博士は実際にSTAP細胞が存在した、とする3っつの理
由をあげました。とくに小保方さんの作ったSTAP細胞は通
常のES細胞とは違う証拠を指摘しました。
 笹井博士は再生医療の分野でノーベル賞級の研究を行い、
この分野のホープとして信頼されていましたから、この人
がここまで言えば、STAP細胞はねつ造と断定できない、と
いうのが本ブログの立ち位置でした。
 それが笹井博士の自殺、というのです。これはショック
です。やりきれない思いです。

STAP細胞、笹井博士を抹殺してしまったのは誰だ!?
STAP細胞、笹井博士を抹殺してしまったのは誰だ!?
それは日本の異常なマスコミと世論だ。科学の世界にこ
のような異常、異様なバッシングは許されない。そのおか
げで人類は世界有数の再生医療のリーダー、ノーベル賞
補を失った。断腸の思いである。
 およそ、通常の科学論文には誤りはつきものである。い
やいやもっとはっきり言えば誤り、誤解、または無価値な
論文が多数を占めるのだ。
 このような宿命は今に始まったコトではない。たとえば
ニュートン万有引力を発見した後、『その万有引力は真
空の宇宙空間をどのように伝わるのか』ということが最大
の疑問であった。今ですらこのことは十分わかっていると
は言えない。
 ところがこの問題に取り組んで『万有引力はこうして伝
わる』という論文が出始めた。ヨーロッパ、とくにイギリ
スを中心のこの問題を取り上げた論文が100篇以上のの
ぼった。すべて誤りだった。
 このような誤りは世論や週刊誌で叩かれることもなく、
ましてその著者が研究施設からクビになることもなかった。
実際にはこのような誤りを土台にしてアインシュタイン
一般相対性理論が構築されてゆく。
 科学の世界では『誤りも進歩の歩み』になりうるのだ。
 もう一つ。もっと新しい例をあげよう。それはあの超伝
導現象である。絶対零度近くで電気抵抗が0になるという
現象がオンネスによって発見されてからその原因となる理
論的研究が何十年も続いた。
 この間『超伝導の謎を解明した』という論文が500篇以
上も発表された。すべて誤りか不十分であった。そしてつ
いにBCSの理論で決着がついた。そこでこの500篇以上の
論文の著者が新聞や週刊誌、NHKなどに叩かれ、身分をはく
奪され、スキャンダルまで報道されたか?!
 ノー!!ノー!!実際には誤りであった論文もその後の
BCSの理論の土台となった。まして誤りの論文を書いた著者
が自殺に追い込まれたことも聞かない。
 科学や教育の分野では誤りは許される。処分の対象には
ならない。生徒が誤って答案を書くのは当たり前。科学者
が誤った論文を書くのも当たり前。この誤りから進歩があ
る。
 このことは一般社会での仕事上の誤りとはまったく違う。
笹井博士が小保方さんの作ったSTAP細胞の画像の解釈を誤っ
たとしても、処分の対象になどならない。まして週刊誌や
NHKが個人的スキャンダルめいた批判までするのは行き過ぎ
であり、不幸なことだ。
 STAP細胞はウソだった可能性が高い。それでも小保方さ
んがこれを故意にでっち上げたという証拠がない限り、単
に膨大な数の誤った論文の一つにすべきである。そのとき
には処分などもってのほかである。
 このような科学の進歩の現実に反するおかしな議論は、
何と分子生物学会などにも広がっている。これについては
改めて批判する。

●笹井博士を殺したのは誰だ!?
笹井博士を殺したのは誰だ!
という先日のブログへの反響は大変なものでした。その
うちの一部はコメント欄にのせてあります。また、『拍手』
の数も通常の2倍から3倍ありました。お読みいただきあ
りがとうございました。
 再度繰り返しますが、もし小保方さんのSTAP細胞が悪質
なねつ造だったとしても、笹井博士までそれに加担した証
拠などありません。それは1か月以上前の単独記者会見を
見れば明らかです。STAP細胞の存在を確信する3っつの理
由を科学的に明確に述べています。
 その後、一部の専門家から上の3っつの理由
STAP細胞でなくても説明が可能という指摘もありました。
もしそうだとしても、つまり笹井博士の事実誤認があった
としてもこれは科学者ならほとんどだれでもやる誤認、確
認不足です。
 このような誤認は科学の世界では処分の対象になったり、
糾弾されたり、マスコミで叩かれたり、あげく男女関係の
スキャンダルまで取沙汰されるのはおかしな、非常識です。
 いただいたご意見の中には『大槻はねつ造グループのか
たを何故持つのか?』というきびしいお叱りもいただきま
した。このようなお叱りは先のブログの文章をよくお読み
いただいてないから出てくるのです。
 もちろん、先に指摘した東大医学部の教授のデータ改ざ
ん、改ざん指示、改ざん容認などは論外です。これは製薬
会社と結託した意図的データ操作で一種の『科学詐欺』で
す。つまり犯罪行為にもなります。
 このケースと今回のSTAP細胞騒動を混同するところに今
回の不幸があります。少なくとも、笹井博士のやった行為
は上の『科学詐欺』にはまったく関係ないことです。30
歳代で京都大学医学部の教授に抜擢され、再生医療で世界
の先頭を走る、ノーベル賞候補を死に追いやった世論、マ
スコミは猛省すべきです。
 『教育や科学の世界では誤りを許し、それを次の発展の
礎にする』という掟があります。世間の皆様、ネット批評
家の皆様、マスコミの皆様、それに関連学会の皆様、そこ
のところをどうぞご理解ください。
 このままでは第2、第3の犠牲者が出ます。たとえばハーバード大学の共著者バカンティ教授は1年の休職に追い込まれました。
これは実質的な退職を迫られた形です。