聴覚はすごい

先日のラジオ深夜便「明日へのことば」で聞いた物理学者の米沢富美子さんの話が興味深かった。


ラジオ深夜便
オトナの生き方「人生はいつでもチャレンジ」
米沢富美子さん(物理学者)
 米沢富美子(よねざわ ふみこ)さんは、世界的に知られる物理学者で、現在慶応義塾大学名誉教授。日本の女性科学者の草分けとして、女性で初めて日本物理学会の会長になりました。
 米沢さんは昭和13年(1938年)大阪生まれ。自然の原理を解明したいと京都大学理学部に進学し、物理学を学びました。大学院時代に結婚。その後も物理学の研究をしながら三人の娘の子育てもしてきました。
 米沢さんは長い研究生活の中で、乳がんをはじめ何度かの入院・手術を経験し、1996年には夫を肝臓がんで亡くしました。しかし、「自分の可能性に限界を引かない」「めげない」をモットーに前向きに生き、1981年には慶応義塾大学教授に就任。1984年には猿橋賞を受賞しました。
 現在は、母の介護のため大阪に通いながらライフワークをまとめ、それが終われば新しい研究を始めると言います。
 常に前向きな米沢富美子さんに、これまでのチャレンジ人生についてお話しいただきます。


たしか、米沢富貴子先生は、複雑系物理学(カウフマンら)をいち早く日本に紹介した学者と記憶している。


このインタビューを聞いていてギョッとしたことがあった。

最愛のご主人を肝臓ガンで亡くされるときのこと。

いよいよ臨終というとき、「ありがとう」と最後のことばをかけた。そのときご主人は富美子さんの手を握り返して抱き寄せたというのです。それまで1週間以上意識不明の状態が続いていたので、びっくりし深く感動したという話。

昏睡状態でも聴覚はちゃんと働いているということでしょうか。



そういえば、臨終の際の似たような話を以前ラジオ深夜便でやってました。
http://d.hatena.ne.jp/gyou/20120217

国立がんセンター名誉総長の垣添忠生(かきぞえ・ただお)さんが奥様を癌で亡くされたときに起こった不思議なこと。

昏睡状態だったはずの奥様が急に上体を起こして、目を閉じたまま言葉も無く、ご主人の手をとってぎゅっと握りしめ、そのままガクッと息をひきとったというのです。



そんな話をカミさんとしていると、10年以上前のこんな話を二人で思い出した。

次男坊が小学生のとき、クラスの同級生が交通事故で意識不明の重体になったことがあった。頭を強打して一週間たっても意識が戻らなかった。ご両親は、もうだめかと諦めかけたそうです。

そのときクラスメートはその子に呼びかける話をカセットテープに録音し、病室で流し続けた。すると、なんと、しばらくして意識が戻ったのです。その後は順調に回復し、後遺症もなく今でも元気です。

音声による呼びかけがよかったのだと思われます。

人間の聴覚能力って想像以上にすごいのですね。

そういえば、チベットの僧侶は臨終の際に死後の世界に迷わないように誘導するためのお経(バルド・トドゥル:死者の書)を耳元で読み聞かせるという話を思い出した。

身体機能が停止しても聴覚だけは働き続けるってことか。


「バルド・トドゥル」は死に臨む人の耳元で死の直前から死後49日間にわたって読み聞かせる教典です。

原題である「バルド・トドゥル」をアメリカの人類学者エバンス・ヴェンツが「チベット死者の書」と翻訳しました。チベット語のバルドは中間の状態を表し、トドゥルは耳で聞き解脱するとの意味です。人は死ぬと中間の状態に入っていくので、死は終わりではなく再生へ向かうプロセスと考えます。

生命体は生と死をくりかえす大きな旅を続けているということです。
http://blog.goo.ne.jp/aran-wish/e/b2fe1660e35488341d6d5043fbea1955