小林秀雄とベルクソン

父の三回忌の法事が無事終了し桜満開の中央道を東京方面へ向けて走る。帰りも小林秀雄の講演CDを何度も繰り返し聞きながら。

小林秀雄さんの語りはすばらしい。江戸時代の落語家のような語り口。同じ話を何度聞いても聞くたびに新しい発見がある。

小林秀雄さんの文士(この文士ということばがいい!)としての原点にアンリ・ベルクソンの哲学がある。(ちなみに弊ブログ名の「ホモファーベル」は、ベルクソンが人間を「ものづくりするヒト:ホモ・ファーベル」と規定したことに由来する。ものづくりこそ現生人類の本質的な特徴。)

心は脳の機能であるとする心身平行説が根本的に間違っていることをすでに100年以上前に明快に実証したベルクソン哲学のエッセンスから、近代科学の本質的欠陥を腑分けする小林秀雄さんの語りの切っ先の鋭さは、何度聞いても感動してしまう。

小林秀雄さんのこの指摘は未だその輝きを失っていない。なぜなら、脳科学者を含めて現代の科学は小林秀雄の指摘をまったく理解していないから。