自然農に生きる人たち(新井由巳)

耕さない農業、自然農法はおそらく究極の適正技術ではないか。

この本は、川口由一というすぐれた自然農法の実践家とその後継者たちの活動を紹介する写真集の趣。福岡正信氏や川口氏たちの活動がじわじわと日本中に着実に拡がり始めている(と思いたい)。実際どうなのだろうか。

自然農を実践している人々の写真を眺めているだけで、目頭が熱くなってくるものがあります。なにかなつかしい風景。もう50年以上もむかし。幼い頃走り回った畑や田んぼ。豊かな自然の大地や小川や畦道。そうだ、思い出した。あの頃の田んぼや畦道には、あの美しい立派な姿のトノサマガエルがいたのだ。

トキだって田んぼに群れていた時代があった。

レイチェル・カーソンの「沈黙の春」や有吉佐和子の「複合汚染」はそのずっと後の話。今やトノサマガエルは絶滅危機生物になってしまった。川や湖のコンクリート護岸工事が全国規模で行われ、農薬、除草剤が使われ始めてからすべてがおかしくなってしまった。日本中がおかしくなってしまった。

我々は自然のことを何一つ分かっちゃいないし、米粒ひとつだって人間の手で生み出すことはできないのだよ、という福岡正信さんの声が聞こえる。

この本は、かつての生き生きとした農業の本当の在り方を思い出させてくれる。

自然農に生きる人たち―耕さなくてもいいんだよ

自然農に生きる人たち―耕さなくてもいいんだよ