科学史学会(その2)

海洋大学は都内の大学で最もキャンパスが広いらしい。構内に入ると鯨の骨格標本が目に入る。

今日の目玉は、「18世紀科学史に見る理論と実践の相互作用」というシンポジウム。


18世紀を捉え直す作業。理論と実践(実験)のせめぎ合う場から何が生まれてきたか。

5人の若手の学者がそれぞれ発表したあとシンポ。

野澤聡 ホイヘンスからオイラーへ(力学における振り子の役割の変遷)

中澤聡 18世紀前半の液体研究における流出の問題(変則例と理論の発展)

田島亮 18世紀ヨーロッパの弾道学研究における実験的方法と理論的総合

隠岐さや香 ビュフォンとダランベールにみる理論と実践(数学・実験・応用)

小林学 デービス・ギルバートとコーンウォールの技術者たち(動力技術開発における技術者と科学者との交流)


相当濃い内容。ビリビリと来た。オイラーニュートンの間のミッシング・リンクの探求から技術と科学の関連性を探る野澤聡。流体力学の研究からベルヌーイを再評価する中澤聡。実験と現象の観察を重視するビュッフォンと数学的理論を重視するダランベールを対比することによって18世紀の科学技術の特性を浮き彫りにしようとする隠岐さや香。そして、今回もっとも期待していた小林学の議論は蒸気機関の開発をめぐる技術者と理論家の交流。デービス・ギルバートとジェームズ・ワットの関係が気になる、

技術史と女性史は似ている、という隠岐さや香さん(広島大学)のコメントが印象に残る。いずれも物言わぬ人々の歴史という共通点。生きて、子供を産んで、育てて、名もなく死んでいった女性たちと技術者たちの共通点。なるほど。