谷口忠大氏の「コミュニケーションするロボットは創れるか」で展開されている議論はどきどきするようなテーマだ。谷口氏は1978年生まれ。京都大学工学部出身の知能情報学技術の学者(立命館大学准教授)。
ソニーのAIBO(犬型ペットロボット)は、発売当時爆発的にブームになったが、しばらくすると飽きられて生産中止になった。なぜか? 人間がプログラムしたロボットだからだ。ロボットに「自律性」がなかったからだ。人間がプログラムした範囲での行動しかできなかったから飽きられてしまった。
谷口氏は、構成論的方法によって自律型ロボットの可能性を探究する。「構成論的アプローチ」とは、実際に「作ることによって知る」研究方法。机上で理論的に考えるのではなく、まず実際に作ってみて考える方法。最近、複雑系や人工生命の分野でとられている方法だ。
自律的ということはオートポイエーティックということ。しかし、この本ではオートポイエーシス理論についてはあまり触れられていないが、自律的ロボットとは概念を自ら生成する「認識システム」(山下和也)を具備するロボットということになるか。(個人的には、山下和也氏のオートポイエーシス理論は、自律的ロボットの実現に必須の理論になるのではないかと思っている。)
谷口氏のこれまでの研究によれば、シェマモデルのような記憶システムと連合学習の仕組みを持つことによって、自らの環世界(ユクスキュル)に生じる記号に意味を与えることができるようになるまでの段階にきているらしい。
ちょっと難しいけれど、なんだかワクワクしてきた。
コミュニケーションするロボットは創れるか―記号創発システムへの構成論的アプローチ (叢書コムニス13)
- 作者: 谷口忠大
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2010/03/29
- メディア: 単行本
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