富山和子「環境問題とは何か」

先日の富山和子先生のレクチャーを聞いて以来、一気に富山和子ファンになってしまった。すばらしい女流学者。77歳のオシャレで知的なおてんばおばあちゃん(失礼)。


先日大量に買った富山和子先生の本から、とりあえず読みはじめたこの本はおもしろかった。新書で読みやすい。しかも内容が濃い。レクチャーで出てきた話もあり、復習になった。

環境問題の本によくある抽象的議論はまったくなし。すべてご自分の足と眼と手で体験し取材した具体的な事例に基づく話なのでおもしろい。この本はおすすめ。

この本には環境「汚染」の問題は出てこない。「汚染」の問題は環境問題の本質的部分ではない、と断言する。

では、何が本質的な問題か。

たとえば、どぶ川だった隅田川はなぜきれいな川になったか。東京オリンピックの頃はあんなにきたなく臭かった隅田川がどうしてよみがえったか?

利根川のお陰である。

35年前から利根川から大量の水を引き込んだからだ。利根川から荒川まで武蔵水路をひき、利根川の水を隅田川に35年間注ぎ続けたからだ。利根川から水をもらって、死の川だった隅田川がよみがえったのだ。

利根川のきれいな川の「水量」こそが重要だった。

では、利根川の豊かな水量はどこから来るか。どうして利根川の水は流れ続けているのか?

上流の森林地帯と山村のお陰である。

長い年月にわたる森林の育成と保全によって川の豊かな水量が確保されているのだ。これが環境問題の本質。

そして縄文、弥生時代からずっと続いている日本列島の豊かな山の文化の話になる。

日本列島の山の森林は、日本の独特の気候によって生み出されたと漠然と思っていたが、そうではないのだ。日本の森林は、長年にわたる山村の人々が働いたお陰なのだ。

本の森林はほとんどすべて人工的につくられた。人間の労働によってつくられた。杜撰な林業政策のお陰で今はさびれてしまっているが、かつて日本の山村はとてもにぎやかで豊かな文化と技術があったのだ。この話を聞いて驚く。

さらにもっと驚くようなおもしろい話が満載。

環境問題とは何か (PHP新書)

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