道具学会フォーラム

昨日今日と二日間、道具学会の研究発表フォーラムを覗きに新宿の宝塚造形芸術大学まで。

硬軟取り混ぜた様々な研究に刺激を受ける。今回のテーマは「道具学の構築に向けて」。
特に、真島俊一氏の基調講演はおもしろかった。「全国を巡って:道具を見る3つの視点」という講演。

・道具の使用前(製造現場)、使用中、使用後(考古学)、この3つの視点から道具学を再構築すること
・東北・北海道の林業における馬の重要な役割

・和釘の技術文化史(和クギを見てゾクゾクするのはどうしてだろうか?)

・板金ストーブのすばらしさ

・道具のデザインの定着には100年かかる
・「割って」作る様々な道具文化が日本にある(山の産物)

・秋田の杉とリンゴ箱の関係
・明治時代のミシンによる麦わら帽と足袋の製造(行田市

また、佐野邦雄氏(工業デザイナー)による2000年前の中国は漢の時代に描かれた乗り物の話。佐野さんは、300万年の超ロングタイムスパンで人間の道具文化を考えることを強調。

山口昌伴氏の平安時代の自動車文化。これはトテツもない研究例。清少納言の「枕草子」には、その350頁中の50頁(約15%)に車(牛車)に関する記事があるそうだ。1000年前の車文化のお話。

大西正幸氏の扇風機の技術史。なんと、世界最初の実用的な扇風機の発明者はニコラ・テスラだった!


吉田隆氏の日本初の耕耘機の発明家・小田吾一氏(実は吉田氏の祖父)の話。

岸本章氏のウズベキスタンの屋外の縁台の技術文化。いつかウズベキスタンに行ってこの縁台で寝てみたい。どうして屋外にしか置かれないのかが謎。

大沢匠(建築家)と齋藤紀行(施主)による「道具としての住まい」も実に興味深い。

モンゴルの美しいポット(銅製)。

竹こそ道具の起源か?


川田久義氏の木象嵌螺鈿の技法への挑戦。




以下、記録メモ(順不同)。

1月9日発表リスト
(1)西田徹+横川公子----地域デザインと食玩
(2)小俣邦雄----ぷらす竹vs.プラスチック
(3)大西正幸----生活家電:電気扇のはじまり
(4)藤本清春----玩具を起点とする新しい道具世界の展望
(5)深谷健司----復興建築
(6)吉田隆----日本初の自働耕耘機?小田吾一の軌跡?
(7)大沢匠+齋藤紀行----道具としての住まい
(8)岸本章----ウズベキスタンの縁台

1月10日発表リスト
(1)田附楠人----美術作品制作の道具と用法
(2)渡邉哲意----北京におけるライブハウス(ハコモノ)の現状
(3)吉田裕彦----平成に残る明治?昭和の井戸端と水の器
(4)山口昌伴----平安時代の自動車文化

基調講演 「全国を巡って:道具を見る3つの視点」真島俊一

展示発表者によるコメント
(1)石崎友紀+出原景----握力障害児童にもやさしい御道具箱の提案
(2)石崎友紀+山本慎二----巣ごもり感覚椅子の模型
(3)面矢慎介----モンゴルのポット
(4)佐野邦雄----漢画に描かれた乗り物についての考察
(5)渡邉哲意----視覚に頼らないスポーツの道具(ブラインドサッカーの用具)
(6)高田晃一----フィオリキアリのフラワーベース・コレクションから
(7)細田彰一----デザイン学生が読んでおいて損の無い50冊
(8)石崎友紀+島守萌----企業向けmono letter(モノレター)の提案
(9)川田久義----木象嵌螺鈿の技法への試み(仮)