奇跡のリンゴ(石川拓治)


 読み進むのがもったいなくなるような本。本屋で平積みされているこの本の表紙の写真に惹かれて思わず中身も確認しないで買った。表紙の写真はこの本の主人公である木村秋則さんの笑顔。最高の笑顔である。見たことはないが、大悟した禅僧の笑顔とはこのような顔ではないか。なぜか泣いているようにも見える。本の最後の方に木村さんの写真がもう一枚ある。これもいい。
 この本は今年読んだ本のなかでも一番の収穫。
 約30年間、絶対不可能といわれていたリンゴの無農薬・無肥料栽培を成功させた男の話。
 このリンゴ農家・木村秋則さんのことは、2006年に「プロフェッショナル 仕事の流儀」で放送されて反響を呼んだらしい。僕は見ていない。その番組のキャスターであった茂木健一郎が本にしようと言いだしたらしい。番組では伝えられなかった長くて壮絶な闘いの記録がつまっている。
 何度も落涙しそうになったり、鳥肌がたったりした。ノンフィクションを読んでそのようになったのはひさしぶり。
 木村秋則さんを取材しこの本をまとめた石川拓治さんの文章が最高にいい。抑制のきいた魅力的な文体。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録