アイン・ランド「水源」

水源―The Fountainhead

水源―The Fountainhead

 1ヶ月ほどかかり、本日読み終わる。
 アイン・ランドという女流作家による1000ページ以上の超大作。1943年に発表されたというから60年以上も前の本。米国では累計700万部のロングセラーであるにもかかわらず、日本ではほとんど知られていない。
 孤高の天才建築家ハワード・ロークをめぐる波瀾万丈のストーリー。
 あとで知ったが、ハワード・ロークのモデルはフランク・ロイド・ライトだったらしい。ロークは人間とその創造力を全的に肯定する。実に魅力的な人物である。人類はすばらしい物を創造することに歓びをみいだす地上で唯一の生命体であること。ロークはみずからの天才的知性と天性によってこれを実現しようとするが、さまざまな妨害によってこれが阻まれようとする。しかし、最後は・・・
 最後の場面、ハワード・ロークが裁判で裁かれる場面、1007ページあたりから始まるロークの陳述。この力強くすがすがしい陳述、人類の歴史の本質を説き起こすところから始まるこの陳述のためにこそそれまでの1000ページがあるといっても過言ではないと思う。
 最初は就寝前に睡眠薬代わりにちびちびと読みはじめたが、最後の3分の1くらいから手が離せなくなり、通勤の行き帰りの電車の中でこのドデカイ本を抱えて読む毎日。
 隠れたファンの多い副島隆彦さんのサイトで知り注文。副島隆彦さんによれば、
 「アイン・ランドは、ネオコン派と闘う本物のアメリカ保守思想(リバーラリアニズム)の源流である。」
 アイン・ランドはロシアのサンクト・ペテルブルグ生まれ。ロシア革命のさなか、21歳でアメリカに亡命。つまり、ユダヤ系の亡命ロシア人。
 すぐれた意味での利己主義と欺瞞的な利他主義の対立。あるいはリバータリアニズム(ラディカルな自由主義)と偽善的な社会主義思想との対立を描いた観念小説でもある。
 副島隆彦さんは、最近の著書「連鎖する大暴落」の中で、「この本を読まずして世界の知識人の基準(World Values)においては、高校生以下である。」といっておられます。
 詳しい解説については、この本を訳された藤森かよこ女史のサイトや、インド建築を研究されている日本の建築家、神谷武夫氏のサイトが参考になります。