科学史学会(二日目)

1.三木清の技術論
 技術とは行為の形である。主観と客観の統一である。文化との関係で技術を捉える。動物の行為も技術である、などなど。僕は社会主義者の技術論論争には興味がないし、三木清の技術論をこの技術論論争の文脈で捉えることにもさほど興味がないのだが。
2.江戸時代の亨保の改革期に何が起こったか(中村邦光
 江戸時代前期に近代科学的概念の萌芽があった。たとえば、密度概念、てこの原理の理解、円周率が3.14であることはすでに理解されていた。しかし、亨保の改革以後にはこのような発想が途絶えてしまう。なぜか。亨保改革によって儒教的自然認識が江戸の常識になってしまったからである。たとえば、江戸の初期に大規模に開発された玉川上水などの上水道が1722年に室鳩巣(儒学者)によって一斉に廃止された。陰陽五行説に基づいて、江戸の火事の原因が上水道にあるという説(水が火を呼ぶ)によって上水道が廃止されてしまう。
3.万年時計の技術的特徴(橋本毅彦)
 手作りの歯車はベッコウ細工職人であった田中久重の技能による。和時計の自動割駒式メカニズム。1851年製作。
4.東アジアの早すぎた活版印刷術(粟野宏)
 グーテンベルクよりも400年も前に活版印刷が発明されていたにも拘わらず、なぜ東アジアでこれが普及しなかったのか。その答えは「複製技術の階層構造」にある。この粟野さんの「技術の階層構造」の考えたがおもしろいと思った。ニーダムとは視点が違う捉え方である。