知性の社会説

 トーマス・ウィンの「道具とヒトの知性の進化」を読む。6000円もする論文集の中の一つだったが、これだけを読みたいので買ってしまった。ウィンのポイントは、技術が知性を生み出したのではなく、社会的なるものが知性を生み出した、というもの。社会的関係が選択圧となり知性が進化した。知性が選択された原因は、技術的な活動ではなく、社会的な活動からである。このことを立証するためにピアジェの発達段階説を石器の制作技術にあてはめて説明する。
 これは、わたしの技術起源論とどう関連するか。共同化された対象世界の成立から意味世界がオルガナイズされ、シンボル世界が成立した。ここに社会的関係の第一義性があるのではないか。社会という名の場がまず生じて、この場(Field)から様々なモノコトが生じる。場のサイト(現場)こそが重要である。
 技術の起源論からいえば、ネオテニー化された遊び活動としての技術活動がまずあり、これがホモ・ハビリスからホモ・エレクトスを経てネアンデルタールまで続く。次に、現生人類の出現の際に、この技術活動のミーム複製への転用が5万年前に起こった。これがわたしの仮説。